ニッセンが4月、プラスサイズに特化したECモール「アリノマ(Alinoma)」をローンチした。まずは10Lまでのサイズ、39ブランド・約800型を扱う。今後は参加ブランドを増やしつつ、雑貨やパーティー商材などを拡充していく。業績不振が続く同社は2016年にセブン&アイ・ホールディングスの完全子会社となった後、自社ECや通販カタログでの取り扱い商材が膨大になっていることを問題視。カテゴリーを限って在庫を減らし、得意分野に注力することで、収益率を上げて業績回復を目指す狙いだ。
同社は00年にプラスサイズ(LL〜10LL)に特化したECサイト「スマイルランド」を「ニッセン」サイト内に設置。自社で生産・販売を行うSPAモデルでプラスサイズ市場を開拓してきた。尼崎と仙台を皮切りに実店舗も11カ所に出店し、在庫一元化によるオムニチャネルにも取り組む。大橋さと美ニッセンサイズ事業本部サイズモール企画チームマネジャーいわく、「プラスサイズ市場は顧客ニーズが命。実際の声を聞くための出店だったが、開店後にレジが2時間待ちになるなど、想像以上のニーズがあることに驚いた。1カ月の売り上げ目標を1週間で達成した」という。試着をしたいという悩みにも、一元化在庫を利用した店頭取り寄せサービスで対応してきた。一方、今回新設した「アリノマ」は、サイト自体を別ドメインで作成、在庫も物流も新規で用意する力の入れようだ。「『アリノマ』は高価格帯に商材を絞ることで、『スマイルランド』との差別化を図る」。
プラスサイズ市場は儲かる?
プラスサイズ市場の現状について、「ポテンシャルは大きい。ニーズはあるがサプライヤーが少ないために、市場が小さいだけだ」と大橋マネジャー。ブランドが参入しづらい最大の要因は、パターンの難しさだという。「例えば3Lに限っても、顧客によって体型の悩みはさまざまで、レギュラーサイズのような商品展開ではニーズに応えられない。われわれには長年店頭の声をもとに自社製作してきたパターンがある」と自信を見せる。顧客ニーズが分からなければ、ブランドにとって在庫を積むことがリスクになる。ニッセンはこれまでの知見を活用した商品の共同開発を提案することで、パターンと在庫の悩みもに応えようとしている。
また、「プラスサイズを活用する顧客がファッションを楽しむ文化がない。まずは顧客啓蒙が重要だ」と指摘する。「自分の着用サイズを知らない顧客がほとんど。大半が“着ることができるサイズ”を基準に洋服を買っている。着たい服があっても、サプライヤーが追いつかず、どこに行けばいいのか分からないという声も多かった」。同社はこれまでも店舗出店に合わせたファッションショーや雑誌「ラ・ファーファ(LA FARFA)」との共同イベント、TGC出演など、顧客へのアプローチに精力的に取り組んでいる。
「ファッションを知らない人に、当社でファッションの楽しさを知ってもらいたい」。一度自分のサイズやファッションの楽しさを知ったユーザーが顧客となり、購入商材の幅を広げて顧客単価も上がってゆく。結果として同社の売り上げが上がるという好循環が生まれるわけだ。「アメリカでは一般的なプラスサイズだが、彼女らのサイズ感は日本人と全く異なるため、日本市場のポテンシャルは大きい。まずは顧客を巻き込むムーブメントを作り、『アリノマ』についてくれる顧客を見定めたい。当社においてプラスサイズというカテゴリは主軸になるはず。顧客が選べるくらいの商材を用意して、プラスサイズカテゴリのナンバーワンを目指したい」。