東京・渋谷のギャラリー「ナンヅカ(NANZUKA)」は、3年ぶりに現代画家の田名網敬一の個展「貘の札」を開催する。同展は、「ナンズカ」が入居するビルの地下1階から地下2階へと移転後の最初の展覧会となる。会期は6月24日〜8月5日。
田名網は2010年以降、自身の記憶や夢を原風景にした、80年以上もの歴史を記した"曼荼羅図"の制作に取り組んでおり、同展では、横3メートルの大型作品2点を含む新作のペインティング約10点を展示する。また、昨年ニューヨークの「シッケマ・ジェンキンス・ギャラリー(Sikkema Jenkins Gallery)」の個展で初めて発表した後、セントルイス国際映画祭やオーバーハウゼン国際短編映画祭などで上映されている新作アニメーション作品「笑う蜘蛛」も上映する予定だ。
新作の「彼岸の空間と此岸の空間」に登場する鶏のイメージは、1975年に制作した映像作品「クレヨン・エンジェル(Crayon Angel)」の中にも登場していて、機銃掃射のために低空へと急降下する戦闘機のメタファーだ。同様に、がいこつ姿のさまざまなモンスターは戦争で傷ついた人々を表現している。また、同展の作品にはジョルジョ・デ・キリコ(Giorgio de Chirico)、アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)、ロイ・リキテンスタイン(Roy Lichtenstein)、伊藤若冲、マウリッツ・エッシャー(Maurits Escher)ら、田名網が敬愛するアーティストたちの作品も引用した。
同展の開催に合わせて、田名網の近作イメージを収録した2冊のアートブックも出版する。 1冊目の「貘の札」は、67年に自費出版した「田名網敬一の肖像」と69年出版の「巨像未来図鑑」に続くコンセプトを継承したブックで、宇川直宏がアートディレクションを務めた400ページにおよぶ豪華な仕様。100部限定でブロンズ製のケース付き冊子も販売する。2冊目の「Psychedelic Death Pop」は、40ページの大判ペーパーブックで、特別付録として大型ステッカー2点を収録する。
田名網敬一は、1936年東京都生まれ。武蔵野美術大学を卒業後、60年代から、グラフィックデザイナーや映像作家、アーティストとして、メディアを中心にジャンルに捕われない創作活動を続けている。近年の主要な展覧会は、15年にロンドンのテートモダンで開催した個展「The World Goes Pop」やロサンゼルスのアーマンド・ハマー美術館で開催した「Oliver Payne and Keiichi Tanaami」など。また、ニューヨーク近代美術館(MoMA)やシカゴ美術館といった世界中の著名美術館が新たに田名網の作品収蔵をしている。