2010年4月1日に山本憲資・代表が立ち上げたモノのソーシャルメディア「サマリー」がオフラインを中心に事業を拡大している。きっかけは15年9月に開始した「サマリーポケット」だ。寺田倉庫と組んでユーザーの私モノを倉庫保管するというサービスで、1箱300円の専用段ボールで送ってもらったアイテムを全て単品ごとにデータ化し、保管してくれる。「サマリー」上で保管アイテムの閲覧ができるのはもちろんのこと、単品ごとに取り出したり、クリーニングを依頼することもできる。
16年9月には大和リビングと提携し、引越し時のトランクルームとして「サマリーポケット」を無料利用できるオプションサービスも開始した。「これまで『サマリー』は、“want”と“have”ボタンを用いてアイテムを記録するSNSとして運用してきた。“want”は未来の”have”を示すものだが、過去の”have”も取り扱おうと思ったのが『サマリーポケット』のきっかけ。単なるスペース貸しではなく、データとしてモノを預かるサービスにしたかった」と山本代表。
さらに11月、「ヤフーオークション」との連携を開始した。これによって「サマリーポケット」で保管している私物のうち、不必要なものをアプリ上の簡単な操作でオークションへ自動出品することが可能になった。出品金額も自由で、10〜30%の手数料を払えば面倒な作業をサマリーが全て負担する。「サービスを開始してまだ1週間だが、すでに多くの出品があった。在庫保管に加えて販売が可能になったことで、利用者層が早くも広がったと実感している」という。
“世界一効率よく断捨離ができるシステム”へ
現在80万人の登録ユーザーと200万以上のアイテムを抱える「サマリー」が目指す理想像とは何か。山本代表いわく、それは「上手にモノを管理するための場所」だという。「『サマリー』はあくまでツールとしてのサクサク感とモノを持つ楽しみを提供するためのもの。まずは『サマリーポケット』を使ってモノを“持つ”とハードルを低くしていきたい。面倒くさいから、とモノを溜めがちなユーザーにとって『サマリーポケット』は“世界一効率よく断捨離ができるシステム”だと自負している。その上で、新たなモノを知るきっかけを与えることも必要。『サマリー』では実際の所有者がアイテムの良さを語るタイアップコンテンツも増えており、モノ欲をクラウド化しながらモノの循環を促進させたい」。今後は例えば百貨店の顧客に対して、新たな洋服を購入する際の私モノ保管場所としても訴求をしていきたいという。「顧客のクローゼットを空けることは誰もが求めていること。デジタルを使えば効率よく問題を解決できると思う。『サマリーポケット』で売れた金額を増額してポイントとして還元するなど、新たな購買を喚起することもできる」と考える。
アパレル業界を活性化するために“モノの循環”を促すことは不可欠である。業種こそ異なるが、洋服のレンタルサービス「エアクローゼット」を手掛ける天沼聰CEOも「レンタル事業は新しい洋服との出合いを提供するマッチング事業。小売り企業とともに業界を活性化できるはず」と、“借りる”を起点に購買意欲を刺激したい考えを示す。「サマリー」が目指すクラウド上の“断捨離”は新たな購買意欲につながるのか。“モノを買わない世代”ともいわれるミレニアル世代を取り込む上でも、デジタルを起点に購買意欲を喚起する新事業に注目したい。