ロンドンからパリまでの2017-18年秋冬メンズはとっくに終了しましたが(汗)、今更、今回の海外取材で思ったコトをイロイロ書いてみようと思います。とはいえ2週間後には極寒のニューヨークに渡航予定。NYコレが始まったら再び怒涛の日々がまっているので、この「ショーは終わったのに、今頃始まったメンズコレ連載」の執筆期間は正味2週間です。さぁ、4本くらい書けるかな?この一本で終わりにならないようにしなくっちゃ……。でも、一応編集長の向みたいに「連載」なんて名前は付けず、「コラム」ってごまかしておこう……。あぁ、向はなんてエラいんだろう……。そんなことを考えながら、シャルル・ドゴールの空港でパソコンに向かっています。これから、乞うご期待ください(笑)。
【オートクチュール連載】パリコレ「ヴェトモン」を見てロバート秋山さんを思い出す(向千鶴)
さて、SNSがすっかり普及し、コレクションの在り方にさえ大きな影響を与えているワケですが、かく言う僕も、メンズコレ期間中は、せっせと私的インスタにいろんな写真を投稿しておりました。その存在はここでは明らかにしませんが、自分のスタイルを日記風に書き留めてみたり、ショーの一場面を切り取ってみたり、展示会でだれよりも早く袖を通した写真をアップしてみたり、まぁイロイロ楽しんでいるワケです。たとえば、こんなカンジでしょうか?
こうした写真を撮影してくれたのは、今回フィレンツェからミラノ、そしてパリを一緒に旅した、我が同僚です。きっとこの同僚、「え、また撮るの?」くらい思っているハズですが、そんな思いはモッサモサのひげで表情を隠すことで表に出さず、半ば専属カメラマンのように最後の最後まで付き合ってくれました。彼には感謝してもしきれないのですが、にもかかわらずこの先輩、ついでに一言、「洋服は、着てみなくちゃわからないよ」と話して軽くお説教。次のシーズンこそ、僕のようにバンバン試着するよう諭したワケです。はい、面倒くさい先輩ですね、我ながら(笑)。
いやだってね、洋服ってやっぱり着てナンボ、身に着けてナンボですからね。袖を通してみなくっちゃ始まりません。袖を通せば、必ず新たな発見があるんです。例えば、誰もが思ったより似合わなかったら、その洋服は“モデル効果”で素敵に見えていただけかもしれない。一方、予想以上に着心地が良かったり、思いのほかしっくりきたら、再評価のきっかけになるでしょう。そして、新しいシルエットは、「これは、どうやって売ればいいんだろう?何に合わせれば、魅力的に見えるんだろう?」とビジネスの現場に思いをはせる契機にさえなりえます。そして、そんな写真をSNSにアップして「いいね!」がもらえたら、今度はその数やコメントが、新たな気づきのヒントになるもしれない。そう、試着はただの好奇心ではなく、れっきとした取材の一環であり、洋服をさらに深く理解するための手段なのです!!
今回、それを痛感した“試着大会&一人ランウエイショー(でも時間がないから10分限定)”がありました。フィレンツェでショーを見て、パリの展示会で実際に袖を通した「サルバム(SULVAM)」です。デザイナーの藤田さんにもフィレンツェで話したので思い切って言っちゃいますが、僕、今まで「サルバム」の洋服はよくわからなかったんです。「なんだか気難しそうだな。めんどくさいカンジだなぁ」という思いが先行し、上の写真の通り単純明快でキャッチーなスタイルを好む僕には、ちょっと敷居が高かった。でも、いろんな人が評価して、今回ついにフィレンツェでショーを開くまでに至ったものですから、「わかった気にならなくっちゃ」と思いこもうとしていたフシさえありました。
【ルック】「サルバム」2017-18年秋冬ピッティ・メンズ・コレクション
ところが、今回、パリの展示会で「サルバム」の洋服に袖を通してみると……楽しい!
一見すると、いまだに気難しそうな洋服ですが、自由に組み合わせ、ああでもない、こうでもないとシャツのボタンをはずしたり、もう一回留めてみたり。藤田さんの話はそっちのけで(失礼!)、試着に没頭し、鏡を見つめてしまいました。「あぁ、『サルバム』って全然気難しくなくって、むしろ超楽しいじゃん!」と今さら気づいた次第なのです。遅っ!
でも、ちょうど1年前、同じくパリの展示会で「サルバム」の洋服に袖を通したときは、正直、こんなに高揚しなかったんです。ってことは、きっと、今回のコレクションは、1年前よりも格段に良かったってコト。いまだに頭の中ではぼんやりとしかわかっていませんが、体と心は、その興奮をハッキリ覚え、インプットされました。
てなワケで皆さん、気になる洋服があったら、思い切って袖を通してみましょう!きっと、新たなエモーションが喚起され、買えなくても、買わなくても、ちょっと気分が変わるハズです。