京都国立近代美術館は4月29日~8月6日、京都の伝統工芸と「ヴァン クリーフ&アーペル」のハイジュエリーの熟練技術にフォーカスする「技を極める-ヴァン クリーフ&アーペル」展を開催する。「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」の宝飾やデザインの変容とともに、明治・大正期の日本の工芸作品を集め、日仏の技同士の“対話”を捉える。出展作品とには、友禅の人間国宝の森口邦彦が特別に制作した着物も。同展覧会の音声ガイドとナビゲーターは女優の松雪泰子が務める。
建築家の藤本壮介が設計を手掛ける会場は、「『ヴァン クリーフ&アーペル』の歴史」「技を極める」「文化と融合の未来」の三部構成で、「ヴァン クリーフ&アーペル」が1906年の創業から1世紀にわたり制作してきたハイジュエリー約180点と、並河靖之の七宝や西村総左衛門の刺繍絵画をはじめとする明治・大正期の陶芸や漆芸、金工といった50点以上の伝統工芸品がそろう。
1月30日に東京のフランス大使公邸で行った発表会で、ヴァン クリーフ&アーペルの二コラ・ボス=プレジデント兼最高経営責任者(CEO)は、「伝統工芸とハイジュエリーという新たなアプローチに惹かれ、今回の展覧会開催に踏み切った。日本はブランドにとって、マーケットとしても、文化的にも重要な国。モノづくりの結果だけでなく工程を見つめようとする日本人の姿勢も素晴らしい。ブランドの歴史を学んでいく中で『ヴァン クリーフ&アーペル』の魅力を知っていただけたら」とコメント。同ブランドは昨年、シンガポールのアート科学博物館でハイジュエリーと原石に着目した展覧会を、12年にはパリ装飾芸術美術館でも展覧会を開催している。
発表会では森口邦彦や藤本壮介、京都国立近代美術館の松原龍一・学芸課長らを迎え、展覧会への想いや見どころを語った。三越のショッピングバッグをデザインしたことでも知られる人間国宝の友禅作家、森口邦彦はトークセッションの中で、「50年以上前にフランスに留学し、そこで学び、自身の中で目覚めたものが数多くある。今回の展覧会はその時のお返しだと考えている。今後、日仏、また京都とパリが新たな関係を築き上げていくことが大切。『ヴァン クリーフ&アーペル』のジュエリーと伝統工芸が互いに働きかける中で何かが生まれればと思う」と話した。また、「“アーティスト”は現代の表現であり、もともとは“アーティザン”として、人の役に立つモノを美しく、かつ快適な生活空間を作るために存在した。工芸家が技を極めるのは、目的ではなく最終的にイメージするものを作るための手段であり、人間の生活をより良くするためのモノづくりでなければ意味がない。私は友禅作家という立場を、女性が美しくなるお手伝いをする使者であると考えている」と、工芸品、また工芸家の本質についても触れた。
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