Photo by MARI YOSHIOKA
昨年、伊勢丹新宿本店メンズ館史上最安値だった250円のキーホルダーをメーンに、多くの反響を呼んだ「木梨サイクル」が、今年も同館1階プロモーションスペースで期間限定ストアを開く。期間は3月29日から4月11日。今回は、「ポーター(PORTER) 」や「ズッカ(ZUCCA) 」「フィラ(FILA) 」「チャリ&コー(CHARI & CO)」「アウディ(AUDI) 」などのアパレルブランドやメーカーに加え、所ジョージやサッカー日本代表の今野泰幸選手、スタイリストの大久保篤志、ハワイの行きつけのローカル店など、木梨と深く関わりのある15の人や企業とタッグを組み、帽子のみを販売する。
楽しければやるという木梨流のスタイルで、売り場には昭和を感じさせるレトロな自動販売機を設置。ユニークな販売方法で来店客に面白く、楽しく感じられるコトやモノを提案する。ファッション業界の固定観念にとらわれない“クリエーター”木梨憲武の頭の中をひも解く。
WWDジャパン(以下、WWD):今回、帽子だけにこだわったのはなぜですか?
木梨憲武(以下、木梨):デザインもアートもそうだけど、仕上がってしまうと何も手を出せなくなるので、3割ぐらい余白を残しておかないと息苦しくなっちゃう。だから絵もテーマが決まるまでは下地ばっかり描いています。出来上がっても翌日見ると「やっぱ違うなぁ」とか思って、また塗り直したり…。恋愛とかゴルフもそうでしょ?できたって思ったら次の日全然ダメだったりする。洋服も全部並べると余白が無くなっちゃうので、余白のまま出来上がりの方がいいんじゃないかなと思って帽子だけにしました。あとはやっぱり友だち(栗原亮・栗原社長)が帽子屋なのもありますけど(笑)。
READ MORE 1 / 2 コラボ相手の選び方
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WWD:コラボ相手はどのように選んだのですか?
木梨:「木梨サイクル」のある祖師ヶ谷大蔵と所さんの「世田谷ベース」のある成城学園が隣同士っていうのもあるけど、「世田谷ベース」にはしょっちゅうお茶を飲みに行っていて、所さんに「帽子を作りたい」って話すと「いいよ別に」って感じで、その場で決まりました。元々、帽子は作ってなかったみたいなんですが、たくさんあるロゴの中でも一番メーンのものを使わせてくれて。コンちゃん(今野泰幸選手)も快諾してくれて、チームからもすぐにGOが出た。もう最近は、「Pele」とか「ガンバコンノ」ってサインしか書いてないです(笑)。
WWD:ハワイのお店とのコラボも目立ちます。
木梨:そうですね。スニーカーショップの「キックス(KICKS/HI)」も面白がってくれました。オーナーは「漢字とかカタカナの方がいいんじゃない?」とも言っていたんですが、最終的には日本でしか売らないなら定番のロゴの方が人気が出るかも、みたいな。ベトナム料理の「バクナム(BAC NAM)」とオックステールスープが有名な「朝日グリル」も必ず行くお店。ハワイを紹介する番組を通して仲良くなったんですが、めちゃくちゃ美味いんですよ。若い頃は今みたいにハワイに行く機会は少なかったけど、もう20年ぐらい通っていますね。ちゃんと契約書があるので、細かい話をしに行ったら意味が分からないってなっちゃった(笑)。契約書なんていらない、もっとフランクな仲だろって。みんな人の繋がりばかりです。
WWD:デザインはどうやって決めたのですか?
木梨:基本的には全部向こうに任せています。それぞれの企業やブランドのロゴなので、やっぱりどれも力がありますね。ロゴを大きくする人もいれば小さくする人もいる。そのロゴが着る人にとってファッション的にいいのか、邪魔になるのか。ツバにあるシールを貼ったままでも、剥がして被ってもいい。コーディネートするのは皆さんそれぞれの自由なので、楽しみながら選んでほしいです。
WWD:木梨さんのお父さん、作三さんのデザインもありますね。
木梨:そう。オヤジの帽子の許可取りが一番時間かかりました。俺の名前を何だと思ってるんだ、本名で遊ぶなって(笑)。
READ MORE 2 / 2 自動販売機!?ユニークな売り方とは
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WWD:売り方もユニークと聞きました。自動販売機で売るとか?
木梨:昔は町中に色んなものを売ってる自販機があったんだけど、そんな昭和をイメージしたレトロな自販機が6台並んでいます。コンビニとか酒屋の冷蔵庫みたいに、裏からスタッフが帽子を補充するんですよ。中が見えないようにのれんも掛かっているんだけど、それもマジックミラーぐらい何も見えないイメージ。まぁ最終的には作り手もお客さんもスタッフもみんな楽しんで面白がってくれれば、絶対いい方向に行く。それはアートも芸能の仕事も何のジャンルも一緒なんですけど。
WWD:アートの巡回展「木梨憲武展」も昨年ラストを迎えましたが、次の展開は?
木梨:来年からまた個展もスタートするので、今は作品の作り込み作業をしています。ロンドンでスタートして、その後は日本で、最後はニューヨーク。
WWD:絵画は色の印象が、昨年と変わりました。
木梨:そうかな。きっと洋服もそうだけど、今年はこの色とか、この季節はこの色ってあるように自分の中でも変化があるんだと思います。
WWD:ファッションやアート以外に今興味のあることはなんですか?
木梨:今、来年公開の「いぬやしき」(原作、奥浩哉)っていう映画の撮影中なんですけど、全然リズムの違う仕事なので新鮮ですね。58歳のおじいちゃんの役なんですけど、特殊メイクもしながらすごいCG技術で、ロボットの俺が空飛んだりしながら悪と戦ってます。だから今は“男優”としての動きにハマってる。男優は待つのも仕事なんで、その待ち時間に、次は何やろうかなってニヤニヤしながら紙に書いたり。例えば、今度は帽子だけで100企業とコラボするのはどうだろうとか、もうオヤジの名前を襲名しちゃおうかなとか…。木梨作三二代目J Soul Brothersみたいにね(笑)。