「マルニ(MARNI)」は、2017-18年秋冬ミラノ・メンズ・コレクションを発表した。
創業デザイナー、コンスエロ・カスティリオーニの電撃退任を受けて新クリエイティブ・ディレクターに就任したフランチェスコ・リッソによる、新生「マルニ」のメンズショーが開かれた。コレクションについてフランチェスコは、「思い浮かべたのは、子どもがパソコンのキーボードをずっとたたいている光景。1つキーボードをたたけば1つの文字が現れ、また1つのキーボードをたたけば次の文字が現れる。それはまるで1+1+1+1+……と、単純な計算がいつまでも続いていくよう。そこから、あらゆるものを自由奔放に加え、パーソナリティを表現するスタイルに行きついたんだ」と話す。
この発想、実に「マルニ」らしい。子どものような無邪気さと、あらゆるものを加えることで生み出す独特の視覚効果。そして、たとえ足し算の結果、最終的なスタイルが既存のドレスコードから逸脱したとしても、それがメゾンらしいプロセスを経て誕生したのなら、恐れず、歩みを進める勇気――。それらはすべて、これまでコンスエロが築き上げてきた「マルニ」そのものと言える。
コンスエロと同じ志向のフランチェスコと、コンスエロ時代と変わらないデザインチームがタッグを組めば、恐れることは何もない。コレクションは、彼女の電撃退任に伴う不安を打ち消した。フランチェスコが話す永遠の足し算のように、コレクションはさまざまなモノをただひたすらにマッシュアップ。それが大人らしく洗練されていても、子供っぽく幼稚でも関係ない。コートの上には、レトロチェックと太ベルト。パンツは股上が長く、ウエスト周りで生地がクシュクシュ。股下も裾も長く、シューズの上で大きなクッションを作る。そしてベルトは、さまざまなレザーパーツをパズルのように組み合わせたユニークアイテム。ハイブリッドのステンカラーブルゾンの二の腕周りからはファーが飛び出し、首回りからはパジャマシャツの襟。ガラスのボールとメタルチェーンを組み合わせたアクセサリーもチラリと覗く。コンスエロが生み出したアーカイブモチーフも、1枚のシャツの上に何種類ものせた。さらにはそれをパッチワークしたり、シワシワにしたり、とにかく足し算は過剰だ。しかし子どものようにピュアなマインドで続けた足し算は、どんなに続いてもプレイフルだ。これまで以上にファーを多用するなど、コンスエロとの違いも若干見え隠れしたが、新生「マルニ」は既存顧客を裏切ることなく順調なスタートを切ったといえるだろう。
傘下に「マルニ」を擁するオンリー・ザ・ブレイブ社のレンツォ・ロッソ代表は、「素晴らしいコレクションだった。『いろんなモノが、過剰に詰め込まれている』という印象を持った人もいるかもしれないが、コレクションは強いメッセージを伝えるもの。コマーシャルな商品には、そのいくつかを削ぎ落したものがあるだろう。消費者が商品を自由に選び、足し算を楽しんでくれれば」と話した。