インディテックスの基幹ブランド「ザラ(ZARA)」は11月23日、新宿旗艦店を増床リニューアルオープンした。新たなグローバルコンセプトを体現する2300平方メートルの売り場は、RFIDタグや、試着室内からサイズ変更などを依頼できるタッチパネル設置など、デジタルを駆使した機能も充実。来日したヘスス・エチェバリア=インディテックス広報本部長に、今最も注力しているテクノロジー施策の狙いを聞いた。
「ザラ」の最大の強みは、テクノロジーの活用によるスピード生産・スピード経営だ。継続的に強化してきたECは好調で、オンラインで注文して店舗で受け取る顧客の割合は全体の66%にまで伸びている。15年7月に導入した全商品の位置を特定するRFIDタグも、「ザラ」の全店舗で導入が完了し、18年には全てのインディテックス傘下ブランドで使用開始予定だ。また、9月にスペインでローンチしたモバイル決済サービスも将来的には日本でもスタートする。実店舗とECのシームレス化についてエチェバリア本部長は、「オムニチャネルというよりは“インテグレーション”と捉えている。顧客にストレスなく、柔軟に買い物を楽しんでいただくために、われわれも実店舗とECを同チャネルとして扱う必要がある。そのためにはRFIDタグが欠かせない」。
RFIDタグによって店舗間、オンラインでの在庫移動の効率が上がり、店舗単位での売れ行き把握が可能になった。これを店頭に出す商品の調節、さらにはディスプレーといったVMDの最適化に役立てているという。
だが、同社がテクノロジーにこだわるのは「あくまでも顧客サービス向上のため」だ。エチェバリア本部長は、「われわれはテクノロジー企業ではなく、顧客ありきのファッション企業。RFIDタグや新たな決済アプリも、カスタマー・セントリック(顧客中心主義)で顧客のニーズや利便性を最優先に考えたプロジェクトとして発展してきた。テクノロジーによってさまざまな道が開けたが、ファッション企業にとって最も重要なのは、人同士のコミュニケーション。いくらデータと格闘しても、デザイナーやサプライヤー、店舗スタッフらのリアルな意見交換がなければ、顧客のニーズを汲み取ることはできない。店長とスペイン本部も毎日電話で話している」。販売スタッフが接客にかける時間も格段に増えたという。
新宿店の他にも、「美しさ」「居心地」「機能性」「サステイナビリティー」を軸とする新グローバルコンセプトの下、インディテックスは世界中の「ザラ」の増床・改装を進めている。全店舗のエネルギー使用量を把握するシステムを導入して以来、日本では店舗でのCO2排出量を20%カットすると共に、50%の節水を実現。2020年までに全店舗のガス排出を40%削減する目標を掲げている。
「東京の人々はファッション性が高く、マーケットに限らず、文化的にもわれわれが吸収できるものは数多い。本社のデザインチームを年に2〜3回、リサーチのために東京に派遣しているだけでなく、日本側からもマネージャーを招き相互コミュニケーションを図っている。常に世界トップ10の売り上げをキープしていた新宿店からのフィードバックは、今後の店舗開発の重要な指針になるだろう」とエチェバリア本部長。日本での「ザラホーム」「ベルシュカ」「ストラディバリウス」の進捗には「満足している」とエチェバリア本部長。今後の店舗拡大や、他ブランドの日本進出に関しては「例えばSCに空きテナントが多いからといって急いで出店することはない。ブランドごとに異なる成長戦略がある。日本の顧客を理解しながら慎重に進めたい」と、ゆっくり構える。