池上里恵/ビューティコンサルティング凛・社長
小池百合子・東京都知事やテリーザ・メイ英首相、ヒラリー・クリントン米大統領選民主党候補ら女性リーダーが活躍した2016年、イメージ戦略としてのファッションに注目が集まった。日本でも女性管理職の比率も伸びる中、今後ますます女性リーダーが増えることが予想されるが、彼女たちはどのようなファッションで現場に立つべきなのか。働く女性に向けたファッション・ビューティーのコンサルティングで2300人以上を担当してきた池上里恵=ビューティコンサルティング凛・社長に聞いた。
WWDジャパン(以下WWD):どのようなサービスを提供している?
池上里恵・社長(以下、池上社長):主にキャリアに有効なイメージチェンジを求めて訪れる女性に対して、顔立ちや骨格、パーソナルカラー診断の結果から導き出した最適なスタイリングやヘアメイクを提案しています。少人数制の参加型授業をはじめ、一対一でヘアメイクからワードローブの組み立て方、身に着ける色で印象を変えるカラー戦略まで、顧客が自分一人で実行できるようなレッスンを行いつつ、ショッピングへの同行や電話でのアドバイスも含む40時間の総合コンサルサービスも実施しています。
WWD:顧客層は?彼女たちがアドバイスを求めるきっかけは?
池上社長:35~50代女性が中心で、起業家や経営者、管理職に就いている方も多いですね。職種やコンサルサービスを受けるきっかけはさまざまですが、自身が身に着けるものや職場でのふるまい方を改める必要性を感じるきっかけには、昇進や産休・育休後の復職が多いようです。また、「責任のある仕事や部下も増えた今、どのようなファッションが上司としてふさわしいか」「大勢の前で発表しなければないが、何を着たら良いのか」など、リーダーならではの悩みを相談される方もいます。
WWD:この仕事に就いたきっかけは?
池上社長:もともとは銀行員でした。結婚式で初めてプロのヘアメイクサービスを受けたときに、「ちょっとしたコツでこんなにも印象が変わるものなのか」と驚いたことがきっかけで、27歳の時にヘアメイクの世界に飛び込みました。小さい時から長年の外見コンプレックスがあったので、やはりこれしかない!!という感じでしたね(笑)。まずはブライダルヘアメイクとして500組以上を担当する中で、メイクの映え方が人によって違うことに興味が生まれ、一人一人に合ったスタイルをパーソナルカラーや骨格診断から論理的に導き出すメソッドを勉強しました。その後も美容師免許を取るなど、仕事をしながら技術の幅を広げていきました。
READ MORE 1 / 1 外見で損をしているケースも
通い続けた顧客の例。トータルにイメージアップを監修するサービスの他、少人数制の参加型授業や法人向けサービスも実施している
WWD:多くの女性を見てきた中で感じることは?
池上社長:驚くほどすばらしい経歴を持ち、キャリアを磨いてきた方でも、身に着けるもの一つで第一印象を落としているなど、外見で損をしているケースは珍しくありません。また、ファッションに関心のある方でも仕事の現場での服の選び方を間違っていることが多い。ファッション性や着心地、アフター5にも対応しているかといった点を優先しがちですが、プライベートの延長上で考えていると中途半端な服装になってしまう。同じ現場でスーツを着て働いている男性たちに違和感を抱かれても仕方ないですね。
WWD:仕事服を選ぶ上で最も重要なことは?
池上社長:相手の信頼を得られる服装であること。「私に仕事を任せて間違いない」と視覚で訴えかけるのがビジネスファッションであり、まずは違和感を抱かせない格好であるべき。キャリアアップを目指すなら、自分自身がどう見られているか正しく認識する必要があると思います。
WWD:では、働く女性が着るべきアイテムとは?
池上社長:ジャケットとスカートを勧めています。動きやすいという理由でパンツがふさわしい職種もあるが、よりフォーマルで威厳を与えるのはスカート。顧客を招いた座談会でも「働く女性のスーツはパンツかスカートか」というテーマが議題に上がりました。その中で「コピーを取ってほしいと部下に頼むなら、パンツをはいている人に声をかける。スカートをはいている人には申し訳ない気がする」との意見もありました。
WWD:アドバイスをする際に意識していることは?
池上社長:一番大事にしているのは、顧客のなりたい姿を叶えること。職種や肩書き、キャリアを把握した上で、本人が1〜2年後に目指す役職にふさわしいスタイルを提案しています。見た目が変われば周りに集まってくる人も仕事の質も変わる。ファッションは、数年後の人脈や肩書までを左右する力を持っています。結局は、「自分を何者に見せたいか」というところに尽きると思っています。
【関連記事】
■メイクは“陰影”が好印象を与えるカギ
■全額会社負担のベビーシッター制度を女性社員の提案で実現
■1着15万円!31歳女性社長が明かす小規模ブランドの黒字化術
■「女性が働きやすい企業」1位にスタートトゥディ
■「アガット」に学ぶママ社員の経験とアイデアの生かし方