男性向けのサプリメント(以下、サプリ)が売り上げ拡大傾向にある。その一因に、男性の健康志向だけでなく美容意識の高まりや、2015年4月にスタートした新制度「機能性表示食品」により、効果が分かりやすく説明されたサプリが出回り、消費者にとって商品を選ぶ選択肢が増えたことが大きい。これにより、各社が、男性特有の悩みである「薄毛」「肥満」から「男性不妊」まで幅広いアプローチのサプリを展開している。
じわじわと男性からの支持を集めているサプリの一つが、エステプロ・ラボが14年に発売した水素サプリ「プロトングランプロ」だ。「発売当初は、ほぼ女性のお客さまだったが、いまは約1割を男性が占めている」(齋藤晴香・広報担当)と、男性のサプリ利用増加を実感していると話す。その背景に、「発売時は、『美容』のイメージが強く、男性は手に取りにくいものだった。しかし、一度サプリを摂取すると『疲れの取れ方や寝起きが違う』とリピーターに。忙しく働く男性がホームケア商品として愛用しているケースが多く見受けられる」と分析する。「今後は頭皮に着目し、髪の悩みを内面からアプローチできれば」。
そんな男性特有の悩みであるスカルプケアに、シャンプーや薬用育毛剤に加え、生活週間ケアにもつながるとしてサプリでのケアを提案したのがアンファーだ。「スカルプD」ブランドから、15年5月に発売した髪のためのプロテイン「スカルプD サプリメントAGAメンズプロテイン」が好調で、上位4商品(全てヘアケア系)で同社のサプリ全体の売り上げ個数7割を占めている。「『AGAメンズプロテイン』は、新規購入が半数以上。既にシャンプーなどで頭皮ケアを行ってきたお客さまが、効果をさらに効率よく実感したいというケア意識の高さから、表面的なケアだけでは得られなかった効果(例えば、髪の毛のハリ・コシといった髪そのものの組成の変化による実感)を得るためにサプリを服用している。当社のサプリ全体の購入の男女比は8:2と男性が多く、美容・健康のカテゴリーは女性の利用が多い。しかし、コラーゲンや乳酸菌配合のサプリは男性利用も多く、美容にも興味を持っていることが分かる」(道端孝助・商品開発部開発課課長)。
新たなアプローチとして、男性不妊に着目したのは、ECサイト「美的タウン」を運営するフックが16年7月に発売した「美的ヌーボFOR MEN」だ。「既存の『美的ヌーボプレミアム』は20〜50代の女性にご愛用いただいており、豊富なビタミンやミネラルが入っていることから『風邪の夫に飲ませている』『妊活のために夫婦で摂取している』といった声が多かった。それなら、男性にもっと効果的な栄養素を配合したサプリを開発しようと、『FOR MEN』にはビタミン・ミネラルにエナジー成分のガラナやエイジングケア成分のセサミンを追加。プロテインや精力剤ではない男性用サプリは珍しいと、発売からこれまで売り上げは右肩上がり」(藤田圭子・営業企画部部長)と話す。
昨年10月に「matsukiyo LAB」から「食べるサプリ」を発売したマツモトキヨシホールディングスは、男性のサプリ購入の増加について「店頭やCM、ネットの情報などに接する機会が増えたことや、機能性表示食品により理解が深まったことが理由の一つではないか」と考察する。同社が2店舗を構えるヘルスケアショップ「matsukiyo LAB」では、シートに記入した食生活や生活習慣を基に、管理栄養士が一人一人に合ったサプリを処方するサービス「サプリメントバー」を開始。「オーダーメードの特別感や1カ月分3000~5000円という手頃な価格が受け、男性の利用も多い。『食べるサプリ』は、バーでの利用頻度の高いマルチビタミンなど6アイテムを展開し、水なしで服用できるチュアブルタイプとなっている」(一宮伸光・商品部バイヤー)と語り、「続けやすさ」「手軽さ」に重点を置いた。
これまで、「健康を補う」役割が強かったサプリは、新制度の浸透などにより「内面から美しく」「夫婦で一緒に」「手軽に」といったより生活に寄り添ったアプローチが必要になってくる。機能面では、男性サプリといえば、育毛やプロテイン、精力増強といった役割がまだまだ多く、ニーズが高まる男性ならではの美容(体臭やオーラルケア、髭そり跡など)に特化したサプリの展開に商機があるだろう。