イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)の生涯のパートナーとして彼を支えた実業家、ピエール・ベルジェ(Pierre Berge)は6月8日、10月にパリとモロッコのマラケシュに美術館を開館すると発表した。ベルジェは1週間前まで入院しており、車椅子で会見に出席した。
このプロジェクトは2004年にベルジェが会長を務めるピエール・ベルジェ=イヴ・サンローラン財団会が設立した時からスタートした。現在財団は服飾品約5000点、アクセサリー約1万5000点、デザインスケッチ数万点のアーカイブを所有している。
ベルジェは、「サンローランが02年に引退したとき、彼の記憶を形にすることを決めた」とコメントした。
現在のベルジェの公私におけるパートナー、マディソン・コックス(Madison Cox)同財団副会長兼ジャルダン・マジョレル財団副会長は、「ベルジェは、会見に出席すると言って譲らなかった。なぜならこのプロジェクトは彼の仕事の集大成だからだ。彼にとって、アイデアは1つでなく、2つだった。だからパリとマラケシュ、2人の思い出の地に美術館を設立することにしたんだ」と説明した。
マラケシュの美術館はマジョレル庭園に隣接する予定。マジョレル庭園はサンローランとベルジェの2人が1980年に購入・保護し、現在では年間80万人が訪れる観光スポットとなっている。
美術館のデザインは「バルマン(BALMAIN)」や「イソップ(AESOP)」の店舗デザインなども手掛けるスタジオ・コー(Studio KO)によるもの。美術館は周囲の街と同じような色と素材で建設され、街の景観に溶け込むようにデザインされた。マラケシュの美術館は約4000平方メートルで、常設の展示スペース、企画展示スペース、研究図書館、カフェ、150席の講堂などが入る。10月19日に一般公開される。
また、パリのイヴ・サンローラン美術館は、パリ・ファッション・ウイーク期間中の10月3日に、マルソー通りのかつてサンローランのクチュールハウスで、現在は財団の本部がある建物に開館する。旧クチュールハウスとサンローランのデザインスタジオも初めて一般公開される。
リノベーションは、財団の展示に多く携わってきたナタリー・クリニエール(Nathalie Crinière)とインテリアデザイナーのジャックス・グレンジ(Jacques Grange)が手掛けた。展示スペースは2倍になり、旧クチュールハウスを再現した。
62年のサンローランのデビューシーズンから、1年ごとにコレクションを入れ替えて展示する部屋も設ける。また、年に1度、テーマに沿って企画展を実施。第1回は“イヴ・サンローランの考えるアジア”展だ。
同財団は2019年から20年の間に日本、韓国、オーストラリアで展覧会開催を企画していることも明かした。