「エッセンス(SSENSE)」は2003年にカナダのラミ・アタラ(Rami Atallah)が2人の兄弟とともに創業したラグジュアリーECサイト。04年にはモントリオールに実店舗を出店するなど、早くからEC主導のオムニチャネルに取り組んできた。同社は毎年2ケタ成長を続け、16年4月には日本語サイトをローンチ。今や140カ国以上で月間3200万ページビュー数を獲得するまでになった。特にミレニアル世代から絶大な信頼を得ている同サイト。今年、日本でのマーケティングを本格化するという。なぜECでラグジュアリーアイテムが若者に売れるのか。今後の日本での展望とともに、来日したディアナ・チャウ(Deanna Chow)=コミュニケーション・ディレクターに聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):改めて、創業の経緯とは?
ディアナ・チャウ=コミュニケーション・ディレクター(以下、チャウ):大学でコンピューターを学んでいたラミ・アタラがインターネットでのマーチャンダイズに興味を持ち、自身で仕入れた服を売り始めたことがきっかけです。翌年には実店舗を出店しましたが、さまざまなブランドと取引をできるように信頼を獲得する目的もありました。路面店も重要なタッチポイントになっており、今年中にモントリオールに現在の8倍の広さの新店舗を出店予定です。デザインはデイヴィッド・チッパーフィールドが手がけます。
WWD:取り扱いブランドの特徴は?
チャウ:昨年取り扱いをスタートした「グッチ(GUCCI)」のようなラグジュアリー・ブランドが多いことが特徴です。一方で勢いのある若手ブランドの紹介にも力を入れており、「オフ-ホワイト c /o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」や「ヴェトモン(VETEMENTS)」などはいち早く取り扱いを始めました。
WWD:特に売れ筋は?
チャウ:「トム ブラウン ニューヨーク(THOM BROWNE. NEWYORK)」「ミュウミュウ(MIUMIU)」「グッチ」が人気です。アップカミングなブランドでは「ヴェトモン」「ノア(NOAH)」「フィア オブ ゴッド(FEAR OF GOD)」などですね。
WWD:ミレニアル世代から絶大な信頼を得ていると聞くが?
チャウ:グローバルで顧客の80%がミレニアル世代です。「ニューラグジュアリー」というサイト・コンセプトのもと、“リアルで身近”に感じてもらえるサイト作りが奏功しているのではないでしょうか。デザイン性の強いショーピースやアイテムでも身近に感じてもらえるように、写真の撮り方を気にしたり、ブランドミックスのコーディネートを意識しています。ECサイトというよりも、雑誌のエディトリアルページに近いイメージです。
WWD:ミレニアル世代がなぜ、高価なアイテムをECで買えるのか。
チャウ:彼らはインターネットとともに育った世代なので、ECでものを買うことに対してなんの違和感もないのです。モントリオールで在庫を管理していますが、早ければ日本まで3日で届きますし、返品ポリシーもきちんと用意しているので、安心して買うことができるのだと思います。
WWD:エディトリアルが豊富なことも重要なきっかけ?
チャウ:「エッセンス」は服を売るだけでなく、ファッションや音楽、建築などの情報を発信していく企業です。ECサイトだからといってわれわれが販売するアイテムばかりを掲載するのではなく、クリエイターの紹介なども含めて、週5回エディトリアルを更新しています。エディトリアルについてはドイツのカルチャーマガジン「O32C」を率いるヨルク・コッホ(Joerg Koch)編集長がディレクションをしており、他のECサイトとは一線を画すコンテンツ力を持っていると自負しています。例えばデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)の5000文字を超えるロングインタビューなど、かなり本気のコンテンツがそろっています。
WWD:今年、日本市場に注力するというが?
チャウ:今は北米とイギリス、中国が売り上げのトップ3ですが、日本はこれに続く市場規模。これからもっと伸ばしていきたいと思います。日本語でのサイトも始め、翻訳記事ではない日本発信のエディトリアル制作にも注力しています。
WWD:なぜ日本市場にポテンシャルを感じるのか?
チャウ:英語のコンテンツしかなかった時代から日本人のファンが多く、彼らは滞在時間が長く購買率も非常に高い傾向でした。現在エディトリアルから直接商品購入ができるように、顧客導線を単純化することでさらなる購買につながることを狙っています。カスタマーサービスも日本語に対応するなど、日本人が使いやすいサイト作りを目指しています。