「H&M」は今秋のデザイナーズコラボ「KENZO × H&M」の先行お披露目イベントを10月19日夜、ニューヨークで開催した。会場はイーストリバーに面したピア36で、ブランドアンバサダーのイマンやクロエ・セヴィニーを筆頭に約1000人が来場。スポンテニアスなアイテムやエンターテインメント性たっぷりのショー演出、恒例のファッショニスタたちによるプレショッピング、人気ラッパーのアイス・キューブのライブは、ファッションのパワーや楽しさを思い出させるような、エネルギッシュなパーティーになった。
今回のコラボレーションのテーマは、「『ケンゾー』の伝統やアーカイブを今の時代にツイストすること」と「自己表現と多様性を祝う」ことだと、ケンゾー(KENZO)のクリエイティブ・ディレクターで、NY発のセレクトショップ「オープニングセレモニー」の共同オーナーであるキャロル・リムとウンベルト・レオン。創設者の高田賢三が60~80年代初頭に発表したタイガーストライプやレオパードをはじめとしたアニマルミックス柄、花柄などのプリントやリボンレース、ラッフル、キモノドレスなどのディテールを解釈し、モダンに昇華させている。また、キモノ・コートやキモノ・ブルゾン、ボンバーコートやMA-1、ラップスカートなどをリバーシブルとして、着やすさと遊び心を両立させている。
「『ケンゾー』のエキサイティングでファッションを楽しむ精神を多くの人たちに見てもらい、実際に買いやすいプライスで提供することができた。本当に自由にやりたいことをやらせてもらった」とウンベルト。キャロルも「新しい顧客を開拓できる。MDもプロダクトもストア環境も全て一緒に作り込んだ。ブランドのエネルギーを感じながら楽しく買い物を楽しんでもらいたい」と続ける。
「H&M」のアン・ソフィー・ヨハンソン=クリエイティブ・ディレクターは、「とてもハッピーでグラマラスなコレクションに仕上がった。勇気があり、強くて、若々しさがある。『ケンゾー』はコラボの候補リストにずっと上がっていたが、タイミングが合って実現した」という。『ケンゾー』の親会社であるLVMHグループとの話し合いは難しさもあったのではとの問いには、「イエスでもあり、ノーでもある。時間はかかったが、お互いを尊重しながら、ウンベルトやキャロルがやりたいことを実現してもらうことができたと思う」と話す。また、「ダイバーシティーは私たちのビジョンでもある」として、一連のコミュニケーションや表現が「H&M」ととてもマッチしたものだったと評する。
ファッション業界ではここ数年、「グッチ」のアレッサンドロ・ミケーレや、「ロエベ」のジョナサン・アンダーソンなど、若手をクリエイティブ・ディレクターに起用して若返りを図ったり、ユースをキーワードに掲げるブランドが増えている。2011年にキャロルとウンベルトが就任した「ケンゾー」はまさにその先駆け的ブランドだ。アン・ソフィーは「今のヤングジェネレーションはファッションに対するアプローチが全く違うが、クリエイティブ・マインドを感じる。まさに『ケンゾー』はその代表であり、未来を感じさせる」と語った。
ジジ・ハディッドやケンダル・ジェンナーなどそうそうたるモデル陣を登場させた昨年の「バルマン」コラボに比べると、今回のモデルで知名度が高いのは今年からNYに拠点を移した松岡モナだけだ。けれどもショーが始まると、ランウェイをただ歩くのではなく、隊列を組んでのダンスパフォーマンスをベースにしたもので、見応えは十分。コレクションのテーマの一つでもあるダイバーシティーも表現されていた。そして、恋に落ちたり、嘆き悲しんだりといった表現もあり、ファッションの楽しさや躍動感、人生を謳歌(おうか)しようというメッセージ性が込められていた。
キャロルが「エクストリームでエキサイティングだ」と評したショーの演出を行ったのは、広告やムービーも撮影したフォトグラファーのジャン=ポール・グードだ。長きにわたりグレース・ジョーンズとのクリエイティブワークを行い、「イッセイミヤケ」や「シャネル」の香水、「ケンゾー」のファッションシューティングや、雑誌「ピープル」のキム・カーダシアンの表紙でも注目を集めているベテランだ。
「H&M、キャロル、ウンベルトと一緒に仕事をするのは冒険だった。 彼らのコレクションに対する思い入れ、彼らの若さ、エネルギー、楽しさ、スタイルが大いに気に入った」とグード。さらに、ショー直後には「いつも撮影する側だし観客数も多いし、演出は難しかった。一つひとつ絵コンテを描くなど、語り切れないほどロングストーリーがあるが、構想通り実現して感激した」と達成感をにじませた。
広告プロモーションには7人のアンバサダーを起用した。アイコン枠として元祖スーパーモデルで活動家のイマン・ボウイと坂本龍一、カレント枠として女優のクロエ・セヴィニー、チャンス・ザ・ラッパー、ロザリオ・ドーソン、エマージング枠として16歳の活動家のシューテズカット・マルチネス、ベトナム人ラッパーのスボイだ。ここでも一貫して、ダイバーシティ―と個性の発揮を称賛するものになっている。
世界での発売は11月3日。日本では混乱を避けるため、事前応募(締め切り済み)に当選した人だけが先行して買い物ができる仕組みを新規に導入。一般客の入場・購入は昼ごろからとなる。
なお、高田賢三と「ケンゾー」が生まれた日本をリスペクトする意味と、キャロルとウンベルトの2人が親日家であること、ビジネス的にも日本のマーケットを重視しているという要素が重なり、11月1日には都内でもイベント兼プレショッピングパーティーを開催する。2人も来日予定で、発売直前までSNSで話題を提供する。
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