こんにちは。パリ・ファッション・ウイークも終盤に突入しました。今日は向がアップしていたコラム「パリコレで3人の記者が今気になる16のこと」の一つで「服だけじゃない、空間の作り方がファッションショーだ」について書こうと思います。
そんなの当たり前じゃん!と思う方もいるかもですが、ブランドビジネスの成功のために “共感”や“世界観の共有”といったエモーショナルな部分が重要になっている今、あらためてどのように見せるかということの大切さを感じています。それを強く感じさせたのが、前半に取材した「ドリス ヴァン ノッテン」、そして「ロエベ」と「イッセイ ミヤケ」です。
DRIES VAN NOTEN PHOTO BY KIM WESTON ARNOLD
いつも派手ではないけどセンスのいい空間演出で多くの人を虜にしている「ドリス ヴァン ノッテン」は今季、フラワーアーティストの東信さんによる色とりどりの花を氷の中に閉じ込めた「ICED FLOWERS」をランウエイのサイドに並べました。会場内の予想外の暑さでショーが終わることにはかなり溶けてきていましたが、凛とした空間を生み出すために非常に効果的でした。東さんは2014年のパリ装飾美術館でのドリスの展覧会の際にも会場内の壁や床のプリントを手掛けていましたが、花を愛するドリスと独創的な感性で花を操るの相性は抜群!今回も今シーズンのテーマの一つである「日本」をイメージしてドリスが制作したファブリックからヒントを得て、さまざまな花を組み合わせた「ICED FLOWERS」を作ったそうです。ちなみに、ショーのフィナーレに流れた曲はマドンナの「FROZEN」。海外のゲストにはそのまま過ぎて思わず笑っていた人もいましたが、ユーモラスな選曲ですよね。
LOEWE PHOTO BY KIM WESTON ARNOLD
「ロエベ」の会場は、おなじみのユネスコ本部でした。毎シーズン同じ会場といえども、使う場所やレイアウトがシーズンによって大きく変わり、われわれを楽しませてくれます。17年春夏コレクションは、16-17年秋冬に描いたより成熟し洗練された女性像を継続。ただ、その舞台となる会場は昨シーズンが都会のアパルトモンだったのに対し、今季はのどかな海辺の町のサマーハウスといった雰囲気です。会場内にはジョナサンが集めた家具やアート作品が飾られ、まるで彼のお宅にお邪魔しているかのよう。また、今回は新たな試みとして壁面をモニターで覆い、ショー開始とともにマガリ・リウスの映像作品「オフショア」を流しました。アートやクラフトへの強い関心を持っているジョナサンですから、そこから多くのインスピレーションを得ているはず。だからか、コレクションのアイテムとそれを見せる空間が自然にシンクロしていて、とても心地いいのです。観客を自分が描く世界に巧みにいざなうジョナサンは本当にディレクション力が高いデザイナーです。おそるべし。
ISSEY MIYAKE
そして、同じ日に行われた「イッセイ ミヤケ」は、いつものチュイルリー公園の特設テントからベルシー・アリーナの一部LE STUDIOに会場を移しました。客席もランウエイのサイドにずらっと並ぶものから、丸いランウエイを囲むタイプに変わりました。ショーは、オープンリールアンサンブルの“磁楽弓”(磁気テープを竹に張った楽器)とsebuhirokoさんのピアノの演奏でスタート。モデルはランウエイに置かれた幾何学的なオブジェの周りを通っていろいろな方向に歩き、視界にはさまざまな色が交差します。それがなんともフレッシュで、躍動感を感じさせました。「イッセイ」のコレクションは、ともすれば新しい技術ばかりに目が行きがちで、服自体も着る人に寄り添うよりも新技術を生かすことに傾倒していると感じることも正直ありました(われわれもそこにフォーカスしがちなのですが)。今季ももちろんスポーツウエアなどに使われるボンディングの技術を応用してパーツを張り付ける新技術「カット&スティック」などを駆使しコレクションを制作していましたが、「イッセイ」らしさがありながらもより着やすく軽やかで“地に足の付いた”提案のように見えました。コレクションを手掛ける宮前さんは、いつも「三宅一生さんのものづくりの精神を受け継ぎ、次へとつないでいきたい」ということを口にされています。そんな常に未来に向いている姿勢も魅力的なのですが、今回のコレクションは技術の進歩だけでなく、さらなるステップアップを感じさせました。そして、ショーが終わった後、バックステージに貼られていた「BE FRESH, STRONG, ENERGETIC!!」という宮前さんのモデルへのメッセージを見て、まさに!と納得したのでした。