ユナイテッドアローズは、台湾事業の基盤作りを進めている。2013年秋に初上陸し、台北市内に直営路面店「ユナイテッドアローズ台北店」をオープン。翌年、同市内の富錦街に「ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ」の直営店を、今年1月には新北市林口の「三井アウトレットパーク台湾林口」に「ユナイテッドアローズ アウトレット」を開いた。さらに7月4日には、自社ECサイトを開設し、海外初のネット通販に乗り出した。台湾での認知度アップと利便性の向上、O2Oの推進と同時に、いまや海外事業には欠かせないECの構築に取り組む。
台湾に海外1号店を出店した理由は「親日国で経済が安定しているうえ、日本的な接客販売を受け入れやすい市場だから」と話すのは、同社経営戦略本部の佐川八洋・本部長。台湾で成功しなければ、他の国はもっとむずかしいという。13年に独資で台湾聯合艾諾股份有限公司を設立。当初は現地のパートナー企業に販売代行業務を委託していたが、現在は自前の体制で運営している。物流から販売、会社運営、システムづくりまで内製化することで、海外事業のノウハウを確立したい考えだ。
2年目に売り上げを大きく伸ばしたユナイテッドアローズ台北店は、今年度も前年比2ケタ増になる見通し。ほどよいストリート感が受けた「ユナイテッドアローズ&サンズ」のほか、メンズのドレススタイルも予想外に好評だ。台北市内には欧米の高級ブランドのスーツしかなく、品質の割に価格が手頃な点が富裕層やビジネスマンらに評価された。「とくにネクタイやチーフまでコーディネートで購入する客が目立つ」(広報担当)。ウィメンズでは、ベーシックなきれいめなラインよりも、ほどよいモードテイストのカジュアルウェアが人気。サイズ感の違いや季節サイクルのズレなど、台湾特有の事情に対応し、商品政策を見直したことが増収につながった。一方、ビューティ&ユースは、商品投入や接客面の課題が改善され、今年度は計画ベースで推移している。
アウトレット店は、シーズンごとの効率的な在庫消化が最大の目的だ。各ブランドで積極的な提案ができるよう、期中の在庫移動やセールの切り上げ時期などのコントロールを台湾国内で完結させる。また、台湾国内外へのストアブランドの訴求を図る。MRT(地下鉄)の整備が遅れたため、オープン景気が終わったいま、入店客数は想定を下回るが、「開通すれば来店客数は必ず増える」(広報担当)と期待を寄せる。
スタートしたばかりのEC事業は、認知度の向上と台北以外のエリアの顧客開拓を優先課題としている。ホームページやフェイスブックと連動し、鮮度のある情報を発信。同時にバナー広告の拡散により情報を蓄積し、具体的な施策に反映させる。EC事業を行うことで顧客とのタッチポイントを増やし、実店舗への集客につなげたい考えだ。「海外ではEC売上げを5割近くに設定して事業を構築していくべき。そういう時代が到来している」と佐川部長は話す。
今後の出店は、路面店に限らず百貨店や商業施設も視野に入れる。22年までに10店舗程度を計画し、既存店の状況を見極めながら出店を進める。
(フリーライター 橋長初代)