モデル事務所ボン イマージュ所属の吉田沙世と中田みのりがファッションブランドを立ち上げる。ブランド名はそれぞれ「キャロルアダム(CAROL ADAM)」と「メッシス(MESSIS)」。2月21日から2週間限定の公式ECサイトを立ち上げ、完全受注生産の体制をとる。本人らのSNSを利用した販売プロモーションに加えて、ビジネス面をボン イマージュが、パターンなどについてのアドバイスをOEM事業やブランド設立を支援する中山良一ANTHEMICK社長が手助けする。ブランド設立の経緯や具体的な取り組みについて、ディレクションを行った2人とブランド設立を支えた中山社長に聞いた。
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WWDジャパン(以下、WWD):まず、中山社長の経歴をお教えください。
中山良一・ANTHEMICK社長(以下、中山社長):岡山のクロスカンパニー(現ストライプインターナショナル)でプレス業や企画を担当していました。拠点が東京に移転してからは専務取締役を担当していました。その後、クロスカンパニー時代のインフルエンサーとのつながりと、工場や生産先とのつながりを生かして9年前に独立。今はインフルエンサーが手掛けるEC専売ブランドや他社ブランドのディレクションなどをしています。
WWD:ディレクションのプロでもある中山社長が今回の2ブランド設立に至ったきっかけとは?
中山社長:昨年10月頃、新しいブランドをやってみたいと思っていた時に、キャスティングなどを手掛ける松永企画という企業の方がボン イマージュとつないでくれました。ボン イマージュの中で選定をしていただいて、本人たちの希望もあり、吉田沙世さんと中田みのりさんを紹介していただきました。
WWD:話をもらった側としてはどんな気持ちだった?
吉田沙世(以下、吉田):もともと洋服を作ってみたいと思っていて、好きな写真をスクラップしたりしてたんです。古着が好きなんですが、「形や生地を少し変えれば今の気分なのに!」と思うものが多くて、それを自分で形にしたいと思ってたんです。モデルとして洋服に近いところにはいたものの、洋服作りは全く知らないことばかりだろうと、興味津々でした。
WWD:その後の流れは?
中山社長:まずは早速、打ち合わせをしようと。2人とも熱意があって、いきなり作りたいイメージの写真などを資料として持ってきてくれました。2回目の打ち合わせでは具体的な生地見本を見せてアイテムを決めるなど、かなりスムーズに進みましたね。ただし、初めから型数を増やすとやりたいことがブレると思ったので、1人あたり6型くらいにしようと相談しました。社内にパタンナーがいることもあり、僕がイメージを伝えて2週間くらいでサンプルを仕上げてもらい、調整を重ねて数カ月で洋服が完成しました。価格は私が一旦決めて、相談の上で決まりました。
WWD:その間、2人はどういったディレクションをしてきたか?
吉田:シンプルで自分が着たい服を作りたかったのですが、自分の中でのイメージが強すぎて、6型サンプルを用意していただいたものの、最終的には4型を商品化することにしました。コンセプトは後付けしたようなもので、母親から名付けたブランド名「キャロルアダム」も、決まったのは年末でした。
中田みのり(以下、中田):リアルな気持ちを大切にしました。写真を撮るのが好きなので、初めは「クラゲの写真を使った“クラゲT”を作りたい」くらいに考えていたんですが、その時の気分でいろんなアイデアが浮かんできました。例えば当時、チャイナ服にはまっていたので作りたかったのですが、中山さんが提案してくれたデニム素材を使ってみるととてもしっくりきて。そういったやりとりを経て、わりとスムーズに6型を決めることができました。
WWD:実際にやってみた感想は?
吉田:思い描いているデザインを言葉にして伝えるのがとても難しいと思いました。伝わったつもりでも、出来上がったサンプルが想像と違ったり。私はプロではないので、ボタン1つにしても「できる・できない」がわからなくて。パンツの後ろにもポケットが欲しいと思ったんですが、そうすると値段が上がってしまうと言われ、サイドポケットだけにすることに・・・。それなら、たくさん入るように深めのポケットにしてもらうなど、細かいやりとりをたくさんしましたね。でも、想像していたより楽しかった。
中田:私はその時の勢いで作っちゃった部分が大きいので、次回は勢いも大切にしつつ、その手前で色々練っておきたいです(笑)。でも、ECでは打ち合わせから販売、お客さんの元に届くまでの期間がとても早いので、勢いを形にしてすぐ届けられるのは素晴らしいところです。
WWD:販売期間はとても短いわけですが、目標などはある?
吉田:どのくらい売れるか予想がつかないんですが、中山さんから「過去にパジャマのセットアップを作ったインフルエンサーが7000枚を売った」という話を聞いて驚きました。とはいえ、まだまだ実感がわかないので、まずは発信していきたいと思います。
WWD:実際、こういったモデルでは最低ロット数や最低価格といった制限はある?
中山社長:アイテムごとに工場が異なったりもするのですが、基本はミニマムとして一反くらい消化をしないと。価格に関しては、商品の良さを適切に伝えるためにも、高原価率を目指しました。もちろんEC専売でコストが低いということもあり、原価率は40〜50%くらいに設定できました。
WWD:まだ第1弾の受注が始まったばかりだが、今後の展望は見えた?
吉田:展示会はやりたいですね。コンセプトを伝えられる空間を作って実際に洋服を見てもらいたいです。私自身、半年先に商品が届くような受注会だと、保守的についシンプルなものばかり頼んじゃうんです。EC専売ですぐに商品が届くサイクルなので、できるだけトレンドっぽいものを届けていけるのかなと思いました。
中田:私も展示会はやってみたいです。受注してから1カ月で届くので、これからも変わらず勢いを生かして洋服を考えたいです。
吉田;あと、秋冬ならニットをやりたいです!
中田:私は刺しゅうのアイテムをやりたい。夏ならフェスシーズンということもあり、水着やキャップなどのフェスアイテムもいいですね!