パリで開催中の若手を集めたショールーム「デザイナーズ アパートメント」で、ひと際目を引いたブランドがあります。パリをベースに活動する松重健太さん(29歳)によるブランド「ケンタ マツシゲ(KENTA MATSUSHIGE)」です。2015-16年秋冬にデビューし、今回が4シーズン目。主張するデザインではないけれど、ユニークなディテールを加えることで強さが宿るコレクションを見せていました。
「フランスで学んだ立体裁断を生かしながら、着物の落ち感をインスピレーション源にデザインしている」と松重さん。袖を通すと、重心が少し後ろにあったり、布の落ち感が面白いデザインだったりと、着物を着た時のたるみと緊張感を感じることができます。今シーズンはアイテムのバリエーションが増え、初のニットウエアも並びました。リブがランダムに配されたニットは、ポコポコとした質感が特徴です。
卸価格は、ヨーロッパ生産のウールのボンディングコートが440〜550ユーロ(約5万1920〜6万4900円)、日本生産のトレンチコートが355ユーロ(約4万1890円)、日本生産のジャンパーが280ユーロ(約3万3040円)、日本生産のジャージー×ウールのドレスが285ユーロ(約3万3630円)、日本生産のキモノスリーブのドレス180ユーロ(約2万2140円)、ヨーロッパ生産のシャツが95ユーロ(約1万1210円)、中国製のニット85〜100ユーロ(約1万30〜1万1800円)など。生産拠点はさまざまだそうです。「どこどこ製にこだわるのではなく、アイテムにふさわしい場所で生産できたら」と松重さん。
「建築もインスピレーション源の一つ。例えば、直島の安藤忠雄による建築は、地形を生かし、自然を引き立たせている。そういった控えめで穏やかでも強さのあるモノ作りに惹かれる。そんな服を提案したい」そうです。この話を聞いて合点がいきました。
ファストファッションが溢れ、飽きられないように“SEE NOW, BUY NOW”の手法が登場した中で、今シーズンのパリコレを取材していて改めて感じたのは、半年前のものが古く感じる洋服ももちろんあっていいけど、着る人の個性を引き立たせてくれるしなやかさのあるモノは強いなと強く感じたからです。きっかけは「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」のショーでした。そして、もう一つのキーワードはドラマチック。こちらについては近々紹介しようと思います。
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