「KENZO×H&M」の世界発売が明日(11月3日)に迫っている。10月19日にはニューヨーク(NY)でメディアカンファレンスと、約1000人のゲストを集めたお披露目イベントを開催。11月1日には「ケンゾー」のクリエイティブ・ディレクターを務めるキャロル・リムとウンベルト・レオン、「H&M」のアン・ソフィー・ヨハンソン=クリエイティブ・アドバイザーが来日して取材やパーティーを開き、発売当日も日本で迎える。「ケンゾー」の発祥地である日本をリスペクトする意味も込めてのことだが、彼らは「H&M」コラボを通じて何を伝えたかったのか?一連の取材を通じて聞いた、彼らの思いと狙いをまとめた。
――「H&M」のデザイナーズコラボレーションに対する思い入れは?
ウンベルト・レオン(以下、ウンベルト):私たちが2004年に、「H&M」が初めてカール・ラガーフェルドとコラボをすると聞いた時、とても興奮したのを覚えている。2人で並び、スーツ、ドレスシャツ、ジーンズなどを買った。全てすばらしいアイテムで、今でも持っている。ただデザイナーアイテムを買うというだけではなく、コラボのために作られたスペシャルなのものを買うとういう意味があると思う。
キャロル・リム(以下、キャロル): カレンダーに発売日に印をつけたことを覚えているわ。消費者の一人だったけど、ワクワクして、何か新しいことを体験できたわ。だから、今回のプロジェクトでデザインをはじめ、全ての事柄を考えるときには、全てはお客さまのためで、高揚感を与えることが必要だってずっと思っていたの。
――なぜ「ケンゾー」をコラボ相手に選んだのか?
アン・ソフィー・ヨハンソン(以下、アン・ソフィー):いつか一緒に協業してみたい優秀なデザイナーの名を記したウィッシュリストがあり、「ケンゾー」もその中にずっと上がっていたの。キャロルとウンベルトがクリエイティブ・ディレクターとして働くようになってから、伝統のあるブランドが若返り、活気付いたのがとても良かったから。タイミングはまさに今だったと思う。LVMHグループのブランドの中での最初のラグジュアリーブランドであるし、15年前であればこのようなパートナーシップを人々は考えようとすらしなかったかもしれない。それに、「H&M」もデザインアワードを通じて若手デザイナーを支援しているけれど、「ケンゾー」の2人も「オープニングセレモニー」を通じてヤングブランドをサポートしていて素晴らしいと思っていた。ダイバーシティーやファッションを楽しむことも含めて、カルチャーが共通していると思い、とても興味があった。
――コラボを手掛ける狙いは?
キャロル: 2年前に「H&M」のアプローチを受けた時、「ケンゾー」のパワフルなスタイルをより多くの人に向けて打ち出し、50年近く続くブランドについて知ってもらういい機会だと感じたの。新しいアイデアやアプローチはどんどん取り入れていきたいと思っているし、「H&M」という新しいプラットフォームで「ケンゾー」の世界観を表現できることがとても嬉しかったわ。
ウンベルト:キャロルと僕は普段から、商品だけでなく店舗のデザインやイベントのインビテーション、ニュースレターまで、ブランドに関わる各面を監修している。だから今回のコラボにも全力で挑んだし、スペシャルなアイテムばかりが集まったコレクションに仕上がった。
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――アーカイブプリントやアイコニックなアイテムを多く登場させたのはなぜ?
ウンベルト:「ケンゾー」を全く知らない人にも、「聞いたことはある」という人にも、ブランドのことを正しく知って欲しいんだ。創業者の高田賢三がファッション業界に残した軌跡については特にね。高田さんは60年代にファッションのメッカ、パリに進出し、日本のヘリテージを失うことなく最先端のプレタポルテで道を切り拓いた人物。つまり、パリにストリート・ウエア、レディー・トゥー・ウエアをもたらした重要人物だ。彼がその時代に西洋のファッションに強大なインパクトを与えたことは、同じアジア系の僕たちとしても誇りに感じるし、もっと多くの人に知ってもらいたいと思う。そして、それを祝福すべき機会だと思った。今回のコラボコレクションには、僕たちが手掛けた「ケンゾー」のランウエイにはこれまで登場しなかった、本当に本当のオリジナルの作品群や、それを現代流にツイストしたもの。まさにコレクターアイテムとなるものだ。「ケンゾー」にはユース・スピリッツ(若者精神)があるし、「ケンゾー」の表現は年をとらない。真にファッションに興奮する人のためのものであり、「H&M」のコラボにもピッタリだと思った。
キャロル:高田さんが作り上げたアーカイブには精通していたけれど、そのシルエットやプリントを「ケンゾー」のコレクションにそのまま付け加えることはしてこなかった。今回のコラボというきっかけがあり、「H&M」のお客さまだけでなく、ブランドがスタートした当時からよくご存知の「ケンゾー」のお客さまにも、彼が作り出した象徴的な作品を収集できるチャンスを広げる非常によい機会だと感じたの。それで、2015年の5月にパリでアーカイブのピースを見ながら、最初のミーティングをしたのよね。
――コレクションのキーアイテムは?
ウンベルト:全商品がスペシャルだけど、個人的なお気に入りは、300mものリボンからなる“リボンドレス”や、広告キャンペーンで坂本龍一さんが着ているリバーシブルのキモノ風コート、裏表で柄が違うだけでなくジッパーで丈も変えられる“4 WAY”のジャケットかな。
キャロル:私はリバーシブルのワンピースが好き。片方はデイリー使いに、もう片方はパーティーにぴったり。仕事後に着替える時間がなくても裏返せばいいだけよ。「ケンゾー」が80年代に発表したトラ柄のボディースーツもアイコニックなピースなのに着心地がいいのよ。コラボではウォッシャブルなジャージー素材を使っているから。それと、タイガー柄のピンクのニットブーツね。
――協業を通じて直面した課題は?
ウンベルト:このコラボで僕たちは、「ケンゾー」という歴史のあるブランドと“会話”をするように一つひとつのピースを作り上げていった。アーカイブをどのようにアップデートするかについて悩んだこともあったが、高田賢三さんによる「ケンゾー」の要素と、僕たちの現代的なスタイルをミックスすることでバランスのいいコレクションに仕上がったと思う。商品のクオリティーと価格のバランスを見つけるのが難しいこともあったよ。例えばアウターをリバーシブルで用意するのは、2点作るのと同じぐらいの労力がかかるし、リボンドレスもかなり手が込んでいる。一時は「プリントにしてしまおう」という提案もあったが、ジャカードのリボンにこだわってようやく完成した。より多くの人にリーチするコラボ商品だからこそ、クオリティーが大切だと感じたんだ。
アン・ソフィー:リボンドレスは時間がかかって本当に大変だったわね。それに、プリントが多かったので、図柄を合わせたり、異素材で同じ柄を表現するのも簡単ではなかったし、ニットブーツのハイヒールやソウルなども難しかったわね。
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――発売を楽しみにしているファンへのメッセ―ジは?
キャロル:ウェブサイトで目当ての商品を絞ってから店舗にダッシュしてね。あと、見つけたものはとりあえず買った方がいいかも。自分で着なくても、友達がきっと喜んでくれるわよ(笑)!
ウンベルト:ウェブサイトの画面ではディテールは伝わらないかもしれない。ビーズやリボンの細かいところまでこだわっているから、ぜひ店頭で実物を見て欲しいな。
――インパクトの強いピースが多いが、着こなすコツは?
キャロル:私たちが一番楽しみにしているのは、コラボ商品を買った人たちがどのようにスタイリングしてくれるか。これまでのキャンペーンや広告ビジュアルはトータルコーデでコラボ商品の世界観をアピールしてきたけど、実際に着る人には、手持ちのアイテムとミックス&マッチして楽しんで欲しいな。心地よく、自分らしく着こなしてくれることを期待しているよ。
――今後、どんなコラボをしたい?
ウンベルト:キャロルと僕はコラボ界のキング&クイーンだよね(笑)。
キャロル:「H&M」ほどの規模ではなくても、これまで色んなコラボを手掛けてきたし、芸術家や写真家ともたくさん協業してきた。だけど、「次のコラボは……」という風に探しているわけではなく、出会いを何よりも大事にしたいと思っているの。いい出会いがあれば、一緒に何かするかもね。あ、でも2人とも車好きだし、“ケンゾー・カー”なんかあってもいいんじゃないかな(笑)。
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