「ロンハーマン」やスケーターカルチャーなどでも話題の西海岸スタイルは、食の分野でも注目を集めている。代官山に今春ソフトオープンし、9月にグランドオープンした、ロサンゼルス発の「ブルージャムカフェ(BLU JAM CAFÉ)」の日本1号店がその一つだ。日本に誘致したのは、アーティストの父に伴い、3歳から18歳までLAで育ったという、寺西魅宮マネジング・ディレクターだ。ビバリーヒルズハイスクールを卒業後、上智大学進学のために東京に住み始めてから7年になるが、ホームシックになると食べたくなるのが、この「ブルージャムカフェ」の味で、「私にとってのコンフォートフード」と表現する。「ロサンゼルスでは家族で毎週通うくらい大好きな思い出の店。クオリティーが高くておいしいお料理と、メニューの幅の広さ、そして、温かさが魅力だ。とてもロスっぽい店であり、その空気感をそのまま日本に持ってきて多くの人々に喜んでもらいたいと思った」と寺西マネジング・ディレクター。スローガンに掲げるのは「Bringing L.A. to YOU ! 」。「私たちはLAの文化をここから発信しますという想いを込めた」という。
メルローズの本店に加え、市内で3店舗を展開する「ブルージャムカフェ」は、多くのセレブリティーやトレンドリーダー、そして、LAの地元客らに親しまれている人気店だ。創業者でありオーナーシェフのカミル・マイヤーは、「1日で最も大切な食事がブランチだ」という哲学から、“オールデイ・ブランチ”を合言葉にしたブランチ専門店として2006年にこの店をオープン。“ベスト・ブレックファースト・イン・ロサンゼルス”賞を連続で受賞するなど話題を呼び、今でも行列の絶えない店である。メニューについては、チェコ出身である自身も含め、多彩な人種が入り混じるロサンゼルスを表現するかのようなフュージョン料理を得意としており、伝統的なアメリカン料理やスパニッシュやヨーロピアン、素材も豆腐やトルティーヤ、アボカドなどをミックスしたものになっている。
寺西マネジング・ディレクターは「カミルさんは、フィロソフィーもステキで、ウェルネスに対してもとても意識が高い。『人生バランスが重要だ』としてビーガン(菜食主義)でもグルテンフリー(小麦粉を摂取しない主義)も、どんなスタイルの人にもおいしい一皿を提供してくれる」と説明。さらに、「体に負担を掛けないように、消化が良い野菜や調理法などにもこだわっている。また、食事は見た目からと言い切り、ビジュアルにも一切妥協をしないので、味だけでなく、見た目からもおいしさが伝わってくる」と表現する。
グルテンフリーの代表メニューは“ビーガンランチュロス”で、揚げトルティーヤの上に黒豆、豆腐、パプリカ、アボカドなどをのせたもの。歯応えがあり、しっかり食べた気になれる。逆に、がっつり肉が食べたい人には“ステーキハッシュ”がおすすめだ。牛テンダーロインにポーチドエッグが2つトッピングされたボリュームたっぷりの一品だ。キャラメルオニオン、グリルドポテト、マッシュルーム、スピナッチが入り、隠し味のブルーチーズも絶妙だ。そのほか、エッグベネディクトやサンドイッチ、タコスなどもそろえる。食事に加え人気なのが、クランチー・フレンチトーストだ。フルーツが添えられており、「よくあるしっとりとしたものではなく、サクサクとした触感とバニラビーンズソースが絶妙の味で、これを目当てに来る方も多い」という。ちなみに、定番のソフトドリンクは「アーノルド・パーマー」だ。先日訃報が流れたが、有名プロゴルファーだったアーノルド・パーマーが開発したという、レモネードとアイスティーをブレンドしたもので、アメリカを代表する味として日本でも展開している。
また、店内はレンガとウッドをベースにした懐かしさとスタイリッシュさが入り混じった空間デザインで、壁に飾られた著名なジャズアーティストたちの写真も目を引く。「メルローズ本店はもともと有名なジャズクラブがあった場所。マイルス・デービスなども常連だったことから、ジャズのイメージを演出している」。
日本1号店の出店地に代官山を選んだのは、多くの縁に導かれたものだ。「カミルさんはかつて日本でレストランを立ち上げた際、代官山に住んでいたことがあると聞き、運命を感じた。思い出もあるというし、土地勘もあるし、トレンドに敏感でおしゃれな方々が多い代官山は、『ブルージャムカフェ』にはぴったりだと意見が一致した」という。
今後は広尾や汐留、横浜などを候補に、5年で5店舗ほど出店したい考え。また、ロスでは、「トイ・ドライブ」という、顧客からの協力も得て、おもちゃや洋服を集めて恵まれない子どもたちに寄贈したり、クリスマスやサンクスギビングにホームレスに食事を提供するなど、チャリティー活動も積極的に行っている。「食だけでなく、ライフスタイル、空気感、チャリティーの精神など、ロサンゼルスの文化を日本に持ってきたい」と寺西マネジング・ディレクター。