政治の世界に代表されるように、女性リーダーの登場を後押しする機運は世界中で広がりを見せ始めている。新しいリーダー像はファッションの世界にも大きな影響を与えそうだ。ここでは現在とこれからの日本の女性のリーダー像にフォーカスするとともに、ファッション業界として彼女たちに何を提案すればよいのかを検証する。
政治の世界とは違い、日本の一般社会、企業は女性活用でまだまだ後れを取っている。世界経済フォーラムが10月に発表した「ジェンダー・ギャップ指数2016」によると、日本の男女格差は144カ国中111位。後に続くのは116位の韓国以外ほとんどが中東やアフリカなどの開発途上国だ。
一方、少子高齢化が進む日本では今後、女性活用に本腰を入れなければ労働力不足は免れない。2016年4月、日本政府は女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(通称:女性活躍推進法)を定めた。現状、日本の女性管理職の割合は11.2%と他の先進国と比べ大きく遅れてい
るが、この数値を「2020年までに少なくとも30%にする」のが目標だ。
今後、増加が予測される女性管理職に向けてファッション業界にも新しいマーケットが広がりそうだ。ただし提案力を高めるためには、業界内にも女性リーダーが求められる。そこでまずは業界の女性活用の実態を把握するべく、全87社に女性管理職に関するアンケートを依頼した。予想以上に回答NGが多く、返答があったのは50社だった。管理職の割合は、日本全体の平均値11.2%(13年時点)を大きく下回るところと、上回るところでくっきりと分かれている。例えばジュエリーメーカー4社の女性管理職の平均は54.5%だった。また、大手百貨店4社の平均も21. 35%と平均の2倍近い数字となった。一方、川上の企業は一ケタ台のところが多い。小売り業の場合、店長なども管理職に含まれることから平均を上回ったことが推測される。対照的に役員の割合は、小売業でも一ケタ台が多い。現場のトップは任されても、会社全体の意思決定に携わる場面での女性の登用数はまだまだ少ないということだろう。
注目は、11年からの5年間で女性役員数を大幅に伸ばしているLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン・ジャパンだ。同社は14年にグループ傘下の30社のメゾンとともに国連の「女性のエンパワーメント原則」に署名。女性社員が活躍できる労働環境や社会環境の整備に力を入れている。ロンドンの研修センターでは管理職を対象にしたリーダーシップ研修を行っている他、女性リーダーの育成を目的としたコーチングプログラムやセミナーなども開催している。また、ニューバランス ジャパンも3年前に女性社員を対象にしたキャリアビジョン研修や、キャリア育成などを考えるウィメンズ・カウンシルの立ち上げた。社内での育成に力を入れると同時に、中途採用でも積極的に女性を登用している。2社に代表されるように、外資系企業はグローバルでの取り組みを行っている影響か、平均的に数字が高かった。