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連載 パリ・コレクション

妄想を掻き立てる「コム デ ギャルソン」 秋冬の曲線に何を見る?

 2017-18年秋冬パリ・コレクションを振り返り、最初に思い出すのは、ショーではなくギャルソン展の記者会見です。この会見は記者たちにちょっとした緊張感をもたらすものでした。

 そもそも、スケジュールが詰まったパリコレ中に記者会見が開かれること自体が異例。また、主催はコスチューム・インスティチュートとは言え、取材をあまり受けない「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」が話題の中心で、さらには川久保玲デザイナーが登壇するかもと聞けば、記者は色めき立ちます。疲労が蓄積されたパリコレ中盤の朝9時から、という日程にも関わらずヴァンドーム広場一角の会見場には世界中からメディアが集まりました。

 展覧会の正式名称は、「Rei Kawakubo/Comme des Garcons Art of the In-Between (川久保玲/コム デ ギャルソン 間の技)」。5月4日〜9月4日にニューヨークのメトロポリタン美術館で開催されます。

 “間”は“ハザマ”と読みます。“ハザマのワザ”が何を意味するのか?については、会見に登壇したキュレーターのアンドリュー・ボルトン(Andrew Bolton)氏が分かりやすく解説しているので、こちらをぜひお読みください。

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 「彼女は、最近はファッションとアートの、そしてファッションとビジネスの"間"の空間をさらに深く探求するようになった」の後に続く言葉は、多くの人の心に響くのではないでしょうか?

 右でもなく左でもない“ハザマ”。必ずしも目には見えないが、ゆらぎの中に確かに存在する。「コム デ ギャルソン」を通じて知る価値観が、今の時代は一層求められていると思います。

 フォトセッションに登場した川久保さんは、一言も発することなく会場を後にしました。そこで出口まで追いかけて「なぜこのタイミングで開催を決めたのでしょうか?」と質問をすると、ほんの少し考えた後に一言「皆さんがやってくださるから」とありました。ごく短い一言でしたが、質問に対する答えとしては、その通りなのだと思います。ファッションデザイナーである川久保さんはウィメンズのコレクションだけでも年2回、止まることなく継続して服を作り発表を続けている。展覧会は、川久保さんが自ら組織するものではなく、「コム デ ギャルソン」に触発されたキュレーターが中心となって編集するものです。雑誌の編集者がショーのメッセージを咀嚼し、自分たちの考えを重ねてファッション撮影を行うのと同じですね。

 「コム デ ギャルソン」のショーは見る者の想像・妄想を掻き立てます。モデルが着て歩いているという意味では“服”ですが、皆さんご存知の通りフツウの“服”ではありません。分かるか分からないか、と聞かれれば、正直、正解など分かりません。正解があるのかどうかも分かりません。ただ、目の前の“服”が色々な感情を触発し、妄想を促すのは確かです。ルックはコチラからご確認ください。

 キーワードは毎シーズン発表されます。今回は“The Future of Silhouette(シルエットの未来)”。不織布や資材で作られた曲線が、“服”と体の“間”を生み出しています。この曲線のシルエットを見て、様々な人が様々に解釈してメディアやSNSで書いていますが、私は見た瞬間に思い出したものがあります。実は……埴輪です。

 昨年の夏に北海道旅行をした際に函館の博物館で見た縄文後期の中空土偶を思い出しました。ギャルソンと土偶を結びつけるなんて、“わかってない”と言われてしまうかもしれませんが、思い出してしまったものは仕方なし。こちらです。 

 珍しく、ショー会場が淡いピンク色で覆われていたこともあり、私には白い曲線の“それ”が最初、母性の象徴に見えて土偶を想起しました。ここで言う母性は、広義での母性です。1万5000年以上の時を経て、発掘されたこの中空土偶(国宝)の説明にはこう書いてありました。「土偶は実用的な道具ではないことから、縄文時代の人々の精神性を象徴する“第2の道具”と言われている。ほとんどの土偶は女性を現しているが、後期には性的特徴がなくなり、性を超越した精霊のような表現となっている」と。皆様、どうでしょうか。上の写真のルックが精霊に見えてきませんか?え?そうは見えない?妄想は自由ということでご容赦ください。

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