繊維商社の瀧定大阪の2017年1月期グループ連結決算は、為替デリバティブの違約金などの特別損失の計上によって税引前損益が249億円の赤字(前期は11億円の黒字)に転落した。この数年、M&A(企業の買収、合併)で積極的に取得してきたブランド子会社の減損損失も響いた。28日に大阪本社で会見した瀧隆太・社長は「多額の損失を出したことに経営者として大いに責任を感じている。この失敗を必ず次の成長につなげる」と語った。今後はテキスタイルや衣料品のOEM(相手先ブランドの生産)など主力のサプライヤー事業に経営資源を集中させることで、経営を立て直す。
売上高は前期比4.4%減の956億円、営業損益は4億3400万円の赤字(前期は5億2400万円の黒字)だった。売上高の9割を占めるサプライヤー事業は10億円の営業利益を確保したものの、オリーブ・デ・オリーブ、スタニングルアー、シアタープロダクツ、ミリオンカラッツといった子会社が展開する消費ブランド事業が22億円の営業損失で足を引っ張った。
経営に大きな打撃を与えた為替デリバティブについて、瀧社長は「商社が常にさらされている為替リスクへの対応策だったが、今回の事実を重く受け止めなければならない。今後は為替予約のみで対応すると決めた。生じるリスクは商売の努力の中で吸収するしかない」と説明した。
課題である消費ブランド事業は、構造改革を断行する。すでにミリオンカラッツは今年2月、スタニングルアーは3月に他社に売却した。またアロマセラピーのジャスミン・アロマティーク・オーガニクスは昨年12月に解散し、現在は清算手続きを進めている。さらなる事業整理の可能性について瀧社長は「川下(消費ブランド事業)を100%否定するものではない。しかし相乗効果や将来性を個々に見極める必要がある」との発言にとどめた。
一方、再建のカギを握るサプライヤー事業は、海外市場でのビジネス拡大を掲げる。前期も中国では新規開拓が進み、売上高は15%伸びた。中核会社スタイレムでは、中国市場を成長軌道に乗せた手腕を買われて昨年10月に就任した酒向(さこう)正之・社長が、グローバルビジネスの陣頭指揮を執る。酒向社長は「米国での有名ブランドの大量閉店などファッション市場では地殻変動が始まっており、予断を許さない状況が続く。そのためにも今期は筋肉質の収益体制にこだわっていく」と述べた。