イタリアのテクニカルスエードブランド「アルカンターラ(ALCANTARA)」は、2020年までに原材料を完全に再生可能資源にすると18日、発表した。現在、原料の約70%にポリエステル、30%にポリウレタンを用い、そのうち、ポリエステルの原料であるポリマーの約30%にバイオベースのポリマーを採用しているが、20年までに完全に再生可能資源にシフトする。アンドレア・ボラーニョ=アルカンターラ社会長兼最高経営責任者CEOは「ポリエステルに関しては、バイオベースのポリマーを用いたもので製品テストを行った結果、従来のものと変わらなかった。ポリウレタンの再生可能資源については開発中だ」と話す。
「アルカンターラ」は日本生まれのイタリア素材だ。アルカンターラ社は1972年、大手素材メーカーの東レが人工皮革の欧州の開発・生産拠点としてイタリアで創業した。美しく、シルクのように柔らかで、ほかには類を見ない耐久性を備え、「BMW」「レクサス」「ランボルギーニ」のシート、仏インテリア「リーン・ロゼ」のソファー、独「ゼンハイザー」のヘッドホン、「マイクロソフト」の“シグニチャー”のキーボードカバーやサーフェスに用いられている。ファッション・ブランドでは「スワロフスキー」がブレスレット、「マックスマーラ」や「アキラーノ・リモンディ」のコートなどに「アルカンターラ」が用いられている。売り上げの約75%が自動車、25%がファッション、インテリア、エレクトロニクス、メガネ、ヘッドホンなどを占める。「『アルカンターラ』はあらゆる形状をカバーできる。特許に守られている」とボラーニョCEO。
「アルカンターラ」のブランド力を高めたのが09年から打ち出したサステイナビリティ経営だ。カーボンニュートラル、高効率のエネルギー調達、廃棄物処理管理などさまざまに取り組んできた。「企業戦略の重要なポイントだ。環境保護だけではなく、人権保護もする。業務を行いながら環境を守ることを念頭に置いている。コストはかかる。だが、コストを超えた価値を創出できている」とボラーニョCEO。実際、調査会社のインターブランド社によると、「アルカンターラ」のブランド価値は9年間で15倍になった。15年度の売上高は前年同期比33.5%増の1億6500万ユーロ(約188億円)で過去最高益をマークした。「今後もサステイナビリティ経営を加速する」。