3月23日に開幕したバーゼル・ワールド2017では、機構の一部を簡素化したりムーブメントをクオーツにしたりさえ試みて実現した「値ごろ感」、既存顧客以外の新しい層、特に若年層にリーチしようとの心意気が現れた鮮やかなカラーリングが2大トレンドだ。ファッションも手掛けるブランドは、笑みを誘うユーモアで時計の祭典をリード。また、OSの進化によりパーソナライズの可能性が格段に向上したスマートウオッチが、再び増加に転じたのも今年の特徴だ。
価値ある「値ごろ」モデルを発表したのは、「ゼニス(ZENITH)」や「ロンジン(LONGINES)」だ。「ゼニス」は、「ウブロ(HUBLOT)」の爆発的な成長と「タグ・ホイヤー(TAG HEUER)」のアフォーダブル・ラグジュアリーブランドへの刷新を手掛けたジャン・クロード・ビバー(Jean-Claude Biver)=LVMH時計部門プレジデントが活性化に本腰を入れる。「ゼニス」独自の自動巻きクロノグラフムーブメント「エル・プリメロ」で1/100秒の計測を可能にした“デファイ エル・プリメロ”は、かつて同様の機構を搭載した「タグ・ホイヤー」の時計が400万円前後だったのに比べ120万円前後で発売予定。針が、これまでの10倍速で文字盤上を回転する姿も面白い。「ロンジン」は磁場や衝撃に強く、毎日深夜には針を自動補正する機能を備えたクオーツ時計を3針なら13万円台で投入する。
色は、数年前から目立つようになったブルーに加え、グリーンとブラウンも台頭した。「カール F.ブヘラ(CARL F. BUCHERER)」は、白もしくは黒文字盤のクラシカルなイメージを打ち破るくらい鮮やかなブルーとグリーンの基幹モデル“マネロ”を発表。ストラップも同色のグラデーションで彩った。ファッションの世界で「ベルルッティ(BERLUTI)」や「サントーニ(SANTONI)」が得意とするムラ染め「パティーヌ」の技巧を用いたストラップが多いのは、今年のトレンドだ。
ファッションも手掛けるブランドでは、「シャネル(CHANEL)」が、創業者ココ・シャネルが愛らしく時を告げる“マドモアゼル J12”を発表。白と黒で各555本の時計は、争奪戦必至だ。またアレッサンドロ・ミケーレ体制への変革後、長く使えるわりに手頃としてエントリーアイテムとしても機能する「グッチ(GUCCI)」の“G-タイムレス”は、色とりどりの星がきらめくムーンフェイズ時計を発表した。
スマートウオッチは、フルスクリーンなら文字盤はもちろん、サブダイヤルをスケジュールや活動量などに変えられる機能を搭載。フォッシル(FOSSIL)が手掛ける「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」の時計は、インスタグラムにアップした写真を文字盤に埋め込む機能「ソーシャル」を備える。同ブランドのフルスクリーン・ウオッチは日本で現在、ローズゴールドとイエローゴールドを中心に在庫切れが続出している。5万円近い時計を1型2
色だけ総計1000本以上出荷しているが、需要に追い付いていない。これまで通りの見た目ながらスマートフォンとリンクする(伝統的な時計とスマートウオッチの)ハイブリッド時計市場には、「ミッシェル・エルブラン(MICHEL HERBELIN)」などが参入した。