ファッション

「イートウツ」のデザイナー来日 自身のルーツとブランディングを語る

 イギリスの「イートウツ(E. TAUTZ)」のデザイナー、パトリック・グラント(Patric Grant)が店舗視察のために来日した。2009年に「イートウツ」をリローンチ後、ワイドパンツを中心に、ボリュームのあるシルエットのアイテムが人気となり、サヴィル・ロゥの老舗テーラーならではのカッティングや仕立ての良さに注目が集まっている。昨年、EU離脱問題に揺れる17年春夏ロンドンメンズでは、ショーのフィナーレで残留を意味するINと書かれたTシャツを着たことも話題になった。「イートウツ」のルーツと今後のブランディングに迫った。

WWDジャパン(以下、WWD):15回目となる来日のきっかけは?

パトリック・グラント(以下、パトリック): 09年に日本でビジネスを開始してから、徐々に成長してきた。イギリス以外では日本が最も大きなマーケットなので改めて「イートウツ」が日本でどう見られているか、リサーチするために来日した。自分の仕事は、デザインなどのクリエイティブと売り上げを管理するビジネスがあって、日本ではいろいろな場面からインスピレーションを受けている。特にクリエイティブでは日本の美学に惹かれるよ。手入れが行き届いた庭先や昔の建築物を見るのが好きだね。この間、日帰り観光で栃木県の日光に行ったけど、日常を忘れてフレッシュな気分で1日を過ごした。日本の朽ち果てた母屋ですらインスピレーションをもらえる。自分にとっては、旅をして文化に触れることが最も重要だからね。

WWD:東京とロンドンのファッションを比較してどう思うか?

パトリック:ロンドンのファッションはアメリカやアフリカの影響もあり、本当の意味でマルチカルチャーなスタイルだ。イギリス人のファッションの考え方は、銀行員もイーストロンドンのキッズも個々で違ったスタイルがあって、それぞれ自分のスタイルに自信を持っている。東京のファッションは、成熟した、確固たるシーンがあって、世界中のあらゆる要素をクイックに組み込むことに長けている。アフリカの影響はほとんど感じないので、そこはロンドンと異なる点だね。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」「ヨウジ ヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」など、日本のブランドが1980年代に世界的な注目を浴びた後は、国際的なデザイナーの出現が滞った。でも、最近また盛り上がっていると感じる。地域に関係なく、1つのスタイルに固執しないのは東京とロンドンの共通点で、スタイルを形成するには重要なことなんだ。

WWD:MBAを取得し、エンジニアからファッションに転身したユニークな経歴だが、ファッション業界に飛び込んだ理由は?

パトリック:自分のキャリアを振り返る前に、そもそも小さな頃からファッションに興味があった。小学校の入学式前日に自分で髪を切って、服を選んでタイドアップをして、11歳の頃には、親が買ってきた服が気に入らなくて自分で買い直したりもした。学生時代は、友人たちとスミス(The Smiths)に傾倒していたね。しかし、ファッションや音楽同様にサイエンスにも興味があって、得意科目だったので大学では化学を専攻し、卒業後にはエンジニアとしてキャリアをスタートしたんだ。会社に入ってからは、世界中を飛び回った。インドには年間15回以上も訪れたし、当時は4つ以上の工場とやり取りをしていた。もちろん、給料は全て洋服につぎ込んでいたよ(笑)。当時はトレンドだけでなく、ビンテージウエアに興味があったので、古着屋を巡ったし、あらゆるファッション雑誌を読んでいた。そして、31歳の時に大学に戻り博士号を取得したけれど、そのタイミングで、サヴィル・ロゥの老舗ビスポークテーラー、「ノートン&サンズ」が売りに出ていることを知り、自分の全財産を全て投げ打って買ったんだ。伝統的なブランドで、全てのアイテムがハンドメイドだし、スーツなどのテーラリングにも興味があったからね。いつかは忘れたけれど、旅行で東京を訪れた時、ビームスのバイヤーに「ノートン&サンズ」で既製服をやってみたらどうかと提案されて、ニットとトートバッグを制作した。でも、「ノートン&サンズ」は、年間約250着しか作らないビスポークテーラーなので、そのまま安価なレーベルににすることはできなかった。そこで、「イートウツ」で既製服をスタートしようと考えたんだ。

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