連載最終回は、メルセデス・ファッション・ウイーク・トビリシ(MBFWT)で、日本のマーケットでもウケそうなブランドをいくつか紹介します。
1つ目は元モデルのアヌーキ・アレシズの手掛ける「アヌーキ(ANOUKI)」。「アヌーキ」を着てショーに来場するオシャレな女の子たちがたくさんいて、会場はかなり盛り上がっていました。2013年にローンチし、すでにジョージアに2件ショップを構えています。なぜそんなに資金が潤沢なのかというと、旦那さんがフットボール選手だそうで。ジョージアのヴィクトリア・ベッカムとでも言いましょうか。アヌーキ自身もともとファッションに興味があり、マラゴリーニなどでファッションデザインやファッションビジネスを学んでいて、ヴィクトリア同様“美人奥様の暇つぶし”的な様子は全くなく、オリジナリティーを探求し、ビジネスにつなげようとしている印象でした。卸先は、リナシェンテ、ジョイス、伊勢丹など世界各国に約30。日本では、17年プレ・スプリングからザ・ウォールが輸入販売を始めます。日本での価格帯は、トップスが4万〜5万5000円、ドレスが7万〜9万円、ボトムスが3万〜4万円程度。
アヌーキはまだ26歳で、デザインも若さが溢れそうなほどピチピチしていて勢いがある。パステルをキーカラーにしたキッチュなデザインにジョージアお得意の?刺しゅうやアップリケを加えて、キッチュさと凝った手仕事のバランスが面白いなと感じました。2017年春夏からは自社工場での生産が始まるとあり、着々とビジネスの基盤を整えている印象です。
凝ったデザインのモダンなハンドニットが下代で250ドル
2つ目は、ハンドニットが目を引いたラロ・ドリズが手掛ける「ラロ(LALO)」です。元々ハンドニットのカーディガンからブランドを始まったとあり、ニットが秀逸でした。ラッフルや刺しゅうを飾ったアイテムや大胆に柄を切り替えたニットなど思い切ったデザインも好印象。すでに200人のニッターを抱えながら、リナシェンテやモーダ・オペランディなど世界各国に卸しています。「ラロ」でも、ビジューなどを用いた刺しゅうも目を引きました。下代価格で、ポリエステルを編んだコートが295ドル、ベルベットにビジュー刺しゅうを施したコートが590ドル、メッシュ素材にポリエステルを編み込んだボンバージャケットが250ドル程度と手が込んでいる割に、お手頃価格であることも魅力です。ジョージアの物価がまだまだ安いせいか、凝ったディテールでも手に取れる価格で提案しているところがジョージアブランドの強みと感じました。
3つ目は、「アヌーキ」「ラロ」とは少し毛色が違うブランド「マテリアル(MATERIEL)」。トビリシで1949年に創業したジョージアでは歴史のあるアパレル会社マテリア(MATERIA)が手掛けるブランドです。元々、国内向けのユニフォームや輸出用に衣料を作っていたジョージアの大手アパレルとあり、強みはその背景を生かしたモノ作り。面白いのが、若手のデザイナーを招いて、モダンな服作りをしている点で、旧市街に構えたショップもかなりモダンでオシャレに仕上がっています。
今回発表した、アレクサンダー・アクハルカティシヴィリ(Aleksander Akhalkatsishvili)は、テーラードの技術を生かしたカッチリジャケットやコート、オーバーサイズのシャツなどをクリーンなラインで仕立てました。特に、ヴィクトリア調ハイネックのロングドレス(下代価格145ドル)やハイウエストのロングパンツ(下代価格115ドル)が印象に残りました。ティコ・パクサシヴィリ(Tiko Paksashivili)はテーラードの技術を生かし、フォームがカッチリしたジャケットやドレスにスポーティなアイテムを加えたコレクションを発表しました。カッチリジャケットなどは日本の市場ではまだ難しいかもしれませんが、シンプル&クリーンに一つデザインを加えたアイテムは、いいのでは?と思いました。
いずれもメード・イン・ジョージアでモノ作りの背景が整った(整えつつある)ブランド。価格はほかのヨーロッパブランドに比べてもお手頃です。バイヤーのみなさん、新たなブランドの一つに加えてみてはいかがでしょうか?
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