マルセロ・ブロンと東京・表参道にオープンしているポップアップストアのスタッフ
「マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン(MARCELO BURLON COUNTY OF MILAN) 」は、3カ月限定で東京・表参道にポップアップストアをオープン中だ。デザイナーのマルセロ・ブロンが、ストアイベントとアフターパーティーの開催も兼ねて来日。今回で3回目の来日となるマルセロは、ミラノでも恒例となっているクラブイベントを東京・渋谷のコンタクトで開催した。エントランスフリーのパーティーには、モデルの秋元梢やタレントのアイヴァンらも駆けつけ盛況となった。翌朝まで続いた同イベントを終えたマルセロは、昼過ぎのインタビューでも疲れを見せず、ポップアップのコンセプトや、カルチャーを軸としたラグジュアリーブランドが台頭している現在のメンズファッションシーンへの疑問、ブランディングを含めた今後のビジネスプランを語った。
WWDジャパン(以下:WWD):3年ぶりの来日だが、久しぶりの東京の印象は?
マルセロ・ブロン(以下、マルセロ):東京という場所は、いつ来ても驚きがある都市だ。前回の来日から3年が経っているので、また、新しいものや場所が増えていて、新鮮な印象を受けているよ。人間観察をするのが面白い場所だしね。洋服のスタイリングや色のコンビネーションなど、常に新しい世界を融合するファッションが面白くて興味深い。東京はいつも僕を寛大に受け入れてくれるので、ホームのような気にさせてくれるんだ。
WWD:アフターパーティーも盛況だったが、初めてのクラブで初来日のロス・スルバ(Los Suruba)やジョミー(Jommy)らとプレイした感想は?
マルセロ:ミラノは僕の地元だからフォロワーがいて、パーティーは確実に盛り上がる。東京やニューヨーク、ベルリンでもイベントをしているんだけど、僕には“トライブ”と呼ぶ、同じ趣味を共有する仲間たちが全世界に、当然日本にもいるから客層はあまり変わらない。僕のブランドや音楽のファンでいてくれる人たちが多く集まった印象だね。前からコンタクトでパーティーをやってみたかった。大音量が出るとかではなく、高いクオリティーの音が出せるトップクラスのサウンドシステムだと思ったね。イビザを拠点に活動している初来日のDJのスルバも同じ感想だったよ。ファッションイベントの問題点は、開催する場所だったり人間関係ばかりに目が向きすぎていること。機材までこだわらず、音のクオリティーがないがしろにされがちなんだ。だから、いつもファッションイベントには満足していなかったけれど、今回は良い音が出せて、みんな踊ってくれたことに大満足だ。午前4時に音を切った時に、まだ人がたくさん残ってくれていたことも嬉しかったね。
READ MORE 1 / 2 「僕は、10年、15年後でも着られる洋服を追求していきたい」
アルゼンチンのパタゴニアに影響を受けたショップデザイン
WWD:デザイナーやPR、イベントオーガナイザーなど多岐にわたる職種に関わることは、ファッションにどんな影響を与えているか?
マルセロ:インスピレーションのソースは確実に増える。今は映像や洋服に音楽と、立体的にいろいろなことをやれているからね。
WWD:今回、ポップアップのショップデザインを手掛けたがコンセプトは?
マルセロ:今後、世界で店舗展開をしていくための足掛かりになるようなショップを想定してコンセプトを作り、実際に形にした最初のショップだよ。具体的には、アルゼンチンのパタゴニアからインスピレーションを受けて、什器に天然素材を取り入れている。店内の真ん中に、アクセサリーを入れるための木製の棚があって、それもパタゴニアの建築物にインスピレーションを受けて、1度燃やした木材を使用している。これは日本の技術なんだ。引き出しの中には、差し色として赤のベルベットを使っていて、棚の下の床は、2017-18年秋冬ミラノ・メンズのステージだった床材を利用してるんだ。香港のショップでは、フロア全体の床材に使用した。ブランドロゴもキーオブザリングスといって宇宙との扉の鍵穴を意味している。
WWD:限定アイテムの販売をヌビアン、グレイト、エストネーション六本木店にした理由は?
マルセロ:ブランドがすごく大きくなってきて、若い子たちだけが買うようなブランドではなくなってきたことが理由だ。大きなゴリラなどの比較的派手なグラフィックは若い子に向けて作っているけれど、ミニマルなデザインのアイテムもたくさんあって、大人が無理せず着られるような洋服にもフォーカスしているよ。ニューヨークでも、サックス・フィフス・アベニューのような、ラグジュアリーな客層が出入りする場所にも卸しているので、ブランドの多様性というか、幅広い年代に向けてリーチできるように考えているよ。
WWD:メンズでは、カルチャーをベースにしたデザイナーの台頭がここ数シーズン目立っているが、この潮流をどう考えるか?
マルセロ:自分は90年代に育っているので、当時のことはよく分かる。ここまでひねりもなく、90年代の若者のスタイルをそのままランウエイで発表するような感じは、さすがに極端すぎる。若い子に向けて発信していこうという気持ちは理解できるけれど、どう見ても当時のままを切り取っているようにしか見えない。僕は、10年、15年後でも着られる洋服を追求していきたい。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」は、そうだろうし、仮に15年前の洋服を着ても、当時よりもモダンに見えるアイテムがたくさんある。ブランディングの視点はそこだよ。
READ MORE 2 / 2 2017−18年秋冬コレクションのテーマは…
「マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン」2017年春夏コレクション
「マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン」2017年春夏コレクション
WWD:2017−18年秋冬コレクションについて?
マルセロ:テーマは「ルネサンスの芸術」だ。ルネサンスの概念、僕はカルチャー文化のアルマゲドンと呼んでいるけれど、元々あった芸術の世界が壊されて、また新しいものが生まれた時代から影響を受けた。今まであったものを破壊して、再構築するような考えがコレクションのベースだ。ユーティリティーやミリタリーなど、機能性のある洋服のフォームを自由に変形させたのは、その理由だよ。ボンバージャケットの袖には、袖ぐりの上半分だけをつけたりもしたし、ベルトを使ったボンテージのディテールもね。
WWD:今後のビジネスプランは?
マルセロ:香港を皮切りに、路面店を増やしていこうと考えているよ。将来的にはミラノやイビザにも。未定だけれどパリにもだ。そのために今は、卸のボリュームを少しづつ減らして、路面店にシフトさせようと考えている。そうすることで、ブランドの世界観の表現を統一できるからね。現在、世界中で380店舗以上の卸先があって、日本では25店舗。すでに、イタリアでは減らし始めていて、その代わりにポップアップや、自分の世界観を表現できる場所に注力している。ブランドを広げていくために、世界中のブランドと積極的にコラボもしている。「アルファ インダストリーズ(ALPHA INDUSTRIES)」とは毎シーズン、次は「カッパ(KAPPA)」や「リーボック(REEBOK)」もだ。今後はコラボするブランド数を増やしていく予定だよ。