フォンダシオン・ルイ・ヴィトン(FOUNDATION LOUIS VUITTON)やプラダ財団(FOUNDATION PRADA)など、ラグジュアリー・ブランドの一般に向けたアート発信をはじめ、企業や商業施設の間でアートに注目が集まっている。4月20日にオープンした日本初のラグジュアリー・モール「ギンザ シックス(GINZA SIX)」でも、草間彌生(YAYOI KUSAMA)の「南瓜」の巨大なバルーンを吹き抜けに展示するなど、アートがキーワードに。「アート感のあるライフスタイル」を大切にし、アートやアーティストを支援してきたアッシュ・ぺー・フランス(H.P. FRANCE以下、H.P.)のアート事業部は今年、設立10周年を迎えた。同社が運営するエイチピージーアールピーギャラリー ニューヨーク/東京(HPGRP GALLERY NEW YORK/TOKYO以下、HPギャラリー)の戸塚憲太郎ディレクターにアート事情について話を聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):H.P.がアート事業を始めたきっかけは?
戸塚憲太郎ディレクター(以下、戸塚):2004年、ニューヨークでアーティスト活動をしていた時H.P.のショップで個展を開催した。ちょうど、結婚のタイミングで仕事を探していて、その時に出会った村松孝尚H.P.社長に「何でもするので仕事をさせてほしい」と頼んだのがきっかけ。村松社長に将来的にアート事業をやりたいという思いがあり、社会人経験がなかった私を採用してくれた。それをきっかけに帰国し、ファッション合同展示会「ルームス(ROOMS)」の担当になった。ルームスがちょうど、国立代々木競技場に会場を移したときで国際化を目指していた時期だ。雑用から海外見本市担当との交渉までありとあらゆる事に携わった。
WWD:3年後にアート事業部をスタートした理由は?
戸塚:エイチピーデコ(H.P.DECO)の上にあった美容院(現在はブティックの水金地火木)のスペースが空いたため、ギャラリーにしたいと村松社長に提案したら受け入れてくれた。
WWD:どのようにしてアーティストを発掘するか?
戸塚:ギャラリー以外にも、ルミネ館内で展開するアートイベント「ルミネ ミーツ アート(LUMINE MEETS ART)」や青参道アートフェアなどいろいろなイベントを行っているので、そのような場所で出会ったり、人から紹介されることもある。いいなと思うコレクターやアーティストからの紹介は感覚的に近いく、レベルが高いケースが多い。
WWD:アーティストとコレクターをどのように結び付けているか?
戸塚:コレクターを見つけて育てることと、アート市場を作るのは同時進行で行っている。青参道アートフェアやルミネでのイベントなど、コレクター予備具の人々がアートに出会う場を作り、そこを入口にギャラリーに足を運んでもらうよう促している。
WWD:ギャラリーやイベントの運営で一番楽しいことと、難しい事は?
戸塚:いい作品や作家と出会えることが一番楽しい。苦労するのは資金繰り。イベントやディレクションで資金稼ぎをし、ギャラリーでは発信をしていく。そのバランスを取るのが大切だ。
WWD:現在は日本とニューヨークが拠点だが、その理由は?今後ヨーロッパなどに進出の予定は?
戸塚:まず、H.P.は日本の企業なので、日本がベースにある。ニューヨークに拠点を置いているのは、そこが世界のアートの中心だから。ゆくゆくは、アート事業部でも、H.P.のパリ・東京・ニューヨークを結ぶというイメージを実現できればと思う。