岡山県岡山市に拠点を置く山本哲也「ポト(POTTO)」デザイナーは29日、東京・御徒町の「モグラグギャラリー&アクビ エーエーティー ショップ(MOGRAG GALLERY&AQUVII AAT SHOP)」で、フロアショーを開催した。フロアショーでは山本自らが、“密かに交流を続けてきた”という39ものインディーズブランドを紹介した。しかし実は、これらのブランドはいずれも山本が作り上げた“妄想”上のブランドだった。デザイナーの山本にその真意を直撃した。
WWDジャパン(以下、WWD):ファーストルックは、女優の石田ゆり子のアルファベットを抜き出していて、彼女がちょっとエロいというコンセプトの「ISDYRK(アイエスディーワイアールケー)。その他にも、服を送るといい感じにリメイクして返送してくれる「希望商店」、地味にテクニックのあるおじさんデザイナーの「三三三三(サンミサンゾウ)」、バレンシアガみたいな今風のブランド「デス マスク(DEATH MUSK)」など聞いたことのないブランドばかり。本当にあるブランド?
山本哲也「ポト」デザイナー(以下、山本):全部僕の作り上げた空想上のブランドです。すみません。
WWD:よく39ブランドも考えられましたね。
山本:制作期間は、3月25日「ハウス@ミキリハッシン」でショーを終えてからなので、1カ月くらい。「ポト」と同じように、ほとんど僕がミシンを踏んで作りました。ルックの中には「ザラ(ZARA)」から買ってきたのもありますけど。とはいえ、架空ブランドのキャラクターなどについてはずっと前から考えていました。
WWD:なぜ、架空ブランドのショーを?
山本:うーん。いろいろあります。デザイナーズブランドの場合、ブランドって自分を掘り下げて作るじゃないですか。でも掘り下げていけば実は一人の人間でもいろんな面を持っている。それにブランド自体が、今記号化していて、意味が変わっているというか、意味自体がなくなっているというか。だからあえて枠を外して、“自己”をサンプリングするような形で、複数のブランドを作って発表してみました。今後のこの中のいくつかのブランドは継続していきたいと思っています。展覧会の期間中は全ブランドを買えるようにしています。ただ、全部受注生産なので、すぐに手渡しは出来ませんが。
WWD:2011年から、生活と発表の拠点を岡山に移していますが、暮らしはどうでしょう?
山本:いつも東京に戻りたいと思ってますよ。ファッションをやるなら、やっぱり東京のほうが色々便利だし。ショップ兼アトリエ兼住居は岡山市内だけど、周りには何もないし。地元のクリエイターともほとんど交流はない。今回の39ブランドも、岡山でのそういった自分の精神状態を反映されていると思う。ただ、岡山にいるからこそ、できることも少しずつ増えている。昨年瀬戸内国際芸術祭に声をかけてもらえたのも岡山にいたからかな、と。自然が多いので、子育てにはいいとも思っています。
■「サイキック ノーマル ショップ」
日時:4月30日〜5月8日
場所:モグラグギャラリー&アクビ エーエーティー ショップ
住所:東京都台東区元浅草1-5-1