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三越伊勢丹の杉江次期社長「社内の対話」重視

 三越伊勢丹ホールディングスの次期社長に4月1日付で就任する杉江俊彦・取締役専務執行役員(56)は、13日に都内で会見した。退任する大西洋・社長(61)が進めてきた一連の改革を踏襲しつつ、社内の対話を重視して、組織を立て直す考えを述べた。「これまでの経営計画自体は間違っていないが、実行に移す際、現場(の社員)との対話が十分だったとは言えず、理解が得られない部分があった」と反省。子会社や中間管理職とのコミュニケーションを密にしながら、構造改革と成長戦略の両輪を回す。

 小売業界に衝撃が走った大西社長の電撃的な退任発表から1週間。後継に指名された杉江次期社長が初めて公の場に登場した。

 杉江次期社長は経営戦略本部長として5年に渡って大西社長を支えてきた。同社が進める中期経営計画の立案者だった。

 杉江次期社長は「大西社長と私で意見が異なったのは、構造改革と成長戦略のどちらを優先させるかだった。大西社長は成長戦略を優先させたが、私は構造改革を進めてから成長戦略を本格化させたい」と話した。構造改革の具体的な中身は5月をメドに発表する。地方店の業態転換や売り場縮小も視野に入れる。

 昨年11月の中間決算の会見の際、大西社長が松山三越など地方4店舗について業績の好転が見込めない場合、売り場の縮小に取り組むことも検討すると発言。閉店連鎖につながるのではないかと関係者に動揺を与えたことが現場に混乱をもたらしたといわれている。それを踏まえたうえで、杉江次期社長は「店ごとにリモデル、テナント導入、業態転換など色々なレベルの判断を下す。ただ、不採算店は現時点で(3月20日に閉店予定の)三越千葉店と三越多摩センター店のみ。もちろん地方は人口が減るし、ネット通販への移行もある。常に手を打っていく必要がある」と説明した。

 「百貨店の事業モデルは昭和に作られた素晴らしい財産。だが時代の変化に対応できていない」と話し、百貨店事業に依存した収益体制を改めるため、引き続き多角化を進める。特に全国の店舗およびその周辺に保有する優良不動産の活用を念頭に、三越伊勢丹に4月1日付で不動産事業本部を設立し、商業施設などの運営にも本腰を入れる。

 多角化や新規事業、地方店の構造改革に対する誤解が現場の従業員の不満につながったことを踏まえ、杉江次期社長は「対話」を強調する。「大西社長は対外的にパワフルに発信してきたが、社内での対話が不足していた」「大西社長は現場の若手の意見を吸い上げてきたが、私は(十分ではなかった)中間のマネジメント層やあるいは役員間との対話を重視したい」「風通しをできるだけ良くし、働きやすく活気のある会社にする」。今回の退任劇による社内ダメージを回復させ、構造改革と成長戦略を推進するため「社員との対話」で求心力を高めたい考えだ。

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