Photos by RYOICHI INOUE
日本を代表する伝統文化の一つの花火と、野外イベントに欠かせない音楽とを融合させた、新しいエンターテインメント「スターアイランド」が5月27日に開催される(雨天の場合28日に順延)。仕掛け人は、ドレスコードである白い服をまとった人々が秘密の場所でディナーパーティーをするフランス発祥の「ディネ・アン・ブラン(DINER EN BLANC)」、さらにはアメリカ・マイアミ発の世界最大級の都市型ダンス・ミュージックフェスティバルの日本版「ウルトラ ジャパン(ULTRA JAPAN)」など、ファッション感度の高い大型イベントのクリエイティブ・ディレクターを務めてきた小橋賢児氏だ。昨年7月にマークスタイラー「アンスリード(UN3D)」の荻原桃子デザイナーと結婚し、今年1月に長男が誕生したばかり。2人とも「WWDジャパン」の常連で、次の一挙手一投足に注目が集まるクリエイターズカップルだ。今回、小橋氏のインタビューに合わせて、メディアで初めてスリーショットを披露させてほしいと依頼。まずは、小橋氏に、「スターアイランド」に賭ける思いと、イベントを成功させる秘けつ、そして感覚を研ぎ澄ませるためのコツを聞くとともに、2人に、結婚・出産後の変化や新たな決意などを聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):新イベント「スターアイランド」を企画したきっかけは?
小橋賢児(以下、小橋):2013年にお台場で初めて「ウルトラ ジャパン」を開催し、思い描いていた通りものすごく盛り上がりました。だけど、「もう一つ、会場に来てくれたみんなが一つになれるものは何か」と考えたときに思い浮かんだのが花火だったんです。特効的に花火を上げたりはしていたのですが、日本が誇る大玉の美しい花火を打ち上げられたらなと。スペース的な制限などがある中で、東京湾や隅田川の花火大会を手掛けられている方々ならばできるだろうということでお会いし、2年目からそれが実現するようになりました。DJが会場と一体になって選曲をしていく「ウルトラ」で花火を上げるタイミングってけっこう難しくて。会場の雰囲気やDJの気分などの空気を読みながら、僕がキューを出して花火師さんに上げてもらうというものなのですが、緊張感の中で打ち上げた花火は格別で、「あんなに若者が熱狂している前で花火を上げたのは初めてだった」と花火師さんも喜んでくださって。職人としての伝統や誇りと、若者のエネルギーとが一つになる力を感じ、とても共鳴したんです。「新しいことを一緒にやってみたいね」と話している中で、花火師チームの方々が、12年に「ミュージック花火」という、音と花火の共演というイベントをやっていたことを聞いたのですが、その後実現していないということだったので、それをさらに進化させた形で、新しいイベントを一緒に作り上げようということになりました。
WWD:会場にお台場海浜公園を選んだ理由は?
小橋:お台場でずっとやりたいと思っていたんです。海外に行けば行くほど、日本の景色というものがよく分かってくるんですが、日本って、新しいものばかりに目が向くから、価値のあるものや素敵な場所がないがしろにされていると思うんです。お台場がその代表例。開発されたばかりのときにはすごく注目されたけれども、気づいたらファミリーが行く場所で、憧れが薄れてしまっていた。でも、お台場の対面に住むようになってからよく来るようになって、あらためてその良さを感じました。羽田空港からレインボーブリッジを渡って都心に入る外国人の方も増えていますが、まさに日本の玄関口だし、未来都市っぽくって、素敵な場所だなって。東京タワーも見えるし、ここから見る東京の摩天楼の景色は素晴らしいですよ。青空や夕日も美しくて。仲間を連れてきてもみんな感動してくれる。僕らの仕事って、日常の世界の中に非日常を作ることで、自分の人生の可能性やその場所の可能性などを感じてもらうことが役割かなって思っていて。だから、お台場の、そして、東京、日本の可能性を感じてもらえればうれしいですね。
それと、政府が号令をかけて「地方創成」を叫んでいますよね。地方を元気にするのは絶対に大事なこと。でも、グローバルで見たら、都市が元気で都市がクールであるからこそ海外からも興味を持ってもらいやすいわけで、都市を元気にすることが地方を元気にすることにつながると思うんです。だから、カッコイイ東京を再発見してもらう一歩にしてもらえればという思いも込めました。
WWD:花火という、いわば日本の職人技や文化、伝統とコラボレーションするにあたって心掛けたことは?
小橋:実は「伝統を守ろう」という言葉を聞くたびに、何か違和感がありました。守るだけでいいのか?って。今、文化や伝統になっているものを最初に作り上げてきた人たちって、すごい熱量でクリエイションをして、イノベーションをしたんだと思うんです。それが出来上がり、初めて見た人たちは、毛穴が開くぐらい感動したはず。だから後世に残っていったのでは。いつの間にか伝統という名で残されるようになっていったとしても、アップデートされなくなってしまったのでは意味がない。その時代の才能とテクノロジーとを融合して、今の人々が見ても感動して興奮することを作り上げていく。それが楽しい、すごい、ということでファンが増え、結果、残そうということになると思ったんです。花火にしても、すごく美しいもの。だけど、花火大会が恒例行事になり、特別でなくなって、ただの酒のつまみになってしまったのでは残念だなと。だから今回も、初めて花火を見た感覚をもう一度取り戻すようなものにイノベーションをさせています。昨年、ペルーを初めて訪れたのですが、掘っ立て小屋にある小さな白黒のテレビに子たちがかぶりついて目を輝かせて見ていたのを目の当たりにしました。彼らにとって、テレビは人生を変えるぐらい画期的なものなんだと思います。日本でも昭和の時代にテレビが街に出始めた時期には衝撃を与えたものでしたが、今後も残っていくには、イノベーションし続けるしかありません。僕は今回の「スターアイランド」を通じて、今の時代の才能をイノベーションして後世に残していきたいと思っています。
READ MORE 1 / 3 インスピレーション源とイベントを成功させる秘訣とは?
WWD:今回、音楽と花火とを完全に連動させたスペクタクルな世界が広がると聞いている。
小橋:今、VR(バーチャルリアリティー)が台頭してきていますよね。仲間ともいろいろ研究した中でいくつか気付きがありました。たとえば、パルコ屋上で開催されたアンダーワールド(Underworld)のライブ映像をVR機を着装してサテライト会場で視聴する360度映像ライブストリーミングなども、すごいけど、ちょっと物足りなくって。それが「音」だったんです。ちょうどその頃、僕、「感覚を開こう!」という会に参加していたんです。生きるためには、つらさを避けるため、いろいろな感覚を閉じていることが多いもの。でも、人生のすばらしさやクリエイションが生まれるところなど、いろいろなことを体験することで、感覚を開こう、元気の気の元を感じようというものです。その中で、エクストリームスポーツに挑戦したり、旅をしたりもしていたんです。その一環で、3Dサウンドのパイオニアのスタジオに行き、音だけで自分の周りを鳥が羽ばたき、飛び去り、海の中へと潜っていくようなシーンを体感できた時には、まさにトリ肌が立ちました。ああ、これだ!と。音だけで見えないものを見せることができるんです。ゴーグルがいらないVRの世界を体感したと思いましたね。
VRって、直訳すると「拡張現実」ですよね。花火も、人の手で創造したものが、打ち上げられ、色と音とで遠くに現れる。でも、3Dだけど平面に見えるし、実際に見えているのに触れない。これってVRっぽいなって思ったんです。花火と次世代的な体験の間を埋めるものとして、「音」「3Dサウンド」の要素を取り入れることにしました。そうすることで、新しい花火のエンターテインメントとなり、花火の見方を変えることにつながると考えました。今回、ベッドで寝転んで見られるゾーン、子どもと一緒に遊びながら楽しめるキッズゾーン、ディナーができるコーナーなど、いろいろな見方を提案しています。将来的には100の花火の見方を提案したいですね。今、情報がたくさん溢れていますし、日常になりすぎてしまっているものも多々あると思いますが、「見方を変えれば素晴らしいもの」というのは、世の中にたくさんあると思いますし、ここにもう一度目を向けることが大切なことなのではないかと思っています。
打ち上げられた花火は会場外でも見えるけれども、「ここでしか見られない」という特別な体験を用意しています。スピーカーも120チャンネル置き、1チャンネルずつ割り当てています。だから、鳥が自分の周りをバタバタバタッっと飛び回るのも体感できますし、水に潜る際にはバシャッと飛び込む音がして、しばらくくぐもった音になり、また空中を飛び回るときにはあちらこちらへと飛び回るさまが音で体感できるというものです。いろいろなイベントを行ってきましたが、ほんと、今回は来ないと損ですよ(笑)。
WWD: 2020年に向けてインバウンドというキーワードも注目されているが。
小橋:オリンピックに向けて、世界が日本に注目しますし、日本人もあらためて日本に注目するでしょう。もちろんインバウンドも増えると思いますが、日本の良さを伝える、という際に、どうしても古い日本ばかりを打ち出すのは、ちょっと違うと思うんです。都市にもファッションや流行は常にありますし、その都市でイケているものを伝えていき、世界基準に引き上げていきたいと思っています。ニューヨークやパリ、ロンドン、香港など、世界中から誰が来ても楽しめる街だと思います。日本はフードは分かるけれども、アニメやカワイイを世界中の誰もが好きかといえば、一部は好きだけど全部ではない。夜の街や遊びのシーンを含めて、世界基準に持っていきたいんです。「ウルトラ」から発信した夜のナイトライフもそうでしたが、オシャレをして見に行く花火&音楽のイベントというのもその一つです。特に世界的に花火大会というのはとても希少なものですし、日本ならではのものを、浴衣、着物だけでない、旬なファッションで楽しめるものとして打ち出していきます。世界的にも魅力的な場所で、世界的に素晴らしいイベントが東京・お台場にあること。それによって日本人があらためてその良さを再認識するようなものにしていきたいですね。
WWD:大型イベントを数々手掛けてきたが、成功させる秘けつは何か?
小橋:情熱しかない。僕の場合、物事の最初って、想像、妄想しかないんです。イベントの実現というのは本当に簡単なことではなくて。でも、それらの立ち上げをいろいろやってくる中で、幸いお客さまには本番に来て楽しんでいただけているけれど、裏側はトラブルと辛いことの連続でしかないんです(苦笑)。でも、最初にワクワクした直観を信じ、自分を信じ、自分たちチームを信じ、トラブルを乗り越えていく。その思いを継続するしかないですね。
READ MORE 2 / 3 「感覚を開き、前兆をとらえる」
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WWD:では、面白いもの、成功しそうなものに対して、嗅覚を鋭くするための工夫は?
小橋:僕は、「中道」という言葉が好きで、「両極を見るからこそ真ん中の本質が見える」と思っています。自分のいるところを一つの極だと思っていて、FBでも、仲間でも、仕事でも、東京でも、どんどん感覚が慣れていってしまう。でも、待てよ、と。ときどき立ち止まって、全然逆の極に行くようにしているんです。イベント、パーティーのど真ん中にいる一方で、インドに3カ月いて、ボロボロのバスを乗り継いで旅をする。今まで正しいと感じていたことが違うと感じたり、当たり前が当たり前でないことに気付いたり、特別ではないことが特別に思えたり、日常の素晴らしさを再確認したり。いろいろな気付きの中で、いま本当に必要なことを見つけ出せる気がするんです。伝統とかインバウンドとか言っているけど、本質的にはどうなんだろうと、旅や、反対の極に立ちながら考えています。問題でも課題でも、両極を知りながら、両方を解決するためにはこれなんじゃないか、という考え方を常にしています。例えば、韓国の会場で初めて「ウルトラ」を見た時にも、来場者の半分はEDMを知らないと思われる中で、みんなが毛穴を開いて興奮している姿を目の当たりにしたんです。だからイケるな、とは思いました。
ただし、たくさんの有名なDJが出ていて、夜中まで爆音が出せるような最高な環境でのイベントは、好きな人にはたまりませんが、たまたま友だちに誘われてきた人はどうか。開催地が遠くても簡単に旅をして来られる人はいるけれど、そうでない人にも来てもらえるためにはどうするか。コアな人だけでなく、そうではない人々にまで価値を感じて楽しんでもらえるためにはどうするか、どう伝えるか。それを考えると、本質が分かるんです。だから、場所の価値を伝えたり、ファッションチームを作ったり、SNSチームを作ったり、アプローチの方法を多様化するようにしています。
もう一つ、僕は計画性がないけれど、その時に思った感情、パッションの通りに作っていくようにしています。あれが必要、これが必要、あれもやりたい、これもやりたい、と。周りは大変ですよね。巻き込み事故をたくさん起こされて(笑)。でも、そうしたほうが面白いことができると思うんです。旅でも、ある程度計画も必要ですが、計画しすぎると面白いことから遠ざかってしまうこともあると思うんです。人と出会ったり、助けられたり、その人に紹介してもらった場所でまた出会いがあったり。それが旅の醍醐味の一つでもあり、その場で起きることを楽しめばいいんです。イベント作りも一緒。最初はこうしようと思ったものはあるけれど、それがどんどん変わっていく。今回もお願いしていたことが変わったり、新しい人が加わったり。でも全部、神様にキャスティングされている感じがしますね。ロケーションも天気もお客さんも。一期一会というけれど、お客さんたちが何かのきっかけで、その日、その瞬間にここに来て一つになる。ネットで見たとか、たまたま友達に聞いたとか、いろいろなケースがあると思うけど、それも全部直感で来ているわけですよね。全てが奇跡の集まりなんです。
WWD:旅が大きなインスピレーション源になっているようだが、最近感じたことは?
小橋:旅で一番気が付くのは、普段は何カ月も何年もかけて、点で現れるインスピレーションなどを一気に感じ取ることができるということ。旅している時って、見知らぬところだから感覚を開かないと危機が察知できないから危ないし、きれいなものや面白いものをいろいろ感じようとしてアンテナがマックスになっている。すると、時空を超えるというか、凝縮されて出来事が起きてくるんです。奇跡とか出会いとかトラブルとか。日本では年に数回のトラブルが日に何度も起こる。でもそれも受け入れていこうという心の変化がある。心が変わると急速にいろいろなことが変化しはじめ、新しい出会いもあったりする。
逆に日常生活では、その点や前兆を見逃さないようにしています。「アルケミスト―夢を旅した少年」(パウロ・コエーリョ(Paulo Coelho)著、角川文庫、角川ソフィア文庫)という素晴らしい本があって。アンダルシアからエジプトのピラミッドを目指す羊飼いの少年が、「前兆に従うこと」と「何かを強く望めば宇宙の全てが協力して実現するように助けてくれる」という導きに従って旅を続け、人生を学んでいくというような内容で。僕自身、「なんか気になるな」と思った場所やコトなどに対して、「ここいいよ」などと3~4回立て続けに人から言われたり、なぜか同じものを何度も目にしたり。それが前兆であり、これって行けって合図だよね、と、馬鹿正直に受け入れるようにしているんです。こういうこと、人間って無視しがちだけれど、ほんと大事にしたほうがいい。僕は「Believe Your TORIHADA(トリ肌を信じろ!)」って思っていて、前兆やそれを感じた自分の直観を信じることや、信じ続けることで奇跡を起こすと本気で信じています。今回の花火の話も、マジで実現できたらすごいよね、と鳥肌が立ちましだ。
前兆をつかむために、できるだけ感覚を開くようにしていますし、そうすると、シンクロも多くなるんです。イベントを開くと感動して、無になるんです。すると感覚が開かれることがあって。
WWD:瞑想やマインドフルネスなども日常的に行っている?
小橋:日常生活ではなかなか難しくて。瞑想も超続けているときと全然やらないときがありますね。役者だったからかもしれませんが、撮影や舞台の時には別人格になるぐらい役に没頭し、終わったら抜ける、というサイクルだったので、日常生活をして、その後、旅に出ることで、切り替えを図っています。あとは、山登りもサーフィンもエクストリームスポーツも、すべて忘我のためにやっています。全ての道はローマに通ず、で、いろいろなアプローチ方法があると思います。
ちなみに一昨年、西穂高に行ったんです。浮石みたいなところもあって、変な石を踏んで落ちたら死、というような緊張感が漂う山道でした。でも、最初は一生懸命で必死だったけれど、いつの間にかすごく集中していて、さくさく登っている自分がいたんです。触る前に浮石が分かるくらい、完璧な状態で、全然怖くないし、気付いたら頂上に登っていました。これがクライマーズハイというものなのでしょうが、心と体が一体化して、自然と自分が一体化する感覚でした。火事場のクソ力で、限界を超えちゃったんでしょうね。もともと自分の中に持っていたけれども気付いていなかった能力が発揮されて。気付いたら泣いていました。
実はよく「目標は?」と聞かれるのですが、「あの頂上を目指したい!」というのはあるけど、目標ばかり見過ぎて足元を見失ってしまってはもともこもありません。それにまだ着かない、と思うのではなく、一歩一歩足元を見ているからこそ、いろいろ気付くこともあるんです。石の状況を見極めながら、どう登ればいいか考える。そのうち集中すると忘我の世界に入り、自分にないぐらいの能力が出て、自分では想像しえなかった頂上にたどり着いている。そういう状況が理想ですね。それもこれも、30代前後で一文無しになって、肝臓がボロボロになって。たった6年前のことですが、その時には映画を撮ることもイベントをプロデュースすることも想像していませんでした。でも、これだと思うことを一つ一つ紡いできました。今回の「スターアイランド」も同じ気持ちで取り組んでいます。
READ MORE 3 / 3 パパになった小橋賢児氏、妻と息子への思いを語る
WWD:これまでとの大きな違いといえば、1月にパパになったことかと。何か変化はあったか?
小橋:一瞬で何かが変わるというよりも、子どもが生まれ、日々一緒にいる中で自然に変わっていっていると思う。自分では気づかないけど。ただ、確実に早く家に帰りたくなりますね(笑)。ちょっとの隙間でも、この子のために時間を使おうという気持ちになりますね。
WWD:結婚の決め手になったことは?
小橋:海外に行くと、この年で何で結婚していないの?と不思議がられることは多かったですね。日本では大丈夫という空気があったのですが、先輩に「いくら僕らがクリエイションをしていても、子どもを産むというクリエイティブにはかなわない」と言われて、確かにそうだなと思って。世の中の男女って、向き合いすぎて疲れちゃう。真実の愛とは同じ方向を向くことだと、岡本太郎も言っていますよね。お互いをリスペクトするのも大事だし、支え合うことも大事だけし、向き合うことも大事だけれども、無理をせずに一緒にいられて、無謀な僕を容認してくれるところがいいなと思って。たとえば一緒に住むために引っ越したばかりのときに3カ月間インドに行くといったら、本当は嫌だったかもしれないけれども受け入れてくれて。しかも、インドで日々いろいろなことが起こって、いろいろなことを感じたんです。男って妄想家なので、つい未来や過去に引っ張られたり、女々しいところがあるんです。将来結婚するならこんな人がいい、昔付き合ったあんな人がいいとかいいながら。でも、インドで「今」がどれだけ重要なことなのかに気付き、今、自分と一番向き合ってくれている人、日本で僕を待っていてくれる人が彼女であり、もっと大切にしたいと思ったんです。
荻原桃子「アンスリード」デザイナー:引っ越す前からずっと旅に行くと言っていたんですが、どこに行くかも決まっていなくて。
小橋:フェイスブックのマーク・ザッカーバーグが、アップルの故スティーブ・ジョブズに「インドに行け」と言われたと聞いて「インドに行こう」と思って(笑)
荻原:さみしさもありますし、心配したりもしますが、彼が自由に好きなことをして、次の新しい何かの原動力にしてくれることが、私の楽しみでもありますから。
WWD:荻原さんは出産後、「アンスリード」のデザイナーとして、どんな働き方をしているんですか?
荻原:産休は2カ月とり、今はフレックスで週2回、朝から会社に行って働いています。いま話題の待機児童なんです。本当に預けられるところがなくて。保育園問題がクリアになったら、もう少し日数を増やしたいですね。今まで全部自分の時間だったものが子ども主体になるし、スケジュールを決めていても、なかなかその通りにはいかなくて。でも、時間は短くなっても集中できれば、逆に効率は上がると思うので、いろいろ試行錯誤しながら続けていきたいと思っています。
WWD:出産して服作りなどの面で変化はあった?
萩原:そこはあまり大きな変化はありませんね。妊娠して、子どもを生んだから全部ママ向けに、とか、ママさん対応にシフトしよう、みたいなことはしたくなくって。ただ、よだれがついたりよごれたりしても洗濯しやすい素材のものを、とか、一緒にお出かけするときに着られる機能性が高いものを、など、今まで気付かなかったことをケアできるようになる気がします。
WWD:今回はキッズゾーンを設けて、子どもを遊ばせながら花火がみられるような設えになっている。子どもが生まれた影響か?
小橋:それもあるかもしれない。
萩原:子ども連れだと、ご飯屋さんは本当に入りにくいんです。なかなかベビーカーで中まで入れる店も少ないですし、抱っこしていても「こんなにまわりの目は冷たいんだな」と思いましたね。ウェルカムな方と、あ、連れてきているのね、とちょっと迷惑そうな人と、はっきり分かれていますね。もちろん高級レストランなどには連れていかないけれど、わりと雰囲気的に受け入れてくれそうだと思っていたところも微妙だったり。
小橋:すごく気を遣いますね。大人だけの空間だからいい、というところももちろんあると思いますが、本質的に子ども連れにはまだまだ優しい場所は少ないですね。今回のイベント会場では大きな場所ではないけれど、キッズゾーンを設けました。圧倒的に周りに子ども連れが多くなったし、週末はほとんどが同じく子ども連れの友だちなどと会う機会が増え、そのニーズの高まりを実際に感じています。
WWD:5月27日の開催まで目前に迫っているが、どこのシートから見るのがオススメか?
小橋:ベッドやクッションなどを配したリミテッドシートはもちろん良いのですが、今回は会場内の空間全体が一番のオススメのポイントなんです。3Dサウンド、パフォーマー、大都会の景色、そして花火。最高の空間を用意しました。この空間を最高に楽しめる「スターシート」があるので、ぜひお台場に体感しにきてもらいたいですね。