松井智則PR01.(ピーアールワン)代表がアッシュ・ペー・フランスからPR01.事業部をMBO(マネジメント・バイ・アウト、経営陣による買収)をすることが決まった。受け皿として12月19日に新会社ワンオーを設立。3月1日から事業を開始する。新経営陣は、松井智則・社長以下、タイのプレスルームに赴任中の岩城大典・取締役、PR01.の副本部長で経営や事業開発の要である岡安一剛・取締役、ファッションショーの映像を配信する「東京ファッションフィルム」を立ち上げからになってきた古瀬伸一郎・取締役に加え、社外取締役に「ルームス」プロデューサーを務める佐藤美加アッシュ・ぺー・フランス取締役、「東京ガールズコレクション」のチーフプロデューサーやよしもとクリエイティブ・エージェンシーで執行役員などを務めてきた永谷亜矢子アン代表を起用。執行役員には三上剛史プロダクト担当、長井美樹PR担当が就いた。事業開始時点での従業員数は45人となる。なお、近日中に第三者からの出資を受けて資本を増強する予定だ。
PR01.はアッシュ・ペー・フランスの一事業部として、ヒラオプレスの機能を引き継ぐ形で2006年に発足。アタッシェドプレスからスタートし、事業領域を急拡大。イベントの企画・制作、媒体制作、ECなど機能が拡張し、クライアントもファッション系から自治体、異業種、外資系企業など多様化している。その中で、小売り・卸売業を中心に手掛けるアッシュ・ペー・フランスとは異なる基準での「柔軟かつスピーディーな事業決済」が必要になったことと、外部人材とのさらなる連携の必要性などから今回の決断に至った。
松井新社長は「PR01.はアタッシェドプレスから始まり、PRだけでは収まり切らなくなった。昨年も1年の半分以上海外を訪問していたが、まだ出合ったことがないものがたくさんある。出合うことがなかったモノや人をつなげ、そこで生まれるエネルギーから新しいビジネスモデルをプロデュースし、新しい形のエンゲージメントカンパニーを目指したい」と抱負を述べた。
MBOにより、譲受対象になるのは、PR・コンサルティング業務全般と、イベントや映像の企画・制作業務、アッシュ・ペー・フランスで行ってきたゾゾタウンのECストアの運営、原宿キャットストリートにある「カンナビス」の店舗と、同店や「オールセインツ」などが入るGBビル、卸売り事業(PR01.ショールーム)、自社主催の「シブヤファッションフェスティバル」「PR01.トレードショー」「トウキョウファッションフィルム」となる。アッシュ・ぺー・フランスは小売り・卸事業、自社EC「H.P.F,MALL」、アート・インテリア事業、「ルームス」で知られる展示会事業、「ルームサービス」を中心としたメディア事業となる。両社は引き続き双方の機能を最大限活用し、業務委託という形で連携を図るという。
READ MORE 1 / 2 新会社の目玉は?
新会社の目玉の一つが、大坪洋介氏を起用した、OH!(オー)ショールーム の新設だ。ロサンゼルス在住で、「リーバイス ヴィンテージ クロージング」や「リーバイス メード&クラフテッド」などの開発を手掛け、多くのプレミアムデニムを日本に紹介したり、ブランドとの独占販売契約やブランディングなどを行ってきた人物だ。「人生の半分を海外で過ごし、11年前に松井さんとの出会いがあった。仕事人生の最終章として尽力したい。ワンオーの一番の魅力は、PR専門部隊がいること。そこに私が皆と一緒になり、ヨーロッパとアメリカのウィメンズ・メンズブランドの独占販売権を取り、日本・アジアで卸販売していきたい」と語る。すでに2017-18年秋冬ものから6ブランドの取り扱いが決定。ロサンゼルス発の「アトリエ&リペアーズ(ATELIER & REPAIRS)」「ベルベット(VELVET)」「ラ カウサ(LA CAUSA)」「インダストリー・オブ・オール・ネイションズ(INDUSTRY OF ALL NATIONS)」、オランダ・アムステルダム発の「バナナタイム(BANANATIME)」などだ。「『アトリエ&リペアーズ』は世界中の在庫の商品をアップサイクルして世の中に出そうというブランド。アジア全体の独占輸入販売権を取っている。プレスルームだけでなく、日本にある機能、PR、展示会、店など、表現するいいケースになると思う」と続ける。
READ MORE 2 / 2 マスPRとデジタルPRを行うマーケティング部門設立
もう一つが、マーケティング部門の立ち上げだ。「これまで報道やキャスティングは外部パートナーとの提携が多かった。自社開発の責任者が永谷社外取締役になる。マスPRとデジタルPRを行い、地方自治体や大手企業など、戦略から入れるケースを増やしたい」と松井新社長。永谷社外取締役は「PR01.とアッシュ・ペー・フランスとは10年前から付き合いがあり、台湾のプロジェクトやシブフェスの立ち上げなどで、広告、マーケティング領域や商品化などをお手伝いさせていただいた。私自身、イベント制作からいろいろな領域でPRの仕事をしてきた中で、本質的に良いものでないとPRできないと実感した。PR01.は単なるバイイングや瞬間的なPRではなく、プロダクトアウト型ででき、幅広いマーケティング領域ができると個人的に思ってきた。うめだ再開発のプロジェクトなど、かなり領域が広がり、深いマーケティングが必要になってくる部分をお手伝いできたら」と役割を語る。
三つ目がインキュベーション機能だ。「ルームスやトレードショーを通じて、ファッションや新しいクリエイションを立ち上げる人や企業がここ10年で少なくなっていると感じる。夢を持った若者が減っている。インキュベーション機能を使い、投資も始めたい」と松井新社長。現在の年商は約15億円だが、「3年で50億円、10年で1000億円を目指していく」と意気込む。 エシカルやアート部門への投資も行っていく。