アメリカのエネルギー企業コーク・インダストリーズ(KOCH INDUSTRIES)が、子会社で繊維メーカーのインビスタ(INVISTA)の売却を検討しているようだ。業界筋によると、イタリアの素材メーカーのラディチ グループ(RADICI GROUP)の他、中国やインドの繊維メーカーがアプローチしているという。インビスタは、合繊原料からポリエステル繊維、ナイロン繊維まで一貫生産する世界最大の繊維企業の一つで、仮にコーク・インダストリーズがインビスタの売却に成功すると、テキスタイル業界ではここ数十年で最大規模の取引になると見られる。中国やインドで新興企業が台頭する中、世界の合繊企業は国境を超えた再編時代に突入する。なお、コーク・インダストリーズやインビスタ、ラディチ グループからコメントは得られていない。
インビスタは、本社をカンザス州ウィチタに構え、20以上の国に約1万人の従業員を持つ。「ライクラ(LYCRA)」「クールマックス(COOLMAX)」「コーデュラ(CORDURA)」「ステインマスター(STAINMASTER)」「アントロン(ANTRON)」などの繊維ブランドを手掛けている。デイブ・トレロトーラ(Dave Trerotola)社長によると、インビスタの15年度の年商は120億ドル(約1兆2800億円)で、コーク・インダストリーズのビジネスのうち約10%を占めているという。
米国最大の非上場企業の一つであるコーク・インダストリーズは2004年に、化学大手のデュポン(DUPONT)から繊維部門を44億ドル(約4708億円)で買収後、自社の繊維事業と再編し、インビスタとしてスタートしていた。当時の規模で84億ドル(約8969億ドル)だったが、最近は中国でビジネスを拡大しており、10月には上海に数百億円を投じた大規模なナイロン繊維の原料工場を開設したばかりだった。