2017年は、近代建築の巨匠のひとりと言われるアメリカ人建築家のフランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)の生誕150周年だ。誕生日である6月8日、彼とゆかりの深い帝国ホテル(IMPERIAL HOTEL)でヤマギワ(YAMAGIWA)主催による照明の新作発表会が行われた。
ヤマギワは1992年、建築家らとの豊富な協業実績が評価され、フランク・ロイド・ライト財団(以下、ライト財団)から照明のライセンスを獲得。94年に“タリアセン(TALIESIN)”シリーズをはじめとする12種類の照明コレクションを発表した。以来、20年以上にわたり照明を手掛け、世界中で販売をしている。発表会では、ライトのファンであるジャーナリストのジョースズキと当時、照明の開発を担当したヤマギワの川村務・商品開発室顧問によるトークショーを開催。ロイドと日本の関係や開発のエピソードなどを語った。
グッゲンハイム美術館や落水荘などで知られるライトの代表作の一つが旧帝国ホテルだ。東洋美術の収集家であった彼は骨董仲間を通じて知り合った2代目総支配人の林愛作から同ホテルの設計の依頼を受ける。1967年取り壊し後は、明治村に移築再建された他、帝国ホテル内中二階のインペリアル・バーで旧ホテルに使用されていた大理石や壁画などに触れることができる。スズキは、「12歳の時に、旧帝国ホテルの写真を見て、何て素晴らしい建築だと大感動。以来、ライトの大ファンだ」とコメント。
ライトは建築物以外に、家具、照明、テーブルウエアなど、さまざまなアイテムをデザインした。1990年初頭からライト財団が、家具は「カッシーナ(CASSINA)」、テーブルウエアは「ティファニー(TIFFANY)」というように1社を選びライセンス契約を結んだ。照明は「ヤマギワ」に白羽の矢が立った。それに関して、スズキは「ライトの照明の主な材料は木、ガラス、金属。木を使用した照明は少なく、それができるのは『ヤマギワ』だと判断したからだろう」と言う。
92年10月に契約を結んだ「ヤマギワ」だが、2年後にニューヨーク近代美術館で開催されるライトの回顧展で発表し、日米市場で同時発売という条件付きだった。川村は当時を振り返り、「財団で商品化できそうなものを選び、実物を見に行ったが、文化財なので分解することもできず、メジャーで図ってサンプルを制作し、16カ月で完成した。販売目的もあったため、アメリカの工場でも生産していたが、94年ノースリッジ地震が起こったため、代わりの工場を探すために急きょ渡米したこともある」と語った。
150周年を記念し、“タリアセン”や“ランバーソン”などから、さまざまなシーンに対応できる新製品9点が登場した。価格は3万4000~17万3000円程度。発売以来、一度も売り上げが落ちたことがないというライトの照明。「財団からのロイヤリティーは毎年上がっているが、幸運なことに払い続けられている」と川村。一度見たら忘れないアイコニックなライトの照明は「ヤマギワ」の確かな技術力で復刻され、世界中で愛され続けている。