今年「リーボック クラシック(REEBOK CLASSIC)」とのコラボプロモーションビデオで一躍名をとどろかせた世田谷エリアを拠点とするヒップホップ・クルーKANDYTOWN。BANKROLL、YaBastaといった2つのヒップホップ・クルーや地元の友達を中心に構成され、11月2日にはワーナーミュージック・ジャパンからアルバム「KANDYTOWN」をリリースし、メジャーデビューを果たしたばかりの新星だ。注目すべきはラッパーやトラックメーカー、DJ、フィルムディレクターを含む総勢16人から成る大所帯クルーということ。そして、全員が1990年代以降に生まれたミレニアル世代ということだ。12月22日に年内最後のフリーライブを控える彼らを代表してGOTTZ、BSC、MUD、KIKUMARU、DJ Minnesotah、DIANの6人に結成へ至った経緯やファッション観を聞いた。
WWD:KANDYTOWN結成の経緯は?
DIAN:(今日集まった6人の中では)BSCしかいないんですけど、BANKROLLってめちゃめちゃカッコ良いクルーがいて、それを中心に集まった感じです。
BSC:それぞれのライブで一緒になってパーティーしたりしてたんで、今思えばその頃からみんなでいました。あとは地元が一緒だったやつらが集まった感じ。MUDだけ地元が町田なんですけど、昔から遊んでて仲良くて。
MUD:元々のつながりでいうと10年以上ですね。
KIKUMARU:長くて20年。幼稚園から一緒のやつもいます。
WWD:KANDYTOWNとして活動する前から一緒にいた感じ?
BSC:そうですね。ちょっとどころか、曲作るにせよライブするにせよ、いつもみんな一緒にいました。
DIAN:もともとのつながりは音楽じゃなかったんですけど、ラップがそれをさらにつなげてくれました。
BSC:昔から遊んでる中で色んなことやってるやつがいて、その中でラップしてるやつらが集まってKANDYTOWNとしてやってる。後から名前をつけたって感じです。
WWD:KANDYTOWNという名前をつけたのはいつ?
GOTTZ:2014年くらい、「KOLD TAPE」っていうフリーアルバムを出した時ですね。
BSC:その前にRyohuとIOの2人が「Fellas Ship」っていうフリーのミックステープを出したんですけど、それも一応KANDYTOWNとしてやってて。その時はまだ“C”ANDYTOWNだったんですけど。そのうちCがKになりました。
WWD:KANDYTOWNの“K”は出身地が関係しているとか。
BSC:メンバーのほとんどが世田谷区の喜多見とか駒沢とか経堂とか、出身地のイニシャルが“K”始まりばっかなんです。
KIKUMARU:あとはマーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)の曲で「Club Krazy」って曲があるんすけど、それも“C”じゃなくて“K”だったり。
BSC:OKAMOTO'Sのオカモトレイジがいつも“KTOWN”って言ってて。それで「イニシャルを“K”にしようぜ」みたいなことがあったり。でも自分たちでも理由はわからないっす(笑)。
DIAN:全部正しい。結局“K”だったっていう。
WWD:今年雑誌でも多くの特集が組まれている。なぜ今、ヒップホップブームなのか?
GOTTZ:俺の友達も含めて、昔はバンドが主流だったけど、ラップの方が簡単っていうか、敷居が低いっていうか(笑)。そもそも俺とかDIANは地元の先輩に連れてってもらったカラオケでいきなりフリースタイルやらされてって感じでした。やってみたらできちゃって。バンドになるとスタジオ借りて、ギター買って、って色々諸経費もかかる。
BSC:歌うにしてもメロディーが必要だけど、リズム合わせてればラップになるしね。
KIKUMARU:単純に何もないところから始められるじゃないですか。ただ音が鳴ればラップができる。最近テレビでもフリースタイルとか出てきて、人口が単純に増えてきたんだと思います。
WWD:流行ってること自体は単純にうれしい?
KIKUMARU:別にそれは意識してないですね。俺らは俺らのことやってるだけで、周りでたまたま流行ってる、ってだけですかね。別に入りはなんでもよくて、これをきっかけにヒップホップにはまってくれればそれはいいことだと思う。
MUD:俺らが始めた頃って、服もダボダボで。今は黒人でも白人でもスキニーパンツとか履くじゃないですか。そういうのを考えると境界線とかなくなったのかなって思う。昔はショーン・ジョン(SEAN JOHN)とか不良の音楽みたいな感じだったけど。
BSC:わかる。今は不良だろうとオタクだろうと学生だろうと誰でもできる。ラップに落とし込める。
DIAN:そういうところがいいんじゃないですかね。仕切りがなくてみんなできるし、不良なやつもいるし不良じゃないやつもいる。
GOTTZ:俺らが先輩に教えてもらった環境が、今はYouTubeとかにあるから、今の時代に流行るのはすごく良いことだと思う。でもそこだけを掘っていくのか、それともルーツにあるものを知ろうと思うのか、その違いで全然差が出ちゃう。
DJ Minnesotah:単純に根っこの部分を知ればもっと楽しくなるよ、とは言いたい。広まるのはいいことだけど。
DIAN:個人的な意見ですけど、バンドって音楽知らないやつからすると、「このベースかっけえ!」とかいきなり気づきづらいかなって。でも、ラップは1分の動画を1回見ればその凄さがわかる。
GOTTZ:確かに、拡散されやすい。
KIKUMARU:時代ですね(笑)。
WWD:そもそもファッションは好き?
MUD:俺はヒップホップ自体ファッションから入りましたね。
BSC:実際俺もそうですね。見た目がまずかっこよかった。あと、いとこがB-BOYだったんで。
KIKUMARU:同時っすかね。かっこいい仲間がそういうファッションをしてたんで、一緒に服買いに行って、その時に一緒にラップも聴いて。それで、「この音楽いいなー!この服もいいなー!」みたいな。
MUD:B系の服を着て、ノートとペン持ってリリックを書いてるってのがそもそもファッションだったんすよ。そのスタイルがまずファッションだった。
KIKUKARU:俺は学校がずっと私服だったんすけど、中学くらいからB-BOYがいたんすよ。YUSHIっていうKANDYTOWNの仲間で、去年事故で他界してしまったんですけど。そいつが中一の頃から頭にドゥーラグ(布)巻いて「ニューエラ(NEW ERA)」被って、「ショーン・ジョン」のセットアップに「ティンバーランド(TIMBERLAND)」履いてて。かっこよかったんですよ。
BSC:逆に俺は学ランだったんですけど、学ランだと格好つけるのがキックスとか中にパーカー着るとかしかないんですよ。私服は私服だからこそっていうのがあると思うけど、こっちは学生服だからこそのファッションってのがありました。
WWD:ファッションについては、周りの人に憧れたことが多い?
KIKUARU:俺はYUSHIですね。服を貰ってたりしたんですけど、まずデニムが34インチとかオーバーサイズなんですよ(笑)。下だけデカいとかダメなんで、まずは1セットそろえるところから始まりました。
Minnesotah:Ryohuと一緒にバスケやってたんすけど、当時のNBAにすごい影響を受けてたから、太いバスパンとTシャツでリズム取りながらバスケやってて。超かっこよかったです。
GOTTZ:俺は高校の時はコテコテのB-BOYが好きじゃなくって。兄貴からもらった「ステューシー(STUSSY)」のブカブカのアイテムとか分かんなかったんすよ。当時は90’sの古着リバイバルみたいなのが流行ってて、そういうのが好きで、「バンズ(VANS)」の“ハーフキャブ(HALF CAB)”とか欲しくて、古着屋ばっかまわってましたね。
WWD :ちなみに、どこの古着屋に行ってた?
GOTTZ:原宿の「ワッツアップ(What'z up)」とか「ベルベルジン(BERBERJIN)」、下北沢の「ヘイトアンドアシュバリュー(HAIGHT&ASHBURY)」とか「フラミンゴ(FLAMINGO)」とか。高校の頃から「ヌーディージーンズ(NUDIE JEANS)」みたいなタイトなデニムを履くB-BOYが増えて、それこそエイサップ・ロッキー(ASAP Rocky)とかの流れで、ダボダボから細身に、キャップも“スナップバック”が主流に変わっていって。今は原宿にある「スタジアム(STADIUM)」ってお店が当時代官山にあったんすけど、そこに連れて行ってもらったり。
WWD:今オススメの店やブランドはある?
GOTTZ:本当に欲しいものがあったら、今はインスタとかあるじゃないですか。だから、そういうので俺は見て買いますね。
KIKUMARU:渋谷の「グロウアラウンド(GLOW AROUND)」って店は俺らの仲間のMIKIってやつが働いているんですけど、そこは昔からかっこいいですね。
DIAN:俺は「Paper Chase」って曲のPVで着てる服が「ヴェルサーチ(VERSACE)」の80年代のやつなんですけど、それは渋谷の「アニキ(aNiKi)」って店で買いました。
BSC:町田の「マイロ・スタイル(MILO STYLE)」っていう店。おっちゃんが自分で仕入れてきて1人でやってる商店街の中にあるちっちゃな店なんすけど、そこはかなりいいっすね。おっちゃんがマニアで。
MUD:あと町田の「ダンジル(DANJIL)」ですね。昔からあるんですけど、ヒップホップのビンテージばっか集めてて、全てがかっこいい。
GOTTZ:3年前くらいからエイサップが「ノーティカ(NAUTICA)」とか「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」の90年代のジップアップジャケットをみんな着て。そういう90sの服がいっぱいあるんすよ。今、リバイバルが流行ってるじゃないですか。だから高くなっちゃって(笑)。昔は2900円だったのに、7000〜8000円近くしたり。
KIKUMARU:高円寺にも「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」だけの店があるよね。壁一面「ラルフ ローレン」みたいな。渋谷の「T」もそうだね。「ラルフ ローレン」はみんな好きっすね、いっぱいありますけど。「カーハート(CARHARTT)」「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」とか。「ラルフ ローレン」だと親父からお下がりとかもらうんで。
WWD:みんなで買い物には行かない?
KIKUMARU:ほんと、たまに行きますね。たまたま原宿に用があって、「30分空いてるから服でも見に行くー?」みたいな。昔はガンガン行ってました。中3くらいの時、デカい服が流行り始めて周りのラップやってるやつらがみんな服に目覚めた時は、「みんなで服を買いに行こう!」みたいな。
BSC:確かにキッズの頃は洋服屋さんにたまってたね。
KIKUMARU:店員さんがラッパーだったりした。だからただ遊びに行ったりとか。
KIKUMARU:宇田川の「サベージ(SAVAGE)」とか。「ノマディス(NOMADS)」っていうなくなった店が東急ハンズの前にあって、スケーターの服とかがあって、中学の頃は本当によく行ってましたね。あの辺に昔はビンテージがめっちゃあって、洋服屋もレコード屋もすごかったし。中学生の頃は服が偽物か本物かみたいなのにこだわってました。「あそこの服は偽物だから買うな」ってYUSHIに言われて、ここのは本物だから今日はここ行こうみたいなのを決めて、学校終わった後に行って、みたいな(笑)。
BSC:買った後に「メイド・イン・チャイナ」とか書いてあったら「バッタもん買わされたー」みたいなこともあった(笑)。
KIKUMARU:中学生の段階で本物か偽物かみたいなところを見極めるところから入ってたんで。そういうところにも興味があってファッションが好きになってった、ってのはありますね。
GOTTZ:俺はそういうところで買おうとすら思わなかったけどね(笑)。
MUD:いや、中学生って金ないじゃん。お年玉とかお小遣いとか貯めないと。でも黒人の店はこれとこれを買うから安くして、とか値切れたから行ってた。
KIKUMARU:最初はそれでもよかったんすよ、服がなかったんで。だけどこだわってくると仲間とかも「そこはやめろ!」みたいな。それからだんだんとクオリティーも高くなってくるし、店も変わりました。
BSC:町田もめちゃくちゃ多かったんすよね、1本のストリートを通るのに10人くらいの黒人にキャッチされるくらいに、俺はそれが結構嫌でした(笑)。
MUD:でもあれもちょっとかっこいい、みたいに思ってた。
KIKUMARU:そうそう!そこで一歩登って行くみたいな(笑)。まず黒人と喋る文化なんてなかったし。しかも仲良くなったらちょっと安くしてくれる。
MUD:指鳴らしながら「HEY YO!HEY YO!」みたいなね(笑)。
KIKUMARU:「超カッケェ!」みたいな(笑)。
WWD:最近ファッションについて、気になることは?
GOTTZ:最近向こうのラッパーで、たとえばエイサップが「ディオール オム(DIOR HOMME)」の広告やったり、トラヴィス・スコットが「サンローラン(SAINT LAURENT)」やったり、ああいう動きが面白い。ビッグディールだなあって。夢があるし、様になる。
MUD:「ゲス(GUESS)」もリバイバルしたよね。ナオミ・キャンベルとエイサップ・ロッキーで。「ゲス」が90sのブランドって知ってるからこそ、新しい感じになるのがかっこよくって。アメリカ人って面白いっすよね。「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」にしても、ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)、ヤング・サグ(Young Thug)、フランク・オーシャン(Frank Ocean)みたいなラインアップが面白い。ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)が鏡の前で撮ってるやつとか超かっこよくて。だから起用された人が気になるとそのブランドも気になりますね。だって「カルバン・クライン」の広告でヤング・サグがグレーのスーツ着てるの超かっこいいじゃん!
WWD:22日にはフリーライブがある。
DIAN:そうですね。22日は恵比寿リキッドルームでフリーライブがあるんですけど、来れる人がいたら来てほしいです。Abema TVでも放送するんですけど、後で「行けばよかった〜」ってなると思うんで(笑)。
KIKUMARU:後悔する前に(笑)。
BSC:あと、11月に発売したアルバムは是非ゲトってほしいですね。
DIAN:音源としても物としての価値としても俺らの価値は落ちないんで。俺らが何よりハイブランドなんで(笑)。
【イベント情報】
■KANDYTOWN X’MAS FREE LIVE
日程:12月22日(木)
時間:OPEN 20:00/START 21:00
会場:恵比寿リキッドルーム
チケット:フリーライブ(別途ドリンク代 2DRINK 1000円)
整理券配布:17:00-20:00(リキッドルーム2F)
先行物販:17:00-19:00(整理券不要)