ファッション

2017年LVMHプライズ審査会が開催 関係者が語るプライズの意義

 LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)は3月2日、新人デザイナーを支援するコンテスト、LVMHプライズのセミファイナリストの審査会とカクテルパーティーを行った。今年は21組のセミファイナリストが選ばれ、日本からは「サルバム(SULVAM)」の藤田哲平、「アンブッシュ(AMBUSH)」のVERBALとYOON、「コザブロウ(KOZABURO)」の赤坂コザブロウが参加。グランプリを獲得したデザイナーは30万ユーロ(約3570万円)とLVMHのエキスパートからコーチングを1年間受ける。

藤田哲平「サルバム」デザイナーは「完全に自負しているのは、とにかくちゃんとしたもの、売れるものを作っていること。そして地に足をつけて真面目にビジネスを考えていること。そこを純粋に判断してもらえたのだと思う」と自信を見せた。「でも、セミファイナリストに選ばれただけでは全く意味がない。21組の中に選ばれて喜ぶ人もいるけど、ここにはまだクリエイションを重視してビジネス面を見ていないデザイナーもいる。その中からクリエイションとビジネスの両方のバランスが取れている人が残る。だからその中に入らないと、何の評価にもならない」とコメント。YOONは「ジュエリーブランドとしてスタートし、服も始めたばかりのまだ若いブランドだけど、他の人のクリエションを見るのも、審査員からアドバイスをもらうのも、いろんな意味で勉強になった」と話した。

また、21組から10組のファイナリストを選ぶ審査員はエマニュエル・アルト(Emmanuel Alt)仏「ヴォーグ(VOGUE)」編集長やサラ・アンデルマン(Sara Andelman)=コレット(COLETTE)クリエイティブ・ディレクター、フォトグラファーのパトリック・デマルシェリェ(Patrick Demarchelier)、ピーター・フィリップス(Peter Phillips)「ディオール(DIOR)」メイクアップ クリエイティブ&イメージ・ディレクター、モデルのケンダル・ジェンナー(Kendall Jenner)ら、日本からは栗野宏文ユナイテッドアローズ上級顧問クリエイティブディレクション担当と元サッカー選手の中田英寿が務める。その他アナ・ウィンター(Anna Wintour)米「ヴォーグ」編集長やファイナリストの審査員を務めるジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)「ロエベ(LOEWE)」クリエイティブ・ディレクター兼「J.W. アンダーソン(J.W. ANDERSON)」デザイナーなど、世界中の業界人がセミファイナリストの作品を見に集まった。

ピーター・フィリップス=ディレクターは「LVMHプライズのユニークなところは、必ずしもみんな学生や新人であるわけではないこと。ある程度経験を積んだ人もいるから、ビジネスのことも考えられている人もいる。また、あらゆるバックグラウンドの審査員が審査し、アドバイスをするのも強み」とコメント。ジョナサン・アンダーソン=デザイナーは「毎年毎年ユニークなラインアップで、いつも新鮮に感じる。今回もいろんなテイストのデザイナーが残っていて、ダイバーシティーに富んでいると思う」と話した。ウンベルト・レオン(Humberto Leon)「ケンゾー(KENZO)」共同クリエイティブ・ディレクターも「どのデザイナーも全く別の世界観を発信していて、似ている人がいない。デザイナーだけでなく、いろんな職業の審査員がいるのは面白いと思う。また、LVMHプライズはグランプリを取ったらもちろんだけれども、ファイナリスト、セミファイナリストに残るだけで一気に注目してもらえるのが素晴らしいところ」と彼も今年のデザイナーの多様性を評価した。ショールームを経営し、多くの若手デザイナーを発掘してきたリカルド・グラッシ(Riccardo Grassi)は「若いデザイナーだけでなく、次のステップに進んでいる人、先を見据えている人が集まっているプライズだ。今年のデザイナーを見て、やっぱり若い人は今ストリートからインスピレーションを受け、そこからファッションを築いていくことを改めて感じた。20年前のデザイナーはトップダウンに、ランウエイが全てだったけど、今はSNSの普及もあり、ストリートというリアルな世界からファッションを作っているのが面白い」と語った。ファッションジャーナリストでスタイルアイコンとしても知られるマスイユウは「LVMHプライズはネームバリューがあるため、世界中からいろんな人が応募してくる。賞金だけでなく、メンターシップが充実しているところが強み。何回でも応募できるから、いつもセミファイナリストには過去にも応募した人が残っていることが多いが、今回は1人を除いてみんなフレッシュフェイスなのが面白い。また、作品を見て思ったのは、今の新しいデザイナーはオーガニック素材を使用したり、素材調達や工場も環境を配慮するなど、ちゃんとサステイナビリティーを意識していること。今後もそういったサステイナビリティーを掲げる人が増えてくるのではないかと思う」と話した。

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