ファッション

目指すはファッション版“スター誕生” 古舘伊知郎の事務所が千駄ヶ谷に“FAB”施設

 アナウンサーの古舘伊知郎率いる古舘プロジェクトは4月、東京・千駄ヶ谷にミシンや3Dプリンタ、刺しゅう機などの最新鋭の電子工作機械を備えたFAB(ファブ)施設「アンドメイド」をオープンする。古舘プロジェクトにはタレントでデザイナーの篠原ともえが所属するものの、FAB施設の開業は初の投資事業になる。なぜ今ファッションなのか、そしてなぜFAB施設なのか。同事業を手掛ける荒木浩二・古舘プロジェクト事業開発部MMB事業本部エグゼクティブプロデューサーを直撃した。

WWDジャパン(以下、WWD):芸能事務所とファッションのファブ施設。遠いようにも思うが、「アンドメイド」を作ることを思いたった理由は?

荒木浩二・古舘プロジェクト事業開発部MMB事業本部エグゼクティブプロデューサー(以下、荒木):そもそも僕はフリーのプランナーで数年前から、電子工作機械を使った“ファブ(編集部注:電子工作機械を備えた工房)”には注目していた。3Dプリンタやレーザーカッター、CNC旋盤などを備えたファブラボが全国に設立され、雑貨や日用品に関しては「ミンネ」のような手作り雑貨専門のECサイトも盛り上がっていた。ファブでなくても、料理のレシピサイト「クックパッド」が普及し、全国の商業施設にABCクッキングがオープンするなど、“DIY”文化が大きな流れになっていると感じていた。一方で衣食住のうち、服にも同じようなニーズがあるにも関わらず、そういったサービスが登場していないのは変だな、と。調べてみると、服作りに関しては、技術的なハードルが高いことがわかってきた。デザインしてパターンを作って、縫う。これは難しいな、と。しかし、僕のようにテレビやエンタメ業界の人間からすると、普遍的なものはコンテンツとして非常に強い。それは震災の時に感じた。全国には服飾の専門学校があり、卒業生は全国にいるので、実は服が作れる人は少なくない。にも関わらず、ハンドメードの服作りが盛り上がらないのは、場所や機材がないから。そこをクリアすれば、ニーズはあると感じた。“誰もが自分の服を自分で作れる”というミッションに行き着いた。

WWD:とはいえ、電子工作機械は高額で異分野からの参入にはリスクが高いのでは?

荒木:当初はマッチングサービスやクラウドファンディングを検討したけど、一過性のプロジェクトでは意味がない。“誰もが自分の服を自分で作れる”というミッションを達成するには、継続してコトやモノを生み出せる、リアルな場が絶対に必要だった。けど僕自身も、昨年1月に古舘プロジェクトに話を持っていった段階で、ここまで大きくなるとは思っていなかった。古舘プロジェクトの方が「面白いね」という形で、一気にプロジェクトが動き出した。

WWD:ビジネス的には、どのような方向になるのか?

荒木:目指すのは、ファッション版の“スター誕生”だ。場を運営する上で、必要なのは明確な出口。既存のハンドメード市場は一部で盛り上がっていて、かなり稼いでいる人もいるけど、その先がない。作り手からすれば稼ぐことも大事だけど、本当に必要なのは、“作る”ことの楽しさは面白さ、夢を与えられる存在になることじゃないかな。ファッションの場合は特に、デザイナー自身のキャラクターにも、商品と同じくらいの重要性がある。「アンドメイド」では、オーディションのような形で、デザイナーを発掘し、プロ契約を行う予定だ。タレント事務所というと軽く見る人もいるかもしれないが、人をマネジメントすることは実際には、すごく息の長い仕事で、その人の半生に寄り添うようなもの。デザイナーにも賞金などの一過性の支援ではなく、継続して彼ら/彼女らの活動をサポートするというスキームがフィットするはずだ。

WWD:具体的には?

荒木:音楽アーティストやタレントとのネットワークを生かし、衣装提供をしたり、実際にテレビ番組を作ったりと、やれることは多い。「アンドメイド」は幸いにも、「ファブラボ」の立ち上げメンバーであるwipが設計を担当。JUKIなどの協力を得て、日本のファブ施設としてはトップレベルの設備の充実度になる。だから、僕らが探しているのは、“デザイナー”というよりも“縫う人”。縫わない人を育成するつもりはない。

WWD:既存のファッション業界との連携は?

荒木:目指しているのはファッション業界の活性化だし、僕らはファッションに関しては素人だし、既存のブランドなどのご協力は不可欠だ。「アンドメイド」も機械メーカーの協力なしには成り立たないし、施設内で実施する服作りのセミナーに関しては服飾専門学校のカリキュラムを参考にしている。実際に出来上がったものを売るのも、僕らが手掛けるつもりはなく、既存の商社やファッションブランドとの連携を考えている。ファッションデザイナーの新しいタイプのインキュベーション施設として、あるいはプラットフォームとして、既存のファッション業界の企業にはどんどん活用してもらえればと思っている。

WWD:今後は?

荒木:まだ検討段階ではあるが、早い段階で多店舗展開はしたい。ファッションには全国で特色があり、福岡や京都、札幌などの有力都市に広げていきたい。

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