各地の土地柄や現地で採取される植物などを活用した化粧品ブランドや、オーガニックスポットが続々と誕生している。地域の特色を打ち出した“ご当地コスメ”は以前から存在していたが、近年は地産地消を訴求した商品展開のほか、休耕地を活用したハーブや植物の生産などの取り組みが目立つ。その際たるものが、フランスにある世界最大のコスメティックバレー(化粧品産業集積地)を目指し、産学官連携で活動を続ける佐賀県唐津市のジャパン・コスメティックセンターだ。
「佐賀県はこれまでイチゴやきくらげ、オリーブなどを栽培する農業が第一産業だった。これらを原料とした化粧品の展開や広大な土地を活用した化粧品の製造工場などを誘致できないかと考えた」と語るのは、小田切裕倫ジャパン・コスメティックセンター(以下JCC)チーフコーディネーター。
設立のきっかけは、唐津市に本社を構える化粧品輸入代行・成分分析の企業を介し、フランス中部シャルトルを中心とした世界最大のコスメティックバレーのアルバン・ロバート・ミュラー(Alban Robert Muller)2代目会長(現JCC会長)が同市を訪れたことにある。アジア圏に近く輸出入の流れがスムーズであること、薬用植物の生産地としてもポテンシャルがあると評価されたことなどから、佐賀県と唐津市も参画する産学官連携の組織として2013年にスタートした。
同組織は、美容、健康、素材、交流を柱とした国際的コスメティッククラスターを実現するべく、“新市場開拓”“産業創出”“地域ブランド構築”“産業集積”を掲げる。現在は無農薬栽培による植物の原料供給や生産拠点として存在感を強めており、16年には「ネロリラ ボタニカ(NEROLILA BOTANICA)」や「アムリターラ(AMRITARA)」が同地域の植物、果実の成分を配合した商品を展開した。17年3月には化粧品メーカーのクレコスが原料加工・製造工場を唐津市に移すことを発表。「種まきしていたことが今年から実を結ぶようになってきた」という。
フランスのコスメティックバレーは約800企業が集積し、年間180億ユーロ(約2兆2100億円)を超える売り上げを上げている。一方、JCCは現在約170社が参画。フランス同様、今後3年間で日本のコスメティックバレーとしての存在感を発揮し、さまざまな取り組みに注力していく。