アマゾンは引き続きeコマースを強化する一方で、リアル店舗の出店にも意欲的なようだ。特に注力するのは、日用品とファッションという2つの分野。マーケティング企業キーバンク・キャピタル・マーケットのエド・ユルマ=アナリストは、「日用品では、オンラインで注文し、リアル店舗で受け取る“クリック・アンド・コレクト”のフレームワーク作りを模索するだろう。ファッションは、軽量ゆえ割安な配送料が魅力。ショールーミングストアで試着してオーダーするか、一度にたくさんの商品を注文して後日店頭に返品するなどの手法が現実的だろう」と分析。「最終的にアマゾンは、ECと実店舗の双方を手掛けるハズ。『ギャップ』や『アーバンアウトフィッターズ』のような存在になっても、なんら不思議はない」と続ける。アマゾンはすでに、ショッピングモールを中心に米国内で20の実店舗(ポップアップを含む)を有しており、同社の電子機器などを販売している。
専門家の多くは、アマゾンはマーケティングツールとして実店舗を有する可能性があると指摘する。アマゾン専門のノウハウを提供するリサーチ会社L2のマーベル・マクリーン=ディレクターは、「多くのECサイトは実店舗の出店後、検索数が飛躍的に上昇している。アマゾンがファッションに特化した実店舗をオープンすれば、そのメリットは大きい。アマゾンは多くの商品を扱っているため、時に特定の商品を探すことが難しかったり、ラグジュアリー・ブランドの商品を販売していることを伝えきれなかったりしている」と話す。実店舗の大きさについてマクリーン・ディレクターは、「ウォルマートのように巨大で、なんでも販売するリアル店舗は、アマゾンにとって意味がない」と話し、規模よりも、実店舗を通して得るショッピングの質にフォーカスすべきだ、と力説する。
LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトンのジャン・ジャック・ギオニー最高財務責任者(CFO)は先日、同社の第3四半期の決算会見で、「現状、アマゾンのビジネスは我々のようなラグジュアリーではなく、我々が手掛けるブランドとフィットしない」と話したが、「とはいえ、彼らのビジネスが進化すれば、話は別。当然、ビジネスパートナーとして、真摯に向き合うことになるだろう」と話した。