先日セミファイナリストを選出したLVMH ヤング ファッション デザイナープライズ(LVMHプライズ)のパリのイベントに、1人のデザイナーがビザの関係で出席できなかった。ファッション業界を長らく支えてきた、国境をまたいだ人材の行き来に、政治的な力が影を落としている。
LVMHグループ本社で開催された21組のセミファイナリストによるプレゼンテーションには、米国、日本、韓国、ニュージーランド、英国、ドイツ、台湾、デンマークといった国々からデザイナーが集まった。だがニューヨークを拠点とする「ジャンコイ(JAHN KOY)」のデザイナーでロシア人のマリア・カザコヴァはビザの関係で出席できず、スカイプでの参加となった。「ビザの切り替えを申請中で間に合わなかったの。パリから再申請するとすごく時間がかかって戻れなくなっちゃうから、今回は行かない方がいいと言われたの」とマリア。同じくニューヨークを拠点とする「コウザブロウ」の赤坂公三郎もイベントに間に合うよう申請するのが大変だったという。だが、赤坂は「みんなの気持ちが少しずつ変わり始めているのでは」と言い、政権交代が理由ではないと思うと話した。
LVMHプライズの審査員で「ケンゾー(KENZO)」の共同クリエイティブ・ディレクターのキャロル・リム(Carol Lim)は、トランプ政権が輸入品の関税を上げることになれば、デザイナーにも影響を及ぼすだろうと話す。「今米国で起こっていることが変化のきっかけだとすれば、今後はみんなが内向的になって国境を超えた交流も減っていくかもしれない」と話す。「『オープニング セレモニー』での経験を考えてもそう思う。米国で生産しているものも多かったしそれを誇りに思っていたけれど、海外生産も多かったから。海外の工場にもしょっちゅう足を運んでいたから、それができなくなったら影響は大きいわ。怖いわけではないけれど、人々の働き方に大きな影響を与えるでしょう」。
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