ファッション

「ハンティング ワールド」、相澤のキュレーション力の試金石

 「ハンティング・ワールド(HUNTING WORLD)」 がディレクターに相澤陽介を迎え、始動したウエア含む2018年春夏コレクションを発表した。

 ショーは、「ホワイトマウンテニアリング(WHITE MOUNTAINEERING)」のデザイナーらしい、キャッチーなアウトドアスタイルで幕開け。色は、新緑のようなグリーンや鮮やかなイエロー、そして夕陽を思わせるレッド。柄は、カモフラやボタニカル、アーカイブのバッグのコラージュ。これらがサファリジャケットや開襟シャツ、膝丈のショーツなどを彩り、さらに旅人が道中で買い集めたようなワッペンがウエアはもちろん、アイコニックな素材「バチュー・クロス」で作ったバッグを彩り、モダンなブランドに変身したことを印象付ける。

 サファリスタイルの台頭も、新生「ハンティング・ワールド」には追い風になった。深いブラウンのスエードブルゾンには、ほんのりダメージ加工を施したライトブルーデニム。日に焼けたり、褪せたりの色調がトレンドカラーになった18年春夏の波にのり、時代感がキャッチアップできるブラウン度になったことをアピールする。

 とはいえ、相澤自身の「ホワイトマウンテニアリング」に比べれば、キャッチーな要素はずっと控えめ。ネイビーのマリンとカーキのサファリを組み合わせたコンサバルックも数多い。ただそこには、シャツをカーディガンの裾からチラ見せしたり、さらにその上から機能素材で作ったステンカラーコートを羽織ったり、レイヤードやスペックのあるギア的ウエアのスタイルなどの時代感をプラスする。無難な印象のスタイルついて相澤は、「カルチャーを背景にしたブランドが台頭しているが、それが好きじゃない人もいる。そんな人に、フィレンツェに工房を持つ、ブランドの確かなクオリティーの洋服を届けたい」という。

 相澤が言うには、これまでの「ハンティング・ワールド」は、モノ作りのイタリアと、ブランド発祥のアメリカ、そしてマーケットの大きな日本の連動が必ずしも十分ではなかったという。結果、ブランドはかつての輝きを失っていた。彼は、「僕の役目は、3つの考えや意見を集約し、時代感を加えて1つのビジョンにすること」と話す。その意味においては、キャッチーなスタイルからコンサバまで、一見すると散漫な印象も受けるコレクションは、多数の意見を集約した苦心の結果で合格点。こうした仕事は、数々のブランドとコラボレーションし、一定の成果を収める、キュレーター的な能力が極めて高い相澤にしかできないことだろう。

 早く世界のブランドイメージが1つにまとまり、もう少し彼のアイデンティティーが強く現れる時期が訪れることを望みたい。

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