講談社は、コミックを中心とした“オタク系”の本を得意とする一迅社の全株式を取得し、完全子会社化する。取得は11月までに行う予定で、買収金額は非公表。一迅社は編集の独自性を保ち、発行している雑誌やコミックなどは継続する。講談社のビジネスインフラやノウハウを利用して、“オタク系”コンテンツの強化と電子書籍化、海外進出を目指す。
一迅社は2005年に設立。210万部を販売している“ヲタクに恋は難しい”や、アニメ化した“腐男子高校生活”などの単行本の他、コミック系雑誌を中心に刊行している。16年7月期の業績は、売上高44億円の見通し。
10月14日に東京のホテル椿山荘で会見が行われ、講談社の野間省伸・社長や一迅社の原田修・会長が出席した。野間社長は「一迅社はコミックにおいて独自の地位を確立し、多くのファンを獲得してきた。いわゆる“オタク系”コンテンツを得意とし、そのジャンルの読者に熱い支持を得ている。われわれもさまざまなジャンルのコミックを刊行しており、一迅社との提携でコンテンツのさらなる強化、充実を図りたい。また電子書籍、ライツ事業、海外展開などでコミック市場全体の活性化に寄与できると信じて提携を決めた」と語る。
一迅社の原田会長は「一迅社が発足して10年余り。現在の読者は、予想以上に紙からスマホに移行しており危機感を持っている。今後、業績を伸ばしていくために電子化と海外展開を本格化したかった。われわれの規模だと難しいので、大きなビジネスインフラを持つ出版社に協業を申し出るしかなかった。ダメもとで講談社にお願いしたところ、あっさり引き受けていただいた(笑)」と話した。