オーガニック取引協会によると、2015年度アメリカのオーガニック全体の市場規模は433億ドル(約5兆円)だった。中でも、オーガニック食品市場の伸びは09年度に比べ、10.8%増と盛り上がっている。一方、日本のオーガニック食品市場規模はまだ小さいが、化粧品メーカーをはじめ、異業種からの参入も多く、変化が見え始めている。
「コスメキッチン(COSME KITCHEN)」で扱うオーガニックコスメに加え、オーガニックフードやドリンクをそろえた「ビープル バイ コスメキッチン(BIOPLE BY COSME KITCHEN)」を展開するマッシュホールディングスは4月15日、「アトレ恵比寿西館」2階に初出店となるオーガニックレストラン「コスメキッチンアダプテーション」をオープン。「通いやすい店づくりを目指しているため、リピーターが多い」と、マッシュホールディングス飲食事業部の担当者は話す。恵比寿駅直結という好立地から幅広い層が利用し、男女比は2:8となっている。「有機野菜のサラダバーやボリュームのあるファラフェル(ひよこ豆を使った中東のコロッケ)が男性やオーガニック初心者に人気。満足度が高いベジ料理が受けいれられている」と語り、計画に対し1.5倍の売り上げとなっている。同フロアの「コスメキッチン」にもレストランの待ち時間を利用した人の流れが生まれ、スーパーフードのパイオニアブランド「サンフード」の売り上げシェアが伸びていることからも「インナーケアを意識する人は増えていると感じる」という。
ファッション業界からは、デリ、オープンテラスカフェ、レストランの3スタイルの「エル カフェ アオヤマ」が11月11日にオープン。二見早瀬エルカフェPRは、「デリとカフェが20~30代女性の利用が多いのに比べ、レストランは30~50代の幅広い層が利用し、男女比は4:6となっている。もともとファーマーズマーケットやオーガニックの飲食店が多く存在するエリアに当店ができたことで、『青山のエリア自体のオーガニックムードが高まっている』と、うれしい声もいただいている。ビジネスやファッションにおいて発信力のある街だからこそ、オーガニック食材の生産地や生産方法をもっと伝えていくことが課題だと考えている」と語る。実際に、来店するお客からは食材の産地や食事法について質問を多くもらうという。「ただオーガニックなだけではダメだとも感じている。デザインやコンセプト、ストーリーなど全てがバランスよく店に反映されていて初めてお客さまが興味を持ってくれる」。
もともと食を扱っているブラウンシュガーファーストは6月9日、初の路面店「ブラウンシュガーファースト」を東京・外苑前にオープンし、「楽しく美味しいジャンクオーガニック」を広めている。同店は、30代の親子連れに加え、原宿の近くという土地柄、外国人客の利用も多い。「店を見て、スーパーでの試食販売会の声がかかることも増え、販売会の機会が1.5倍になった(これまでは百貨店中心に開催)。販売会でお客さまと触れ合うと、オーガニックへの関心が高まっている印象を受ける」と荻野みどりブラウンシュガーファースト社長。今後は、「メーン商品であるアイスクリームを、『もっと身近な場所で食べたい』との声も多く、来夏にスーパーでの販売を目指している。また、日本のオーガニックブランドとして海外の販路拡大にも力を入れていく」と述べ、アジアから海外展開を視野に入れている。
12月9日にはフランス発のオーガニックスーパー「ビオセボン」が東京・麻布十番にオープンするなど、オーガニック食材がますます身近になっている。同店には化粧品と並んで、インナーケアとしてサプリをそろえている。四十八願(よいなら)邦子ビオセボン・ジャポン商品・物流部マネージャーは「オーガニックの良さが一番わかるのは、実際に口にするものだと考えている。そのため、今後もサプリメントは強化していく」と期待を寄せている。
サプリメントや食材などは男性も取り入れやすく、オーガニック市場のさらなる拡大には食がカギとなる。今後もあらゆる業界からオーガニック食品市場への参入に期待したい。
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