国内外の写真集、雑誌、ZINEと呼ばれる自主制作本に精通する代官山 蔦屋書店の高山かおり・雑誌コンシェルジュが、さまざまなジャンルや世代のクリエイターの書籍から、新しい表現や創造のためのヒントをお届けする。
テーマ「女性クリエイター/本プラスアルファで自己表現」
■「be」
写真と実物で楽しむ花の新たな魅力
東京・代々木上原の花屋、エデンワークス ベッドルームの篠崎恵美オーナーによる写真集「be(ビー)」。篠崎オーナーがセレクトしたドライフラワーが特典として付いている。篠崎オーナーと親交のあるスタイリストの番場直美と注目の若手フォトグラファー、野田祐一郎を迎え、大胆なスタイリングと写真表現で花の新たな魅力を味わえる一冊。「本来、花の写真集は花がいかにきれいかを撮るものが多いが、袋にモデルと花を詰めたカットや、ワンピースの中から花をのぞかせたカットなど、スタイリングありきの花の見せ方が斬新。それにZINE(自主制作本)で特典を付けることはまれ。ドライフラワーは1冊1冊、全て種類が違い、自分の好きな花を選ぶことができるのが魅力。花は生き物だから1つとして同じものはない。そういった『オリジナリティ』という価値観を伝えたかったのでは。購買層は篠崎さんを支持している若い女の子だが、もっと多くの人に知ってほしい。花屋が自己表現の一つとしてZINEを出す動きにも注目したい」。
■「Le Zip」
複数のメディアをぎゅっと圧縮
平成生まれの“宅録女子”(自宅で音楽を収録する女の子の意)として知られるマイカ・ルブテのCD、歌詞カード、写真集、インタビューと複数のメディアをぎゅっとまとめた「Le Zip(ル・ジップ)」。周りのフォトグラファーやスタイリストと作った同作品のタイトルについては「誰かにデータを送るときもジップファイルにして圧縮したりするけど、そういう圧縮ファイルみたいな。CDとBOOKが一緒になっているのもあるし、ぎゅっと凝縮させるっていう意味」(「ル・ジップ」より)と本文中で語られている。「本だけではなく、プラスアルファがあるものとして、他と一線を画している。シンセポップ音楽にのせたマイカの透き通るような歌声と、アンニュイな雰囲気の写真集を一緒に楽しんでほしい。エデンワークスの篠崎さんの『be』と共通しているのが、本を周りの友人たちと作っているということ。SNSの普及により、自分で作って発信することよりも周りを巻き込んで作る方が波及力が高くなる時代背景も影響しているのでは」。