左から、デザイナーのセイフ・バキールとエマ・ヘドルンド。2012年に「コモン スウェーデン」を起ち上げる。現在は夫婦としてブランドを運営している
ロンドンのメンズブランド「コモン スウェーデン(CMMN SWDN) 」のデザイナー、セイフ・バキール(SAIF BAKIR)とエマ・ヘドルンド(EMMA HEDLUND)が、4月3日まで行われている「エイチ ビューティ & ユース(H BEAUTY&YOUTH)」のポップアップのために初来日した。2人の出身地であるスウェーデンらしいクラシックな仕立ての優雅さと、ロンドンのサブカルチャーのインスピレーションのミックスがアイデンティティー。国内での取扱いを始めたばかりのブランドだが、現在セレクトショップを中心に、着実に販路を広げている。日本マーケットでの可能性をどう見ているか。
WWDジャパン(以下、WWD):初来日だが、日本のファッションについてどう思う?
セイフ・バキール(以下、セイフ):日本のファッションは、個性的でコンテンポラリーでとても力強いよ。保守的なヨーロッパ人にとってはセンセーショナルだと思う。90年代に端を発したカルチャーも興味深いね。
エマ・ヘドルンド(以下、エマ):そうね。個性的という言葉が本当に当てはまると思う。あと、日本についてはポジティブなことばかり聞いていたので、実際に伝統的な建築などを見て本当に感動しているの。昨日、ディナーに行ったお店の料理が素晴らしかったし、スタッフもとても親切で驚いたわ。
セイフ:タクシードライバーも優しく丁寧に街案内してくれるしね(笑)。みんなが本当に優しいんだ。
WWD:日本でも注目ブランドとなっているが、日本のマーケットについてはどう考えている?
エマ:日本人の顧客は個性を重要視するので、今シーズンのコレクションのデザインともマッチしている。色やマテリアルの使い方は日本人のファッションとも親和性があると感じるわ。
セイフ:マーケットにもね。僕たちのコレクションをよく理解してくれている印象だよ。
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WWD:2017−18年秋冬コレクションの卸先は?
セイフ: メーンは、今イベントをしている「エイチ ビューティ & ユース(H BEAUTY&YOUTH)」「エディフィス(EDIFICE)」「阪急メンズ東京」「ワレモコウ(吾亦紅)」などたくさんあるよ。
エマ:ありがたいことにセレクトショップを中心に増えてきている。
WWD:ブランドのスタートをスウェーデンのマルメにした理由は?
セイフ:マルメはもともと工業都市だったんだけど、最近は音楽もアートもグラフィックも入り交じるマルチカルチャーな都市に変化したんだ。イーストロンドンのようにね。だから拠点として選んだんだ。
エマ:今は拠点がロンドンだけど、未だにカラーやマテリアル、ストリートのムードをミックスする時は、マルメからの影響を受けている。
WWD:なぜ、ロンドンに拠点を移した?
セイフ:きっかけは、ロンドン・ファッションウィークに参加したことだね。とにかく常にインスピレーションに溢れているので、クリエイションを生み出すには最適の都市だと思っている。展示会をする時は、みんなロンドンに集まるんだよ。あとは、単純にメトロポリスという理由が大きいね(笑)。
エマ:ロンドンはより個性的で実験的。みんな新しいことを生み出そうと努力している。一方スウェーデンの文化はシンプルで洗練されている。このコントラストが刺激的で、2つの組み合わせが完璧なバランスを作り出すと思うわ。
WWD:若い世代のデザイナーが注目されている潮流についてどう思うか?
エマ:今は、ユースカルチャーを取り入れたブランドは人気だけれど、私たちは、モッズやロカビリー、ヒップなど1940年代や50年代、60年代のユースカルチャーをモダナイズしている。なので、90年代のストリート的な要素の逆で、もっとドレッシーなスタイルを提案することで新しいユースカルチャーを作っていきたい。
セイフ:時代もトレンドもループしている。昔はデザイナーがトレンドを作っていたけれど、今はトレンドの発信地が無数に存在する状態。だからこそ、今の流れとは違うことをすることが重要なんだと思う。それがドレッシーなスタイルの提案なんだ。
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2017年春夏コレクション
WWD:コンペティターはどのブランドか?
セイフ:スウェーデン発のブランドとなると「アクネ(ACNE)」とかなのかな。似たような価格帯の「マルニ(MARNI)」のようなブランドもね。ロンドンだと若いデザイナーの「ウェールズ ボナー(WALES BONNER)」「J.W.アンダーソン(J.W.ANDERSON)」あたり。ただ、どのブランドとも切磋琢磨しながら良いものを作りあげられような関係性でいたいという意味で、全てのブランドがコンペティターだとは思っていないよ。
エマ:インスタグラムで、ラグジュアリーブランドやビンテージのアイテムをミックスしたスタイリングのハッシュタグを見ると、よりそう思うわね。
セイフ:ただ、スウェーデンというバックグラウンドがあるので、当然それらのブランドと比べられることもあるよ。スウェーデンは、小さな国だけどファッションの感度は高く、イメージが良い点はメリットだね。
WWD:日本のショップは行ったか?
エマ:「エイチ ビューティー アンド ユース」には行ったわ。表参道というラグジュアリーブランドのショップに囲まれている環境の中で、若いデザイナーズブランドを取り扱っているのが面白かった。
セイフ:ピザスライスが併設しているのもとても良いね(笑)。デザイナーズもあればビンテージの古着やストリートブランドも扱っている、珍しいタイプのショップだと思うし、とても楽しめたよ。あと何といっても接客が丁寧で素晴らしい。
WWD:将来的にどんなブランドに育てていきたい?
セイフ:新しいブランドなのでまだ構築中だけど、大きくしていきたいとは思っている。2人ともデザインに関わっているので、お互いのインスピレーションを大切にしている。エマのバックグラウンドから自然に溢れてくるクリエイションがそう。その意味ではウィメンズウエアやバッグ、シューズ、アクセサリーもデザインしたいと思っているよ。
エマ:すでに女性の顧客もいるので、ウィメンズのウエアは発表したいわね。コレクションにどう組み込んでいくかは話し合っているところ。
WWD:今後のビジネスプランは?
エマ:旗艦店を出したいと考えているわ。小さくても良い。そして、出店するなら、おそらく東京が第一候補ね。東京の人のスタイルやショッピングをする環境のユニークさは海外と比べても際立っているから。
セイフ:海外ではできないビジネスプランも立てやすいかもしれないな。