写真家の蜷川実花は、東京・原美術館で行われている個展「蜷川実花 うつくしい日々」のレセプションを12日に開催した。同展は2016年に亡くなった、父で演出家の蜷川幸雄の死に向き合う日々を撮影した61点の作品で構成し、亡くなる前後の1カ月で撮影した。
作品は蜷川らしいビビッドで刺激的な世界観とは対極で、日常にありふれたものを柔らかな自然光を生かして撮影した写真がメーン。道路に伸びる親子の影や踏切を通り抜ける電車、“止まれ”の標識など、未来へ続く歩みの瞬間を切り取っているようで、父の別れとそれを受け継ぐ娘の視線が重なる。一方で心電図やむくんだ手など、直接的な“死”を想起させる瞬間を撮影した作品について、蜷川は「心電図は父が亡くなる前の写真。自分でも驚いているが、世界に別れを告げることに間近で向き合ったからこそ撮れたもの。亡くなった喪失感は大きいけれど、誰もが経験すること。1歳になる息子がいるので忙しい生活に追われていて、今は穏やかな気持ちでいる」と話し、開催日が偶然にも命日と重なったことについては「全く意識してはいなかったので導かれていたような気がする。最後に良い贈り物ができた」と明かした。
また、レセプションにはデザイナーの丸山敬太やメイクアップアーティストの早坂香須子、フォトグラファーのシトウレイらが参加した。同展示は5月19日まで開催する。