北欧発シューズブランド「エコー(ECCO)」は3月29日〜4月4日、銀座三越でレザーのDIYイベント「エコー レザー ファクトリー プチ(ECCO LEATHER FACTORY PETIT)」を開催した。自社工場の機械を海外から持ち込み、9人の職人が来日した。トートバッグやクラッチ、ポーチなど、レザーを使用したDIY体験を無料で提供した。イベントに際して来日したパノス・ミタロス(Panos Mytaros)=エコーレザー代表兼エコー上級副社長にイベントを開催する理由やエコーレザーについて聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):「エコー レザー ファクトリー プチ」を初めて日本で開催した理由は?
パノス・ミタロス=エコーレザー代表兼エコー上級副社長(以下、ミタロス代表):エコーは自分たちでレザーを調達し、オリジナルのレザーを作り、商品をデザインし、販売している。全て自社で行っていることが一つの強みであり、それを顧客に伝えたかった。大々的な広告を打つこともできるが、実際に体験してもらうことが一番リアルな体験だと思った。
WWD:実際に日本のマーケットはどう?
ミタロス代表:日本にはたくさんのブランドと商品があるから、マーケットはとても混雑していると思う。だけど、日本人は欲しいものを明確に分かっているし、質にも高いこだわりを持っている。ただ良い商品を提供するだけでなく、商品の裏にあるストーリーも伝えたい。だから今回のイベントはとても大事なんだ。
WWD:2008年から自社のレザーをデザイナーやブランドに卸すようになった。約10年経ち、デザイナーとの関係性は変わったのか?
ミタロス代表:もちろん。当初はエコーのオリジナルレザーの知名度は低かった。世界中からクリエイターやデザイナーを招へいし、新しいレザーを作るワークショップ「ホットショップ」を始めてから、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「リック・オウエンス(RICK OWENS)」「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」など、さまざまなブランドと協業した。ファッションだけでなく、アップル(APPLE )やロールス ロイス(ROLLS ROYCE)など、異業種企業にもレザーを提供するようになった。他のタンナリー(なめし工場)のようにただ既存のレザーを販売するだけでなく、ブランドのDNAを考えながら、一緒にレザーを一から作っているんだ。
WWD:エコーレザーの強みは?
ミタロス代表:熱で色が変化するものやインディゴ染めしたものなど、レザーとテクノロジーを融合しているところ。まさしく“プレミアムレザーとテクノロジーのマリアージュ”だ。メタリックのレザーも、革の独特な柔らかさを残しつつ、メタルのギラッとした色合いに仕上げている。一つ絶対に守っているのは、どんなに発達した技術を使用するとしても、必ずリアルレザーを使うこと。レザーの本質は残しているのだ。
WWD:ファッショナブルなコンフォートシューズを探すのは難しいと思われがちだが、スタイルと快適性のバランスをどう図っているのか?
ミタロス代表:「コンフォートシューズはダサい」と思われがちなのは、快適さを重視しすぎてスタイルを軽視したブランドが多いからだ。でも、“コンフォート”と“スタイル”は相反する概念ではないはず。われわれにとって、“コンフォート”は当たり前で、「エコー」のシューズを買う際は一切快適さについて心配しないでほしい。どちらも犠牲にする必要はなく、好きなデザインで選んでもらいたい。
WWD:今の時代、サステイナビリティーは大きなキーワードになっている。エコーではどのような取り組みを行っているのか?
ミタロス代表:最新の技術によって毎年使用する水の量を減らしているし、廃棄物を減らす技法を生み出した。でも一番自信を持って言えることは、どこからレザーを調達しているのかを管理している他、すべて自分たちで手掛けているから何かが起きた時にすべての責任を負えること。それは本当に難しいことだが、会社として誇りに思っている。他社のせいにできないし、その分商品の質にも、作っている背景すべてにこだわりを持っている。
WWD:エコーは創立54年目だが、今一番の課題は?
ミタロス代表: この54年でエコーはグローバルブランドへと成長できた。今はその状態を維持させることが一番のチャレンジだ。過去10年で企業規模は倍増した。現在94カ国に進出しているが、新しいマーケットや新しいカテゴリーを出す予定は今のところない。自分たちにとって大事なマーケットでまだまだ成長できると思うから。それと、純粋に最高のシューズメーカーでありたいから。