ユニクロは(UNIQLO)3月16日、有明の新オフィスお披露目会とともに企業としてのあり方をも変える一大事業「有明プロジェクト」についての発表をした。「デジタルを最大限活用して産業革命を起こす。SPA企業から情報製造小売業へと進化をする」と柳井正・会長兼社長が強調するように、デジタル技術を使って世界中のあらゆる情報をリアルタイムにつなげ、顧客が今欲しいと感じるものを最短ルートで企画・生産・販売する最先端の事業構造を目指すという。シーズンごとの商材を数カ月前に企画するのではなく、オンシーズンの商材を週単位で企画・生産するためには、デジタル技術による業務効率化が欠かせない。
特に重要となるのは顧客接点だ。「 “MADE FOR ALL”から“MADE FOR YOU”へ」と同社が掲げた通り、顧客一人一人のニーズや動向を集積して企画に生かす分析力が問われる。同社ではすでにセミオーダーシャツ・ジャケット発売などのパーソナル施策を取り入れており、シャツのサイズ感だけでなく襟の形やそで丈、素材などをカスタマイズして自分だけのシャツ・ジャケットを簡単に制作・購入することができる。今回のタイミングで店頭ポイントアプリとECサイトの会員データ統合を進め、オンライン上でもパーソナルなサービス提供ができる環境作りを目指す。
同会見で発表されたECサイトのリニューアルが大改革の大きな一歩だろう。クリエイティブ・ディレクターを務めるレイ・イナモトInamoto代表は、「現在世界人口の半数にあたる36億人がモバイルを持っている。つまり、世界の半数の人が24時間つながっているということ。数年以内にこの数値は100%に近づくだろう。デジタルを使ってよりパーソナルなサービスを提供しなければならない。テクノロジーは世界を便利にするだけでなく、人の心を動かすことができるはずだ」とサイト設計にあたっての自身の考えを示す。
リニューアルの要点はシンプルだ。「大きくデザインを変えることはない。“サクサク見てサクサク買える”ことを念頭に、操作性の向上に主眼を置いた」という通り、例えば女性でも親指だけで検索しやすいようにナビゲーションを最下部に配置したり、ルックを見てそのまま買いたいという顧客の声に応えるべく、ルックのまとめ買いサービスも開始したりと、細かい施策がメーンだ。もちろん「いつでも、どこでも買うことができる」ことを念頭に、リアルをからめたオムニチャネル施策も強化する。ECで購入した商品をコンビニで受け取るサービスをすでに提供しているが、受け取り先はセブンイレブンやローソンなど国内4万3000店舗。ユニクロ830店舗と合わせれば、自宅から750メートル以内にユニクロとの接点となるリアル店舗が存在する計算だという。
今後はアメリカで実証実験を重ねているAIチャット機能「ユニクロIQ」を日本にも取り入れる計画で、商品の検索や在庫状況などをチャット形式でリアルタイムに確認できるようになる。記者会見に登場して新サイトを体験した佐々木希も「欲しい商品をチャット上で相談するだけでアイテムの提案や在庫の紹介をしてくれるのはとても便利。日本に導入されればファンは絶対に使うはず」と初めて体験するチャット機能に、胸を弾ませた。