「ワンダ ナイロン(WANDA NYLON)」は2016年ANDAMファッション・アワードを受賞し、レインウエアで構成したデビューコレクションが話題を呼んだ。2017年春夏シーズンにはファッション・ウイークのオンスケジュール入りし、今季も継続してショーを開催した。ハイウエストのキャロットパンツやポップカラーのファーコート、メタリックなドレスなど1970年代のディスコシーンを連想させるプレイフルなコレクションはシックでありつつも、ファッションを心から楽しむ女性のワードローブだ。得意とするビニールも、べっ甲のようなデザインのロングコートに仕立てた。
デザイナーのジョアナ・セニック(Johanna Senyk)は、そんなポップなコレクションと同様に、エネルギッシュで陽気な女性だ。無造作な髪型に真っ赤なリップがよく似合う。愛犬が走り回るショールームには、男女問わずおしゃれなファッショニスタが出入りしていて、デザイナーのジョアナと親しげだ。臨月を迎えた大きなおなかを抱えながら、気さくにデザインやファッションに対する思いを打ち明けてくれた。明るい性格の一方、クリエイションに対する情熱や精神の強さが垣間見える。
WWDジャパン(以下、WWD):今季のインスピレーション源は?
ジョアナ・セニック「ワンダ ナイロン」デザイナー(以下、セニック):先シーズンを振り返っていたら白人のモデルしか起用していなかったことにびっくりしたの。本当にショックを受けたわ。気づかぬ間にブルジョワになってしまったのかとさえ恐れた。私のスタジオにいるスタッフは日本や中国、ケニアなどいろんな国から来ていて、誰一人同じ地域出身の人がいない。そのカルチャーミックスこそ私たちの強み。だから今季は黒人やアジア人などさまざまな国籍のモデルを起用したの。ファーストルックは力強く自信にあふれた黒人の女の子。デザインの起点は70’sのディスコカルチャーよ。
WWDジャパン:ダイバーシティーが一つのキーワードになったということ?
セニック:そうね。美は外見ではなく、パーソナリティーだと思うの。モデルは全員同じ肌色、身長、体型で、まるで軍隊のようなメゾンもあるけど、私はそれに全く興味がない。少々太ってしまったり、トレンドの最先端に立つモデルではなくなっても、面白い子は20歳、30歳、40歳になっても一緒に働きたいと思うわ。ファッション業界で働いていると、どうしてもある一定の美の基準を持ってしまいがちだけど、本当に視野を広げる必要があると私は考えるわ。
WWD:ポイントは?
セニック:今季は特にプロポーションを考えた。見ての通り私は妊娠して、以前履いていたパンツが入らなくなってしまった。スーパーハイウエストにしたのもそれが一つのきっかけよ。くるぶしや鎖骨などを少し見せることによってセンシュアルに仕上げた。セクシーすぎない肌見せは本当に美しく、魅力的だと思うの。
WWD:デザインするプロセスはどこから始まる?
セニック:いつも自分のdesire(欲)から始まるね。その時々によって変わる。今季はジョイフルでクールなものを求めたの。常に自分が着たいものが起点だし、周りの友人が好きなものにもインスパイアされる。映画監督やミュージシャン、アーティストなど、クリエイティブな人が私の周りにたくさんいるの。そして特に重要視するのは素材。服は肌と直接触れ合うものだから、素材は本当に大事ね。素材を決めてからサンプルを仕上げ、実際にフィッティングしてからその動きや着やすさを考え、納得いくまで何度もデザインを変更している。
WWD:フィッティングの時点でデザインは結構変わる?
セニック:もちろん。私のデザインは衝動的でスポンテニアス。計算し尽くされたものではないから、常に考えが変わるし、それをコレクションにも反映している。だから毎シーズン、単一のテーマではなく、いろんな要素が組み合わさっているのよ。