2017年春夏シーズン、コレクションを発表した東京ブランドについてバイヤーから意見を求めた。回答したのは三越伊勢丹やユナイテッドアローズ、ビームス、TOKYOBASEのバイヤーたち。買い付けの有無を問わず、“良い”と思ったブランドを挙げてもらった。今季は「
サルバム(SULVAM)」「
エリン(ELIN)」「
ダブレット(DOUBLET)」の注目度が高い。
【三越伊勢丹】ウィメンズ
「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」は今季でグンと力を伸ばした印象
ショーを行ったブランドでは、「シアタープロダクツ」は突き抜けていて、一挙手一投足に目が離せない。「ユイマナカザト」にはオートクチュールでの表現を日常にまで浸透させた斬新なファッションを期待する。「シナ スイエン」は繊細で儚げで“女性と女の子”の狭間の複雑な心うまく作り出せている。「ケイタマルヤマ」は、デザイナーの想いの詰まったインスタレーションで、ラブリーでファンタジック、魅惑的だった。「ヨシキモノ」はハードル高く感じる“和装・着物”を祐真朋樹の全体監修とスタイリングで、ファッションとして提案できていた。「アキコアオキ」は今季でグンと力を伸ばした印象。テキスタイルやシルエットのバリエーション、スタイリング提案、アイテム数、色展開が広がった。「プラスチックトーキョー」は単なるギミックではない必然性のあるデザインとパターン、オリジナル生地のセットアップを提案し、ストリートカルチャーブランドから大人も着られる印象になった。「ミントデザインズ」はパンクでグルーブ感があり、“らしさ”が表現できていた。
展示会ベースでは、「ベルパー」が年々よくなっていて、いますぐにセレクト展開できる内容だった。今季スタートの「オーケー」は、「ハトラ」と「ヌケメ」のチームによるブランド。つかみどころのない感じで、どこに進むのか不明な雰囲気だが、今後に期待。ここ数シーズン見てきた「イン」と「ヨウヘイオオノ」は、リ・スタイルでの取り扱いが決まった。これからも注目していきたい。
その他、今後取り組みたいブランドは「バルムング」「ハトラ」「スポークンワーズプロジェクト」「ノーカ」「スローアキス」「リョウタムラカミ」「ティートトウキョウ」「スポロガム」「コトナ」「ケイスケヨシダ」「イェーライト」「スニュー」「ストフ」「アシードンクラウド」など。TOKYO解放区から新たな若き才能の発掘や、ファッションカルチャーの発信と提案を行う。
(寺澤真理/婦人・子供統括部 婦人第一商品部グローバルY-A5 TOKYO解放区バイヤー)
【三越伊勢丹】メンズ
「ダブレット」は東京らしいミックス感をうまく表現
「ネハンミハラヤスヒロ」は独創的なドラム、モデルのキャスティングなどの演出が素晴らしかった。ドレスやガウンのような羽織りをモノトーンにまとめ、麻世妙(まよたえ)生地を使い、デザインだけでない上質へのこだわりを強く感じた。「サルバム」はジェンダーの垣根を感じさせない、艶やかで、柔らかいシルエット。初回のショーよりも細部にまで追求している姿勢が垣間見え、他のブランドにはない個性を放っていた。
「リベルム アルビトリウム」は日本人デザイナーでありながら、ヨーロッパ的な独特の色彩や美的感覚を持ち合わせ、しっかりとモードの提案ができている。切り替えしや裾の加工など、細部まで丁寧。ストリートファッションが多い東京ブランドにおいては、貴重な存在だ。「ダブレット」は東京らしいミックス感をうまく表現している。英国のスーツ生地をパッチワーク風に組み合わせたセットアップスーツなど、オリジナリティーの高いアイテムに好感。
(高橋裕二/紳士第三商品部インターナショナルクリエーターズ バイヤー)
【ユナイテッドアローズ】ウィメンズ
「ウジョー(UJOH)」はソフトなエレガントを加えてパワーアップ
「サルバム」はエモーショナルなショーが素敵。ジェンダーレスであり、軽やかな服の中にも強さと芯のある“らしさ”が伝わった。「ウジョー」にはソフトなエレガントさが加わり、パワーアップしていた。「アキラナカ」は表情豊かな素材使いがすてきだった。構築的でボリュームのあるシルエットも、軽やかでエレガントなムード。程よいモード感があり、クリーンでフェミニンなバランスも魅力的だ。「エリン」はボリュームやバランス感が絶妙で、今シーズンのリアルな気分を新しいシルエットバランスで美しくみせていた。
(中島英恵/ユナイテッドアローズ ウィメンズ チーフバイヤー)
【ユナイテッドアローズ】メンズ
「サルバム」はデザイナーの人柄や感情が服に反映されている
「サカイ」をはじめ、東京をベースに世界で活躍しているブランドは、細かいところまで行き届いていて良かった。若手デザイナーの一推しは「ファセッタズム」と「サルバム」。「ファセッタズム」は何都市かにショールームを構えるトゥモローと契約することで安定感が出た。「サルバム」はデザイナー自身の人柄や感情がそのまま服やショーに反映されていた。東京ファッションアワードを受賞した「ベッドフォード」と「ダブレット」は世界に向けて活躍する目線を持ったブランドだと感じる。
新ブランドの「ミドリカワ」は久しぶりにパワーを感じる服だった。個人的にも好きな「ノンネイティブ」「ネクサスセブン」「5525ギャラリー」は、同じカルチャーを共有してきた同世代なので身に付けていて気持ちがよい。数々のブランドのパターンを影で支えてきたデザイナーが手がける「ウル」は、シンプルでありながら、今のシルエットを楽しめる。
(小木“Poggy”基史/ユナイテッドアローズ&サンズ ディレクター兼ユナイテッドアローズ原宿本店メンズ館ディレクター)
【ビームス】ウィメンズ
「リトゥンアフターワーズ」は女性なら誰でも魅了されるデザイン
「リトゥンアフターワーズ」は展示会に行く前からオーダーすることを決めていた。前シーズンとは全く違った切り口で、女性なら誰でも魅了される細かく行き届いたデザイン。オーガンジーのシリーズを中心にピックアップ。透け感のある素材の組み合わせで、夏のレイヤードを提案したい。
(東谷弥生レイビームス ディレクター兼バイヤー)
【ビームス】メンズ
「サルバム(SULVAM)」と「ベッドフォード」は勢いのある次世代の東京ブランド
「サルバム」と「ベッドフォード」から次世代の東京ブランドが成熟しつつある勢いを感じた。東コレの盛り上がりから、個々のブランドのショーを見るだけでなく、全体的にチェックする必要があると感じた。今後の期待値の高いブランドをいくつか見ることができた。「セブンバイセブン」はビンテージの再構築を中心に、徹底した素材のこだわりが魅力的。「サヴィー」はクリーンかつオリジナリティーに溢れていて、徐々にファンを増やしている。「アトリエ ベトン」はオーセンティックなホームウエアの佇まいだが、“リラックスと緊張”の相反する要素を併せ持っている。「レターズ」はシーズンテーマを持たず、長年愛用できるモノづくりに特化している。素材や仕立てなど洋服の本質的な部分をストイックに追求している姿勢に共感。
(山崎勇次/インタナショナルギャラリー ビームス 統括ディレクター)
【ステュディオス】ウィメンズ
「エリン」はニューカマーの中でも目立つ存在
東京で最後のショーを開催した「ビューティフルピープル」の展示会では、販売企画として113万円で4200点をそろえた“ハッピーセット”を提案するなど、常に進化するブランド施策が面白い。デビューシーズンから取り扱う「エリン」は、シーズンごとに時代の空気感にあった商品を提案できていて、ニューカマーの中でも目立つ存在。MDに偏りが無く、幅広い商品の買い付けができる。イチオシ商品は“タフタ ウェスト ギャザーブラウス”。
(田中芹里香/TOKYOBASEステュディオス ウィメンズバイヤー)